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妻の妊娠中から夫が育休を取れる国へ|韓国が9月18日に始めた「配偶者支援3点セット」の中身|2026年9月26日版

仕事用のノートPCを閉じ、妊娠中の妻に寄り添って自宅で過ごす男性のイメージ。

妻が切迫流産の恐れで安静を言い渡された。夫は会社を休みたい。だが多くの国の制度では、男性が育児休業を取れるのは「子どもが生まれてから」だ。

韓国は2026年9月18日、この起点を動かした。雇用労働部が「配偶者支援3点セット」と名付けた3つの改正が同日そろって施行され、男性労働者は妻の妊娠中であっても、一定の条件下で育児休業を取得できるようになった。あわせて20日間の配偶者出産休暇は出産予定日の50日前から使えるようになり、配偶者の流産・死産に対応する休暇も新設された。

日本語圏ではほとんど報じられていないが、これは「男性の育児参加」を出産後の数週間に押し込めてきた設計を、妊娠期間に向かって開いた変更だ。以下、何がどう変わり、なぜ今なのか、そして制度と職場の間に何が残っているのかを整理する。

この記事の要点 – 施行日は2026年9月18日、所管は韓国・雇用労働部 – 妻の妊娠中の育休(流産・早産リスクがある場合)が新設 – 配偶者出産休暇20日の使用可能期間が「出産予定日の50日前〜出産後120日」に拡大 – 配偶者の流産・死産休暇(最大5日、うち最初の3日は有給)が新設

目次

9月18日に始まった3つの変更

3つとも、対象は「妻が妊娠・出産する男性労働者」だ。既存の育休制度を増やしたというより、これまで制度の網がかかっていなかった時期と場面を埋めにいっている。

① 妊娠中の育児休業

妻の妊娠中に流産・早産などの健康上のリスクが確認された場合、男性労働者は子の出生前に育児休業を開始できる。申請は休業開始予定日の7日前まで。

期間は新たに上乗せされるわけではなく、既存の育児休業の枠から差し引かれる。ただし分割取得の回数にはカウントされない。つまり「出産後に取るはずだった育休の一部を、必要な時期に前倒しできる」という設計だ。

健康情報という機微なデータを扱うため、事業主は適用事由と確認資料を最小限の範囲で処理し、アクセス権限を制限することが求められる。ここは運用の質がそのまま制度の使いやすさを左右する部分になる。

② 配偶者出産休暇は「予定日の50日前」から

日数は20日で変わらない。動いたのは使える時期だ。

項目改正前改正後(9月18日〜)
日数20日20日(変更なし)
使用可能期間出産後120日以内出産予定日の50日前〜出産後120日

出産前の通院付き添い、上の子の世話、里帰りや入院の準備といった場面に、正面から休暇を当てられるようになった。これまでは年次有給休暇を削るか、無給で休むしかなかった時期だ。

③ 流産・死産休暇の新設

配偶者が流産または死産した場合、5日の範囲で休暇を取得できる。最初の3日は有給で、通常賃金の100%が支払われる。請求は流産・死産日から20日以内。

優先支援対象企業(中小企業)の労働者には、政府から1日あたり8万4,210ウォン、3日で最大25万2,630ウォンが支給される。中小企業の負担で制度が空文化しないよう、最初から支援とセットで組まれている。

なぜ「出産前」まで踏み込んだのか

背景にあるのは、韓国で急速に進んだ男性の育休取得の増加と、そのわずかな回復に沸く出生率だ。

2025年に育児休業を取得したのは18万4,519人。うち男性は6万7,196人で、前年から60.6%増えた。全体に占める男性の割合は2024年に初めて30%を超え、2025年上半期には36.5%まで上がっている。2015年の男性取得者が4,872人だったことを考えると、10年でまったく別の風景になった。

押し上げたのは金の話でもある。育児休業給付の上限は月150万ウォンから250万ウォンへ引き上げられ、両親がそれぞれ3か月以上取得すれば休業期間は最長18か月まで延びる。

そして2025年の合計特殊出生率は0.8。2024年の0.75から上がり、出生数は25万4,300人と6.7%増えた。世界最低水準であることに変わりはないが、政府の楽観シナリオ(2025年に0.75)を上回るペースだ。

ここがポイント: 韓国はすでに「男性が出産後に休む」制度を整え、数字も動かした。今回はその成功の延長ではなく、まだ制度が届いていなかった妊娠期と、流産・死産という語られにくい場面に手を伸ばした改正だ。

9月には不妊治療休暇への政府支援も2日から4日に倍増している。妊娠に至る前から出産後まで、休暇の切れ目をつなぐ方向で動いている。

制度はできた、では職場はどうか

ここが一番の争点だ。韓国租税財政研究院が2025年9月12〜19日に労働者900人を対象に実施した調査は、制度と現場の距離をはっきり示している。

  • 男性の育児休業に賛成: 81.4%
  • 男性の同僚に取得を勧めるか: 46.4%
  • 女性の同僚に取得を勧めるか: 63.2%
  • 男性の同僚には「3か月以内にしてほしい」: 30.2%(女性の同僚に対しては17.9%)

一般論としては8割が支持する。しかし隣の席の男性が実際に抜けるとなると、半分を切る。研究者が理由として挙げたのは抽象的な意識ではなく、業務量の増加、代替要員が見つからないこと、目標達成へのプレッシャーという具体的なコストだった。最も抵抗が強かったのは、代替要員の確保に不安を抱える層である。

今回の3点セットは、この構図に新しい負荷を持ち込む面もある。妊娠中の育休は「いつ必要になるか事前に読めない」休みだ。7日前の申請で始まる休業を、現場が受け止められるかどうかは別の問題として残る。

これから何が起きるか

確実に言えることと、まだ分からないことを分けて見ておきたい。

ほぼ確実なこと – 流産・死産休暇の利用実績は、これまで統計に現れなかった領域なので、初年度の件数自体が新しい情報になる – 配偶者出産休暇の前倒しは条件が緩く、利用は比較的早く広がりやすい

読みにくいこと – 妊娠中の育休は「流産・早産などの健康上のリスク」という医学的な確認が前提になる。どの範囲までが対象と運用されるかで、使える人の数が大きく変わる – 中小企業で、有給3日分の支給があっても実際に取得が進むかどうか – 男性の育休取得率の伸びが、出産前への拡張でさらに加速するのか、頭打ちに向かうのか

韓国はこの秋、労働分野で他の締め付けも進めている。10月8日からは賃金未払いの罰則が上限「3年・3,000万ウォン」から「5年・5,000万ウォン」へ引き上げられ、倒産企業の未払い賃金を立て替える賃金債権保障の対象期間も3か月から6か月へ延びる。休暇を増やす一方で、支払いを守らせる側も強めている、という並びだ。

日本から見たときの手がかり

日本で男性が使う「産後パパ育休(出生時育児休業)」は、名前のとおり子の出生後に置かれた制度だ。育児休業そのものも、男性の場合は出生日または出産予定日を起点に始まる。妻の妊娠中に、切迫流産や入院を理由として夫が育児休業に入る、という経路は用意されていない。

だから、次のような場面が具体的な比較軸になる。

  • 妻が妊娠中に長期入院した — その間、夫は年次有給休暇を使い切るしかないのか
  • 上の子がいる家庭で、母親が動けない数週間をどう埋めるのか
  • 流産・死産の直後、夫の側に取得できる休暇があるか

韓国が出した答えは「育休の総量は増やさず、使える時期を前に伸ばす」というものだった。総枠を広げずに配分の自由度だけを上げる設計は、財政負担の議論を回避しやすい。そのぶん、家庭が使える日数の合計は変わらないという限界も抱えている。

今後の注目点

  1. 運用基準 — 「流産・早産などの危険がある疾患」がどの診断まで含まれるのか。雇用労働部が示す具体的な確認資料の扱いが、使い勝手を決める。
  2. 中小企業での実績 — 1日8万4,210ウォンの支給が、代替要員のいない職場で本当に休みにつながるか。
  3. 世論と職場のギャップ — 賛成81.4%に対し、同僚に勧めるのは46.4%。この差が2027年の調査で縮むかどうかが、制度が定着したかを測る一番わかりやすい物差しになる。

数字が動くのは早くても来年だ。まずは施行初年度、流産・死産休暇に何件の申請が出るかを見ておきたい。これまで誰も数えてこなかった数字である。

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