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海外就労の「待たされ損」に歯止め、ベトナムが180日ルール導入|2026年8月25日版

空港で渡航書類を確認するベトナム人海外就労者。

海外就労の「待たされ損」に歯止め、ベトナムが180日ルール導入|2026年8月25日版

海外で働くための選考に通ったのに、出国できないまま費用と時間だけを失う――。ベトナム国会は8月24日、こうした負担を抑える改正法を476対1の賛成多数で可決しました。

出国までの待機期間を原則180日以内とし、派遣事業者が約束を守れなければ、労働者への補償と徴収済みサービス料などの返還を求めます。 改正法は2027年3月1日に施行される予定です。

今回の要点は次の4つです。

  • 選考通過から出国までの待機期間を180日以内にする
  • 期限を守れない事業者に補償と費用返還を求める
  • 選考・契約前に研修費を徴収する行為を禁じる
  • 無許可の料金徴収や詐欺的な募集への規制を強める
目次

何が変わるのか

中心となるのは、海外就労の入口で労働者が一方的に負ってきたリスクの見直しです。

出国を待たせられる期間に上限

ベトナム政府の発表によると、改正法は労働者が選考に合格してから出国するまでの期間を、原則として180日以内と定めました。

派遣事業者が約束した時期までに出国させられない場合、事業者は次の対応を求められます。

  • 合意内容に基づく補償
  • 徴収済みサービス料の返還
  • 労働者が支払ったその他の費用の返還

補償・返還をいつまでに実施するかは、内務相が細則で定めます。つまり、法律が示した「180日」という線を、今後の省令などで実際に回収できる仕組みへ落とし込めるかが重要になります。

「契約前に払わせる」慣行も規制

VietnamPlusの報道では、派遣事業者が労働者の選考と外国側との契約締結より前に研修費を徴収することも禁止対象として挙げられています。

海外就労を希望する人にとって、採用が確定する前の支払いは大きなリスクです。仕事が成立しなくても、借金や家計負担だけが残りかねません。徴収できる時点を法律で区切ることには、前払いを利用した不当な囲い込みを防ぐ意味があります。

ここがポイント: 改正法は単に悪質業者を罰するだけでなく、「いつまで待たせてよいか」「いつから費用を取れるか」を具体的に区切りました。

なぜ180日ルールが重要なのか

海外就労では、採用決定と実際の渡航が同時とは限りません。査証、受け入れ先の手続き、職業訓練などに時間がかかります。

問題は、遅延の責任が曖昧なまま、労働者だけが待機コストを負うケースです。国内の仕事を辞めたり、渡航費用を借りたりした後で出国が延びれば、収入がない期間が長引きます。

新制度では、180日を超えた時点で自動的にすべてが解決するわけではありません。それでも、労働者が返金や補償を求める際に、明確な基準ができます。

「もう少し待ってほしい」という事業者の説明だけで、待機が際限なく延びる状態を防ぐための期限です。

費用規制は一段ずつ強化されてきた

今回の改正は、ゼロから始まったものではありません。

ベトナムが2020年に成立させ、2022年に施行した海外契約労働者法では、仲介手数料を労働者へ転嫁する行為の禁止や、虐待・強制労働などに直面した労働者が契約を一方的に終了できる仕組みが盛り込まれました。国際労働機関(ILO)は、こうした規定を公正な採用へ向けた前進として紹介しています。

一方、今回の改正では禁止対象を無許可のサービス料やその他の徴収へ広げ、詐欺的な募集による財産被害にも対応します。VnEconomyは、違法な料金と詐欺の排除が改正の柱だと報じました。

背景には大きな派遣市場があります。法案審議段階の報道によると、2026年6月時点で、ベトナムには海外就労サービスを提供する認可事業者が499社ありました。事業者が多いからこそ、正規の募集と無許可の仲介を労働者が見分けられる情報提供も欠かせません。

保護強化と同時に対象業務も制限

改正法は労働者を守る規定だけでなく、送り出しを禁止する仕事や地域も明確にしています。

VietnamNetの報道によると、海外でのマッサージ業務を目的とした募集、準備、派遣は禁止されます。また、武力紛争地域や、当局が渡航中止・制限を勧告する地域への派遣も対象外となります。

ここには労働者保護という目的がある一方、職種を一律に禁じることの妥当性は別途検証が必要です。危険な仲介や搾取を排除する規制と、本人が選べる就労機会の制限をどう区別するのか。施行後の運用で問われる部分です。

日本の受け入れ現場にも無関係ではない

この法律はベトナム側の送り出し制度ですが、日本の雇用主、監理・支援に関わる団体、仲介事業者にも影響し得ます。

受け入れ手続きが長引けば、ベトナム側の事業者は180日という期限を意識する必要があります。募集時に示した渡航時期、費用、返還条件について、送り出し側と受け入れ側の説明が食い違えば、労働者が不利益を受ける構図は変わりません。

日本側で確認すべきなのは、例えば次の点です。

  • 採用決定から在留資格・査証・入国までの想定日程を共有しているか
  • 労働者が選考前や契約前に何を支払っているか把握しているか
  • 渡航中止時の返金条件が本人に分かる言葉で示されているか
  • 正規の認可事業者と契約しているか確認できるか

ILOの公正な採用原則は、採用手数料や関連費用を労働者に直接・間接を問わず負担させるべきではないとしています。日本の受け入れ側も、「現地の送り出し事業者が処理する費用」として見過ごさず、労働者本人への請求内容を確認する必要があります。

施行までに見るべき3つの点

改正法の施行は2027年3月1日です。それまでに、法律の理念を現場で使える手続きへ変えられるかが焦点となります。

  1. 返金・補償の期限と申請方法
    労働者がどこへ申し立て、どの資料で選考日や支払いを証明するのか。

  2. 無許可の仲介業者への監督
    認可事業者499社の外側で活動する個人や組織を、地方当局がどう把握するのか。

  3. 180日を超えた案件の責任分担
    遅延原因がベトナムの派遣事業者、海外の雇用主、入国審査のどこにあるかで、補償の扱いが変わるのか。

180日という数字は分かりやすい。しかし、労働者が実際にお金を取り戻せなければ、期限は紙の上に残るだけです。次に注目すべきなのは、補償・返還の細則と、2027年3月以降に最初の申立てがどう処理されるかです。

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