デンマーク、手紙は民間1社が全国配達へ 紙の手続きに残る課題|2026年11月2日版
デンマークでは2026年、PostNordが手紙の取り扱いから撤退し、普通郵便を全国配達する事業者は民間のdaoだけになった。手紙は今も送れる。ただ、紙の原本や期限付きの書類を送る人は、差し出す場所に加え、配達日数や追跡の有無を以前にも増して確かめる必要がある。
行政手続きのデジタル化が進んでも、紙を運ぶ役割は残る。秋には現地メディアが在外投票への支障を報じ、デンマーク外務省も文書認証後の返送方法について案内している。
- 全国への普通郵便配達はdaoが担う。 PostNordの撤退で、手紙そのものが廃止されたわけではない。
- 差し出し先は店舗内の郵便受けなどへ移り、送料コードを購入して送る方法がある。
- 重要書類では「送れるか」だけでなく、期限と配達の証明が問題になる。
手紙が減り、全国配達を担う会社が変わった
背景には、長期にわたる郵便物の減少がある。
デンマークの交通当局Trafikstyrelsenが7月6日に公表した資料によると、2025年に国内で配達された手紙は1億900万通。2024年の1億2,200万通から11%減り、2016年と比べると約71%減少した。同当局は、2026年に普通郵便を全国配達する会社はdaoだけになったと説明している。交通当局の郵便市場報告
PostNordはデンマークでの手紙の取り扱いを2025年12月30日までとし、2026年から小包に集中する方針を示した。一方、スウェーデンの郵便事業は継続する。同じ企業グループでも、国ごとに事業の残し方を変えた。PostNordの発表
ここで分けて考える必要があるのは、手紙の需要が減ることと、紙で届けなければならない用事がなくなることだ。配達量が少なくなっても、原本の提出や行政からの通知を必要とする人には、全国へ届く経路が欠かせない。
新しい差し出し方は、店舗と送料コード
daoは、店舗拠点「daoSHOP」を使った手紙の発送方法を案内している。
利用者はウェブサイトやアプリで送料コード、または郵便用のラベルを購入する。封筒に住所とコードなどを記し、daoSHOPにある赤い郵便受けへ投函する流れだ。自宅での集荷を追加する方法もある。daoの発送ガイド
店舗を使う方式なら、買い物と一緒に手紙を出せる人もいる。一方、利用者が確認する項目は残る。
- 差し出す場所:近くの店舗と、その店舗を利用できる時間。
- 配達日数:通常便、速い便、国際便の違い。
- 証明の有無:追跡や配達の記録が、送付先の要求を満たすか。
拠点があることだけでは、期限付きの手続きに使えるとは限らない。送る書類に合うサービスを選べるかが、実際の使いやすさを左右する。
紙が必要な手続きで、移行の負担が見える
影響が分かりやすいのが、海外で使う文書の認証だ。
デンマーク外務省は、2026年1月1日以降はPostNordの郵便料金による発送を扱わず、認証書類の返送用送料や配送業者の集荷を利用者自身が手配するよう案内している。外務省のウェブショップで購入できる返送料には、追跡が付かないとも明記した。外務省の文書認証案内
同省の案内には、電子的に受け付けた文書でも、紙で発行して認証し、窓口での受け取りや郵送が必要になる経路がある。電子署名付き文書向けの別経路もあるが、すべての原本が画面の中だけで完結するわけではない。
申請をオンラインにしても、最後に紙を返す工程は残る。 そこで返送手配を間違えたり、到着までの時間を見込めなかったりすれば、利用者は認証済みの書類を必要な日までに使えなくなる。
ここがポイント: デジタル化した手続きでも、紙の受け渡しが一度残れば、その配送条件が手続き全体の使いやすさを決める。
在外投票では「届く日」と「消印」が問題に
現地英字紙The Copenhagen Postは9月23日、デンマーク在住者が母国へ投票用紙を返送する際の問題を報じた。
記事では、米国の在外有権者団体Democrats Abroad Denmarkが、試験的に送った手紙は米国への到着まで30日超かかったと警告している。また、daoでは日付入り消印が付かないという同団体の指摘も紹介した。The Copenhagen Postの報道
これは団体による試験と警告であり、daoの国際便すべての所要日数を示す統計ではない。それでも、投票のように到着期限や発送日の証明が関わる場面では、通常の手紙とは別の確認が必要になることを示している。
今後は「代わりがある」から先を確かめる段階へ
daoの店舗網と発送方法が定着すれば、日常の手紙は新しい経路で送りやすくなる。一方、期限や原本の管理が厳しい書類では、追跡付きサービスや別の配送手段を選ぶ負担が残る可能性がある。
日本からデンマークの機関へ書類を提出したり、現地で認証済み文書を受け取ったりする人にも、関係する問題だ。申請先の案内で提出方法だけを読み、返送条件を見落とすと、最後の受け取りで手間が生じる。
今後の注目点は3つある。
- 配達品質:事業移行後の所要日数や未着を、継続した測定で確認できるか。
- 重要書類への対応:期限、追跡、発送日の証明について、利用者が送る前に判断できるか。
- 行政側の案内:申請画面だけでなく、原本の提出から返送まで説明がつながっているか。
手紙の量が減っても、一通の重要性は減らない。文書を送る人にとって必要なのは、全国へ配達する会社の存在に加え、その一通をいつ、どの証明付きで届けられるかが分かることだ。
