小型AI「LFM3」はなぜ端末で動くのか 3種類の計算を組み合わせる設計|2026年10月30日版
Liquid AIが10月27日に公開した「LFM3」は、文章、画像、音声などを扱う約20億パラメーター級のモデル群です。特徴は、近くの情報を処理する計算と、離れた情報を参照する計算を組み合わせ、端末で動かすための効率を追求したことにあります。
大きな汎用モデルをそのまま持ち込む代わりに、必要な入力と仕事に合う小型モデルを選ぶ。LFM3は、その実装を具体化する更新です。本稿は日本時間2026年10月30日時点の公式資料を基に整理します。
- 計算の使い分け:短い畳み込み、局所的な注意機構、全体を見る注意機構を併用。
- 用途ごとのモデル:テキスト、視覚、音声、それらを組み合わせるモデルなどを公開。
- 導入時の境界:小さく動くことと、複雑な仕事を正しく任せられることは別に検証が必要。
LFM3で変わったのは、モデルの大きさより計算の配分
LFM3は、共通の基盤から用途別のモデルを作る構成を採ります。
Liquid AIの発表によると、初回公開は約20億パラメーター級が中心です。重みを公開し、利用者が独自データで調整できるようにしています。学習済みの重みを取得できるため、クラウドAPIを呼ぶ方法に加え、自社管理の端末やサーバーに組み込む選択肢が生まれます。
ただし、公開モデルを取得しただけで、社内業務に詳しいAIになるわけではありません。問い合わせの分類、帳票の読み取り、決められたツールの呼び出しなど、仕事を絞って評価する使い方が出発点になります。
3種類の層が、近くと遠くの情報を分担する
中核のテキストモデルは、すべての層で同じ計算を繰り返す構造ではありません。
開発チームの技術解説では、24層を次のように配分しています。
- 13層の短い畳み込み:近接した情報を処理する。
- 5層のスライディングウィンドウ注意機構:256トークンの範囲を参照する。
- 6層のグローバル注意機構:離れた位置の情報も参照する。
注意機構は、入力のどの部分を参照するかを計算する仕組みです。参照範囲を近くに限定する層と、広く見る層を混ぜれば、すべての層で広い範囲を扱う構成とは計算の配分が変わります。
この設計が狙うのは、端末の限られたメモリーと計算能力で、必要な文脈を扱うことです。長い入力を受け付ける仕様だけで判断せず、入力を増やしたときの速度と正答率を一緒に見る必要があります。
「約1GB」はアプリ全体の必要メモリーではない
公式モデルカードでは、テキストモデルは4ビット精度で約1GBと説明されています。一方、実行時には入力処理、計算途中の状態、推論ソフトウェアにもメモリーが必要です。
モデルが収まることと、快適に動くことは別の条件です。 スマートフォンで使うなら、短い質問への応答速度だけでなく、長い文書を渡した場合や、ほかのアプリが動いている場合も確認したいところです。
「見る・聞く・判断する」を用途に合わせて選ぶ
LFM3のもう一つの特徴は、入力形式に応じてモデルを選べることです。
開発チームは、文章用、画像・動画用、音声用、複数の入力を扱うOmniモデルに加え、構造化された判断を返すd1モデルを公開しています。d1は、自由な文章を長く生成する代わりに、質問への選択結果や確率などを返す設計です。
たとえば問い合わせ対応では、返信文を作る前に「返金依頼か」「どの担当部署へ送るか」を判定する処理があります。こうした工程は、流暢な文章より、所定の形式で安定して答えることが重要です。
ただし、確率が付いていても、その値をそのまま自社業務の信頼度として扱えるとは限りません。日本語の問い合わせや社内用語を含む実データで、誤分類の傾向と、人に戻す基準を確認する必要があります。
日本語対応でも、複雑な自律作業には限界がある
導入判断では、対応言語と推奨用途を分けて読みたいところです。
LFM3-1.7Bのモデルカードは、日本語を対応言語に含めています。一方、小型モデルであることを理由に、エージェントによるコーディングや複雑な多段階推論を推奨していません。知識を多く必要とする仕事には、検索や情報取得を併用するよう案内しています。
ツール呼び出しへの対応にも境界があります。モデルは呼び出す関数と引数を生成しますが、実際に実行するのはアプリ側です。予約の確定やデータ更新を伴う場合は、アプリが実行権限と確認手順を持つ必要があります。
最初の検証対象は、次のように絞ると比較しやすくなります。
- 日本語の短い問い合わせを、固定した分類へ振り分ける。
- 文書から決められた項目を抽出し、欠落や誤読を数える。
- 更新操作を伴わないツールで、関数と引数の正確さを測る。
重みの公開は、利用条件が無制限という意味でもありません。モデルカードに記載された「LFM Open License v1.0」と、使用する配布形式の条件を確認してから組み込みたいところです。
継続ウォッチ:長文と量子化で品質を保てるか
LFM3を見る軸は、端末で起動するかどうかから、実務で許容できる失敗率に収まるかへ進みます。
- 日本語の品質:敬語、略語、社内用語で分類や抽出が崩れないか。
- 長い入力の挙動:文書量を増やしても、根拠の取り違えと待ち時間を抑えられるか。
- 量子化の影響:メモリーを節約した配布形式でも、必要な精度を維持できるか。
まず一つの仕事で、正答率、処理時間、メモリー使用量を同時に測る。その結果が、クラウドへの送信を減らせる工程と、人や大きなモデルへ渡す工程を分ける判断材料になります。
