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中国とインドでのガソリンや石油製品への価格影響について

中国とインドでのガソリンや石油製品への価格影響について

結論から言うと、ホルムズ海峡をめぐる緊張が同じでも、中国・インド・日本で価格への出方はかなり違う。中国では2026年3月10日に当局がガソリン・軽油の上限小売価格を引き上げ、すでに値上がりが見え始めた。一方、インドは中国ほど素直には転嫁しておらず、足元ではガソリン・軽油をほぼ据え置き、日本は週次の店頭価格調査で上昇が確認されている。

ホルムズ海峡を通る中国向け・インド向けのタンカー航行は完全停止ではなく、一部で通過や到着の報道が出ている。ただし、市場は「通れるかどうか」だけではなく、保険料、運賃、供給不安、政府の価格統制の強さまで織り込むため、各国の小売価格は同じ動きにはならない。

目次

まず押さえたい現状

今回の局面では、原油そのものの国際価格が非常に荒い動きをしている。3月9日にはブレント原油が一時1バレル=119.50ドルまで上昇し、その後はIEAの備蓄放出観測で3月11日に87.57ドル近辺まで下げたが、3月17日には再び100ドル台に乗せる場面が報じられた。

つまり、いま見えているのは「一方向の値上がり」ではなく、供給不安で急騰し、政策対応や停戦観測で反落し、再び攻撃や物流不安で戻すという高ボラティリティの状態だ。ホルムズ海峡を通るタンカーの一部航行再開は安心材料だが、それだけで価格が安定する局面ではない。

中国では価格転嫁がすでに進んでいる

中国では、国家発展改革委員会(NDRC)が2026年3月10日からガソリンと軽油の小売価格を引き上げた。発表では、ガソリンは1トンあたり695元、軽油は670元の引き上げで、直近ではかなり大きい調整幅だ。

中国の燃料価格は完全な自由価格ではなく、国際原油の変動を一定の仕組みで国内小売価格に反映させる。このため、国際原油が急騰すると、時間差はあっても価格改定が比較的はっきり表れやすい。

2026年3月9日時点の国別平均を見ると、以下の通りだ。

項目価格直近の動き
ガソリン8.21元/L1カ月前比 +12.6%
軽油7.30元/L1カ月前比 +13.9%

ここで重要なのは、中国では「原油高なのにガソリンが据え置き」という状態が長く続きにくいことだ。政府は供給安定を優先する一方、価格メカニズム自体は動かしている。したがって、ホルムズ海峡リスクが長引けば、中国では家計や物流の燃料コストにさらに波及しやすい。

インドは足元ではガソリン・軽油を据え置き

インドでは事情がかなり違う。中国と同じく中東依存は大きいが、足元の小売価格は比較的落ち着いている。主要都市では2026年3月に入っても大きな改定は確認されておらず、報道ベースでもデリーでガソリン94.77ルピー/L、軽油87.67ルピー/L、ムンバイでガソリン103.50ルピー/L、軽油90.03ルピー/L前後が続いている。

2026年3月9日時点の国別平均でも、値動きはかなり限定的だ。

項目価格直近の動き
ガソリン101.20ルピー/L1カ月前比 +0.3%
軽油90.58ルピー/L1カ月前比 -0.2%

この差は、インドが原油高の影響を受けていないという意味ではない。むしろ逆で、影響は受けているが、政府と国営系石油会社が小売への転嫁を遅らせていると見るのが自然だ。現地報道でも、原油が100ドル超に乗せても当面は元売りが吸収するとの見方が出ている。

そのため、インドで今すぐ目立っているのはガソリン・軽油よりも、むしろLPGのほうだ。2026年3月には、家庭用LPGボンベ(14.2kg)のデリー価格が853ルピーから913ルピーへ60ルピー上昇したと報じられている。ホルムズ海峡を通過したと報じられたインド向け船舶の一部がLPG船だったことを考えると、石油製品の中でもLPGは特に読者が注意して見るべき分野だ。

日本は「据え置き」より「じわじわ上がる」に近い

日本は中国ほど強い価格統制ではなく、インドほど長く据え置く形でもない。資源エネルギー庁の週次調査ベースでは、2026年3月9日時点のレギュラーガソリン全国平均は161.8円/Lで、前週比3.3円高だった。160円台は約3カ月ぶりで、4週連続の上昇である。

軽油についても、2026年3月9日時点で146.6円/Lとなっている。つまり日本では、ホルムズ海峡リスクや原油上昇が比較的早く店頭価格ににじみやすい。

ここで中国・インド・日本を並べると、足元の姿はかなり分かりやすい。

ガソリン価格軽油価格直近の特徴
中国8.21元/L(3月9日時点)7.30元/L(3月9日時点)1カ月で2桁上昇。3月10日に当局が価格引き上げ
インド101.20ルピー/L(3月9日時点)90.58ルピー/L(3月9日時点)全国平均ではほぼ横ばい。主要都市も据え置きが目立つ
日本161.8円/L(3月9日時点、3月11日公表)146.6円/L(3月9日時点)週次で上昇が可視化。原油高が店頭に表れ始めている

なぜ同じホルムズ海峡リスクでも差が出るのか

理由は大きく3つある。

  1. 価格決定の仕組みが違う。中国は当局の調整が動けば小売価格がまとまって変わりやすい。インドは日次改定の建前があっても、実務上は据え置きが長く続く局面がある。日本は週次で店頭価格が反映されやすい。
  2. 税制と補助の違いが大きい。同じ原油高でも、税負担や補助の入り方で消費者価格の動きは変わる。
  3. 製品ごとの需給が違う。ガソリン、軽油、LPGは同じ「石油製品」でも、物流・家庭用・発電用など用途が違う。ホルムズ海峡の混乱では、船腹や保険が詰まりやすいLPGやディーゼル系が先に緊張しやすい場面もある。

今後の見通し

現時点で言えるのは、中国はすでに値上がり局面に入っており、インドは価格抑制を続けているが永遠には持たない、日本はすでに店頭価格が反応しているということだ。

今後のシナリオは大きく3つある。

  • ホルムズ海峡の通航がさらに安定すれば、原油の急騰分はある程度はがれ、中国の追加値上げ圧力も弱まる。
  • 通航は続いても攻撃や保険料上昇が続けば、中国と日本では小売価格の上昇が続き、インドも遅れて値上げ圧力が強まる。
  • 物流障害が再拡大すれば、原油より先にLPGや軽油など石油製品で需給が締まり、家計と物流コストへの打撃が目立ちやすくなる。

注目ポイントを3つに整理

  • 中国: 価格メカニズムが動いており、ガソリン・軽油はすでに上昇局面に入った。
  • インド: 原油高の影響は受けているが、ガソリン・軽油は政策的に抑え込まれている色合いが強い。代わりにLPGで動きが出ている。
  • 日本: 比較対象として見ると、インドより市場変動が店頭に出やすく、中国ほど制度的に一斉改定されるわけでもない中間型だが、足元ではしっかり値上がりしている。

ホルムズ海峡を実際に通れたタンカーがあること自体は、最悪シナリオをやや和らげる材料ではある。ただ、消費者が気にすべきなのは「1隻通ったか」ではなく、その状況が継続するのか、保険と運賃はどうなるのか、各国政府が小売価格をどう扱うのかだ。価格の出方を見る限り、いまのところ最も素直に反応しているのは中国、日本は上昇が見え始め、インドは抑え込んでいるが、その分だけ後ずれリスクを抱えている。

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