広島県の小学生、路線バスが1乗車50円に――現金と乗車証が必要|2026年8月16日版
広島県では2026年8月31日まで、小学生が対象の路線バスを利用区間にかかわらず1乗車50円で利用できます。
ただし、支払いは現金のみ。学校を通じて配られた乗車証の原本も必要です。ICカードで乗ると通常の小児運賃になるため、夏休み後半に利用する家庭は準備を確認しておきたいところです。
- 実施期間は7月18日から8月31日まで
- 対象は小学生、運賃は1人・1乗車50円
- 降車時に乗車証を見せ、整理券と現金50円を投入
- 高速バスや空港リムジンバスなどは対象外
「どこまで乗っても50円」、県内全域に広がった初の取り組み
「2026夏休み こども50円バス」は、広島市域で企画された取り組みを、広島県の調整によって県内全域へ広げたものです。県の広報では、行政と交通事業者が連携した初の試みと紹介されています。
小学生は対象路線であれば、短い区間でも、終点近くまで乗っても1回50円。往復で利用する場合は計100円です。
利用時の手順は次の通りです。
- 県内の小学校を通じて配られたチラシから乗車証を切り取る
- バスに乗るときに整理券を取る
- 降車時、運転士に乗車証の原本を見せる
- 整理券と現金50円を運賃箱へ入れる
乗車証は本人だけが使えます。画像やコピーではなく、学校から配られた原本を持参する必要があります。
広島市は対象を「小学生」と案内しており、利用区間による金額の違いはありません。一方、障害者割引との併用はできず、介護者には各社の通常の割引制度が適用されます。
利用前に注意したい3つの落とし穴
割引額は分かりやすい一方、通常のバス利用とは異なる点があります。特に支払い方法と対象路線は、出発前の確認が欠かせません。
ICカードでは50円にならない
モビリーデイズやICOCAなどのICカードで支払うと、通常の小児運賃が適用されます。
県は現金限定とした理由について、小児用ICカードの割引設定を個別に変更すると、運転士による手動操作が増え、円滑な運行に支障が出る可能性があるためと説明しています。親子の運賃を1枚のカードでまとめて払う場面もあり、車内処理が複雑になることを避けた形です。
50円硬貨がなくても、車内で両替できる場合はあります。ただし、混雑や両替機の仕様も考え、乗車回数分の硬貨をあらかじめ用意するほうが安心です。
すべてのバスが対象ではない
県内の多くの路線バスで利用できますが、次の交通機関や便は原則として対象外です。
- 高速バス
- 空港リムジンバス
- 県境をまたぐ路線バス
- 花火大会などの臨時シャトルバス
- 一部のコミュニティバス
- 運行事業者が参加を見送った路線
同じ会社のバスでも、路線や運行日によって扱いが異なる場合があります。広島県の対象路線一覧で、乗る予定の便まで確認するのが確実です。
乗車証は原則として再発行されない
乗車証は金券に相当するため、県は不正利用防止の観点から必要最低限の枚数を配布しています。紛失時の再発行は原則として予定されていません。
破損や汚損で使えなくなった場合は、在庫の範囲で対応する可能性があります。雨などで少し傷んでも券面を確認できれば使用できますが、折り曲げや水濡れを避けられるケースに入れて持ち歩くとよいでしょう。
ここがポイント: 50円で利用するには「対象路線」「乗車証の原本」「現金」の3点がそろっている必要があります。ICカードをタッチするだけでは割引になりません。
家計支援だけではない、将来の利用者を育てる狙い
この企画の目的は、夏休みの交通費を抑えることだけではありません。広島県と交通事業者は、子どもが路線バスに乗る経験そのものを増やそうとしています。
県が掲げる狙いは二段構えです。
- 短期:親子の外出を促し、公共交通の利用者を増やす
- 中長期:子どもの頃からバスに親しみ、将来の利用者につなげる
背景には、利用者の減少と運転士不足があります。バス協調・共創プラットフォームひろしまの担当者は、コロナ禍後に利用が回復傾向にある一方、人手不足が重なり、従来の運行便数を保つことが難しくなっていると県の広報で説明しています。
ここで重要なのは、50円運賃が単発の値引きにとどまらず、「バスの乗り方を覚える機会」として設計されている点です。子どもは時刻を調べ、整理券を取り、降車時に運賃を払います。日頃は自家用車で移動する家庭にとっても、地域の交通網を知る入口になります。
「乗リエンテーリング」と組み合わせ、移動自体を夏休みの体験に
県は50円バスと連動して、公共交通で県内のスポットを巡る「乗リエンテーリング」も実施しています。
県内87カ所に設定されたミッションや謎解きに挑戦し、シールを3枚以上集めて体験記を作れば、自由研究としてまとめられる仕組みです。ミッションへの挑戦とシールの受け取りには、保護者の同伴が必要です。
割引によって目的地までの費用を下げるだけでなく、乗り換えや時刻表、車窓から見える地域を学習材料に変えています。買い物やレジャーの予定がある家庭なら、普段は車で向かう場所へバスで行く選択肢も検討できます。
実施後に問われるのは「一度乗った」で終わらないか
地元メディアのRCC中国放送は、この取り組みを県内の小学生が「どこまで乗っても50円」になる初企画として報じました。また、県のFAQには、ICカードが使えない理由、乗車証の再発行、対象が小学生に限られる理由など、利用者が迷いやすい質問が整理されています。
便利さへの期待がある一方、現金限定や紙の乗車証、路線ごとに異なる対象範囲は、初めてバスを使う家庭ほどつまずきやすい部分です。制度を広げるなら、運転士の負担を増やさずに支払いを簡単にできるかも課題になります。
広島市の発表では、9月から10月に事業効果を検証する予定です。次に見るべきなのは、単純な利用人数だけではありません。
- 親子の外出回数がどれだけ増えたか
- 初めて路線バスを使った家庭がどの程度あったか
- 現金限定や乗車証の提示で混乱が生じなかったか
- 夏休み後も利用につながったか
- 参加しなかったコミュニティバスを含め、地域差がどう表れたか
50円で乗れる期間は8月31日までです。利用を考えている家庭は、まず乗車証を確認し、公式サイトで対象路線とお盆期間のダイヤを調べ、人数と乗車回数に応じた現金を用意する。この3つが、当日に割引を確実に使うための実践的な手順になります。
