さいたま市、10年後に築40年超が49%へ マンションの「二重の高齢化」に備える5つの確認
高経年マンションで先に手を打つべきなのは、建物の修繕だけではありません。住民が元気なうちに、管理組合の担い手、修繕資金、合意形成の方法まで整えることが重要です。
さいたま市が2026年に改定したマンション管理適正化推進計画では、市内の築40年以上のマンションが10年後に全体の49.0%へ達する見通しが示されました。建物と住民が同時に年齢を重ねる問題は、すでに身近な住宅政策の課題です。
- さいたま市内の分譲マンションは2025年1月時点で2,158棟
- うち築40年以上は519棟、築50年以上は146棟
- 全国では築40年以上が2024年末の約148万戸から、2034年末に約293万戸へ増える見込み
- 対策の起点は、長期修繕計画、資金、役員の担い手、連絡体制、管理規約の5項目
「二つの老い」は修繕と意思決定を同時に難しくする
問題の核心は、建物を直す必要が高まる時期に、それを決めて動かす人が減ることです。
一つ目の老いは、外壁、防水層、給排水管、エレベーターなどの経年劣化です。修繕を先送りすると、漏水や設備停止が起きやすくなり、工事範囲も費用も膨らみかねません。
もう一つは、区分所有者や居住者の高齢化です。理事会への出席が難しくなる人が増えたり、役員を引き受ける人が固定化したりすると、見積もりの比較や総会資料の作成、住民への説明を続けにくくなります。
国土交通省の2023年度マンション総合調査では、1984年以前に完成したマンションで世帯主が70歳以上の割合は55.9%でした。全体でも、修繕積立金が計画上の必要額に足りないマンションは36.6%に上ります。
つまり、建物の不具合が見つかってから費用を集めようとしても、高齢の所有者を含む住民間で急な負担増への合意を得にくい場合があります。技術上の問題が、資金と意思決定の問題に直結するのが「二つの老い」です。
さいたま市の数字が示す、10年以内に動く必要性
さいたま市では、高経年化が一部の古い団地だけの問題ではなくなりつつあります。
市の改定計画によると、2025年1月時点の2,158棟のうち、築30年以上は1,142棟です。すでに過半数を占め、築40年以上も519棟あります。10年後には築40年以上が全体の49.0%になる見込みです。
市の調査で長期修繕計画を策定している管理組合は84.4%でした。ただし、次の数字を見ると「計画がある」だけでは十分でないことが分かります。
- 計画期間を30年以上としている管理組合:63.1%
- 5年ごとを目安に計画を見直している管理組合:50.7%
- 計画に基づいて修繕積立金を定めている管理組合:75.3%
資材費や人件費、設備更新の周期が変われば、古い計画の工事費は現実と合わなくなります。計画書の有無より、直近の見積もりや建物診断を反映しているかが重要です。
市は、管理に課題を抱えるマンションが小規模で築年数の古い建物に多く、自助努力だけで管理機能を回復するのは難しいと整理しました。相談、基礎セミナー、専門家派遣などを、問題が深刻になる前につなぐ必要があります。
ここがポイント: 自治体が工事を決めたり修繕費を全額負担したりする制度ではありません。管理の主体は区分所有者で構成する管理組合であり、自治体は実態把握、相談、専門家との橋渡し、認定や助言を担います。
2026年施行の改正法で何が変わったのか
法改正は合意形成を進めやすくしましたが、管理組合の判断そのものを代行するものではありません。
2025年に成立した改正マンション関係法は、主要部分が2026年4月1日に施行されました。修繕など区分所有権の処分を伴わない事項は、原則として集会出席者の多数決で決める仕組みになり、裁判所が認定した所在不明の区分所有者を決議の母数から除く制度も設けられました。
また、管理会社が管理組合の代表者を兼ねる「管理業者管理者方式」では、管理会社が関係する工事などの自己取引について、区分所有者への事前説明が義務化されています。
これは役員の担い手不足への選択肢になります。ただし、外部へ任せれば住民が確認しなくてよいわけではありません。
外部へ管理を委ねる前の確認点
- 管理者の権限と契約期間、解約条件
- 管理業務と工事発注を誰が監督するか
- 相見積もりや利益相反を確認する手順
- 区分所有者への報告頻度と閲覧できる資料
- 委託費を含む継続的な費用負担
役員不足を解消するための委託が、チェック機能の不足を招かない設計になっているか。ここが判断の分かれ目です。
誰が決め、誰が費用を負担するのか
マンション管理では、国、自治体、専門家、管理組合の役割を分けて考えると制度を理解しやすくなります。
国
法律、標準管理規約、長期修繕計画や修繕積立金の指針を整えます。再生や管理不全への対応制度も国が設計します。
自治体
地域内のマンションを調査し、相談、セミナー、専門家派遣、管理計画認定、必要に応じた助言や指導を行います。具体的な支援内容や費用は自治体によって異なります。
管理会社・マンション管理士・建築士
日常管理、計画の点検、建物診断、工事内容の整理、合意形成の支援などを担います。契約範囲と報酬、利害関係の確認が必要です。
管理組合と区分所有者
工事の実施、積立金の変更、借り入れ、一時金、外部専門家への委託などを決定します。修繕費の基本的な負担者も区分所有者です。
自治体の支援は管理組合の判断材料を増やしますが、毎月の積立額や工事会社を決めるのは住民側です。公的な相談窓口を使う場合も、総会決議まで自動的に進むわけではありません。
住民が今から確認したい5項目
築年数だけで危険度を判断せず、管理が実際に動く状態かを確かめることが第一歩です。
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長期修繕計画の更新日
5年程度を目安に見直され、給排水管やエレベーターなど高額設備の更新が含まれているか確認します。 -
修繕積立金の収支
現在残高だけでなく、今後の工事費に対する不足額、値上げや一時金、借り入れの想定まで見ます。 -
役員と連絡先の継続性
同じ人に業務が集中していないか、緊急時に不在所有者や家族へ連絡できるかを点検します。 -
管理規約と総会運営
2026年施行の改正法や標準管理規約に合わせて見直すべき箇所がないか、専門家を交えて確認します。 -
自治体の支援制度
相談窓口、アドバイザー派遣、管理計画認定、耐震診断や修繕への助成の有無を自治体サイトで調べます。
理事でなくても、総会議案書、収支決算、長期修繕計画、大規模修繕の履歴を確認できます。中古マンションの購入を検討する人にとっても、この4種類の資料は築年数や内装以上に重要な判断材料です。
市民の意見から見える生活上の不安
さいたま市の改定素案に対する意見募集では、2人から2項目の意見が寄せられました。件数は限られますが、内容は生活に直結しています。
一つは、高経年マンションで起こる漏水を重く見て、専有部分の給水管・給湯配管の更新も計画に盛り込んでほしいという意見です。市は配管更新を経年劣化の課題と認め、相談やセミナーで周知を続けるとしました。
もう一つは、住民や役員へのなりすましなど不正行為への対策を求める意見です。高齢化対策というと役員不足が注目されがちですが、本人確認、書類管理、工事発注の透明性も同時に整えなければなりません。
次の分岐点は「故障前に合意できるか」
高経年マンションの将来を分けるのは、築40年という数字そのものではありません。配管から水が漏れ、エレベーターが止まり、外壁に危険が生じてから動くのか。それとも、元気に議論できる住民がいるうちに、費用と役割を決めるのかです。
まず次回の総会までに、次の3点を管理会社や理事会へ確認するのが現実的です。
- 長期修繕計画を最後に見直した年月
- 計画額に対する修繕積立金の不足見込み
- 役員不足や緊急連絡に備えた運営ルール
さいたま市で築40年以上が半数近くになるまで、見通しでは約10年あります。しかし、大規模修繕の準備と合意形成にも年単位の時間がかかります。次の不具合ではなく、次の総会を起点にすることが具体的な備えになります。
