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ニュージーランド、開放型教室に「壁」を戻す 193校が改修を希望|2026年7月24日版

可動式の壁で静かな学習空間に区切られたニュージーランドの教室。

ニュージーランド、開放型教室に「壁」を戻す 193校が改修を希望|2026年7月24日版

ニュージーランドで、複数のクラスが同じ空間を使うオープンプラン教室を、壁のある教室へ戻す動きが始まった。政府の募集には193校が応じ、2026年6月までに46校の現地評価、6校の改修が完了している。

単なる内装変更ではない。騒音や視覚的な刺激を減らし、児童・生徒が集中しやすい環境を学校施設の標準に戻す政策転換だ。

  • 193校が教室の壁を復活させる改修を希望
  • 2026年末までに少なくとも38校で改修予定
  • 政府は新たなオープンプラン教室への資金提供を停止
  • 効果を判断するには、集中度や学習成果の継続的な測定が必要
目次

何が変わったのか

ニュージーランド教育省は2025年末、「Modifying Open Plan Classrooms Initiative」を開始し、開放型の学習空間を仕切り直したい学校を募った。

政府が2026年7月22日に公表した進捗は次の通りだ。

  • 参加希望:193校
  • 現地評価が完了:46校
  • 改修が完了:6校
  • 2026年末までの改修予定:少なくとも38校

完成した6校には、小学校だけでなく女子中等学校のNelson College for Girlsも含まれる。特定の学年だけの問題ではなく、異なる学校段階で教室の使い方が見直されていることが分かる。

改修後の学校からは、騒音や気が散る要因が減り、児童・生徒の集中や授業への参加が改善したとの報告が寄せられているという。教員にとっても、他のグループの活動を妨げずに授業方法を選びやすくなる。

ここがポイント: 壁を増やして一律に閉じた教室へ戻すのではなく、集中したいときは仕切り、共同活動では空間をつなげられる設計へ移すことが政策の中心にある。

なぜオープンプラン教室が見直されたのか

開放型教室は、複数の教員による協働や、人数と活動に応じた柔軟なグループ編成を想定して広がった。しかし、同じ広い空間で複数の授業が進めば、別の教員の声や児童の動きも入り続ける。

ニュージーランド政府は2025年7月の段階で、新しいオープンプラン教室の建設を終了する方針を表明していた。当時の発表では、騒音や行動管理の難しさについて学校から強い意見があったと説明している。

音の問題は「少しうるさい」で終わらない

2026年に公表された研究では、20校・73の学習空間で音響条件を測定し、開放型空間は閉鎖型教室より音響環境が悪い傾向を示した。研究者は、空間の用途や設計条件の違いに注意が必要としつつ、教員の満足度も開放型空間の方が低かったと報告している。

これは、先生の声を聞き取る必要がある授業では重要だ。周囲の会話や反響が重なると、児童・生徒は授業内容を理解する前に、必要な声を聞き分けることへ注意を使わなければならない。

とりわけ影響を受けやすいのは、次のような学習者だ。

  • 聴覚に困難がある児童・生徒
  • 注意を一つの対象に向け続けることが難しい学習者
  • 静かな環境を必要とする神経多様性のある学習者
  • 授業で使われる言語を学習中の子ども

壁は、それだけで教育課題を解決する万能策ではない。それでも、別の授業の声や人の動きを物理的に遮れることは、日々の負担を減らす具体的な手段になる。

「昔の教室へ戻す」だけではない

政府が2025年に示した新しい標準設計では、固定壁だけで空間を細分化するのではなく、ガラス製の引き戸などを使う。個別の授業では閉じ、共同学習では開ける設計だ。

教育省は2026年7月から、学校施設の計画・設計・施工を標準化する取り組みも進めている。教育省の説明によると、標準的な建物や教室配置を用意しつつ、各校の教育方法、文化、地域性に応じた選択肢は残す。

この組み合わせには二つの狙いがある。

  • 設計や調達を共通化し、工期と費用を抑える
  • 学校ごとに、閉じる・つなげるという使い分けを可能にする

つまり政策の焦点は、「開放型か従来型か」という二者択一から、授業中に空間を制御できるかへ移っている。

今後の見通し:193校すべてが改修されるとは限らない

現時点で改修を希望した193校に対し、2026年末までに完了する予定は少なくとも38校だ。希望校の調査、優先順位付け、予算確保、工事中の授業場所の調整には時間がかかる。

また、政府発表は改修済み校からの好意的な声を紹介しているものの、騒音レベル、欠席率、学習成果、教員の負担などを共通指標で比較した評価結果までは示していない。壁を戻した直後の満足度と、長期的な教育効果は分けて確認する必要がある。

複数の展開が考えられる。

改修が順調に広がる場合

初期の38校で騒音低減や授業運営の改善が確認されれば、残る希望校にも予算を配分しやすくなる。標準設計の採用によって、学校ごとに一から設計する負担も減らせる。

改修が限定的になる場合

建物の構造や換気、避難経路の条件によっては、壁を追加するだけでは済まない。費用が膨らめば、深刻な騒音問題や支援ニーズがある学校から優先する運用になる可能性がある。

教育方法との調整が課題になる場合

空間を区切っても、教員配置や授業方法が合わなければ効果は限られる。共同指導の利点を残しながら、いつ空間を閉じるのかを現場で決める必要がある。

日本の学校で見るべき点

日本でも、学校の新築や改修では可動間仕切り、多目的スペース、教室と廊下の連続性が検討される。ニュージーランドの事例から直接持ち帰れるのは、壁の有無という結論だけではない。

施設を計画する際には、少なくとも次の場面を事前に試す必要がある。

  • 隣り合うグループが同時に音読や話し合いをしたとき、声を聞き分けられるか
  • 集中や感覚面で支援が必要な児童が、静かな場所へ移れるか
  • 可動間仕切りを閉じた際に、換気、採光、避難経路を確保できるか
  • 教員が毎回大がかりな準備をせず、空間を切り替えられるか

見栄えのよい広い教室と、実際に集中できる教室は同じとは限らない。 ニュージーランドで次に注目すべきなのは、年末までに改修される38校で、騒音、学習への参加、教員負担が改修前からどう変わるかだ。

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