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英国「理由なき退去」の旧手続き、7月31日が最後の申立期限|2026年7月23日版

英国の賃貸住宅前で退去手続きの書類を確認する借主。

英国「理由なき退去」の旧手続き、7月31日が最後の申立期限|2026年7月23日版

英国イングランドで、家主が理由を示さず借主に退去を求める旧来の「セクション21」手続きが、最終局面を迎えている。2026年5月1日より前に有効な通知が出されていても、家主が旧制度に基づいて裁判所へ申し立てられるのは、遅くとも7月31日までだ。

8月以降、家主が新たに明渡しを求める場合は、物件の売却、家主本人の入居、家賃滞納、反社会的行為など、法律で定められた理由を示さなければならない。対象は原則としてイングランドの民間賃貸住宅であり、英国全土に一律適用される制度ではない。

  • 旧セクション21通知を使った裁判手続きの申立期限は、遅くとも2026年7月31日
  • 期限までに始まった裁判が、8月1日に自動終了するわけではない
  • 新制度でも立ち退き自体は禁止されず、家主は法定理由を示して申し立てる
  • 家賃値上げ、前払い家賃、入居希望者間の競り上げにも新しい制限がある
目次

7月31日に何が変わるのか

焦点は、退去通知の日付ではなく、家主が裁判所で明渡し手続きを開始できる期限にある。

セクション21は、家主が借主の契約違反を立証しなくても、所定の通知と手続きを踏めば物件の明渡しを求められる仕組みだった。英国政府は2026年5月1日、民間賃貸住宅の新旧契約について、この「理由なき退去」制度を原則廃止した。

ただし、制度移行前に通知を受け取った人がいるため、経過措置が設けられた。家主が旧通知を使えるのは、次のうち早い日までとなる。

  • そのセクション21通知自体の有効期限
  • 2026年7月31日

つまり、通知書により遅い日付が書かれていても、7月31日を越えて旧制度による裁判手続きを始めることはできない。反対に、期限内に申し立て済みの事件は、その後も裁判所で処理され得る。

ここがポイント: 7月31日は「全員の退去日」でも「進行中の裁判の終了日」でもない。旧セクション21通知を根拠に、家主が裁判所へ新たに申し立てられる最終期限だ。

借主は通知だけで直ちに住居を失うわけではない

退去通知を受け取った借主にとって重要なのは、通知書だけで強制退去が成立するわけではない点だ。

借主が通知期間後も住み続けた場合、家主は裁判所に明渡命令を申し立てる必要がある。さらに、強制的な退去には所定の執行手続きが必要になる。家主が自ら鍵を交換したり、正規の手続きを経ずに借主を追い出したりしてよいわけではない。

移行期には、日付の確認が特に重要になる。

  • 通知が2026年5月1日より前に出されたものか
  • 通知の有効期限がいつまでか
  • 家主が7月31日までに裁判手続きを始めたか
  • 通知や申立書に不備がないか
  • 新制度上の別の退去理由が提示されているか

英国政府は、退去通知を受け取った借主向けの案内を公開している。個別の通知が有効かどうかは契約や書類によって異なるため、政府案内に加え、住宅支援団体ShelterやCitizens Advice、自治体への相談が現実的な対応になる。

「立ち退き禁止」ではなく、理由を問う制度へ

新制度でも、家主が物件を取り戻す道は残されている。変わったのは、理由を示さないセクション21ではなく、法律上の根拠に沿って手続きを進めることが基本になった点だ。

家主が使える主な理由

政府の借主向け案内は、明渡しを求め得る例として次を挙げている。

  • 家主が物件を売却する
  • 家主本人などが物件に入居する
  • 借主に家賃滞納がある
  • 借主や同居人、訪問者が周辺で反社会的行為をした
  • 一定の学生向け共同住宅を次年度の学生に提供する

必要な通知期間は理由によって異なる。売却や家主の入居では通常4カ月の通知が必要とされる一方、滞納などでは別の期間が適用される場合がある。

そのため、8月以降も明渡しをめぐる紛争はなくならない。裁判では、家主が示した理由が法定要件に当てはまるか、必要な書式や通知期間が守られたかが、これまで以上に重要になる。

借主側にも契約終了の手続きがある

民間賃貸の多くは、終了日を固定した契約から、週単位または月単位で継続する定期借家型ではない継続契約へ移行した。借主は原則として2カ月前に書面で通知すれば、契約を終了できる。

家主だけでなく借主にとっても、契約満了日まで縛られる仕組みから、住み替え時期を調整しやすい仕組みに変わったことになる。ただし、通知期間中の家賃は支払う必要がある。

家賃と入居募集にも生活直結の変更

今回の改革は退去手続きだけではない。住まいを探す段階から入居後の家賃改定まで、借主の日常に関わるルールがまとめて変わった。

家賃の競り上げを禁止

家主や仲介業者は、書面による広告や募集で具体的な家賃を表示し、その金額を上回る申し出を求めたり、受け入れたりできない。

人気物件をめぐり、入居希望者が表示額より高い家賃を提示して競う状況を抑える狙いがある。借主にとっては、広告で見た金額が契約交渉の途中で事実上の最低価格へ変わる事態を避けやすくなる。

前払いは原則1カ月分まで

契約成立前に家賃を受け取ることは禁止され、契約後に求められる前払い家賃も原則として1カ月分が上限となった。

多額の家賃を一括で用意できる人が有利になる慣行は、若者、低所得世帯、海外から移住したばかりの人に重い参入障壁となる。上限設定は、物件を借り始める際の現金負担を直接減らす変更だ。

値上げは年1回

家主が家賃を引き上げられるのは原則年1回で、新規契約の最初の12カ月には値上げできない。所定の書式を使い、少なくとも2カ月前に通知する必要がある。

借主は、市場相場を上回ると考える値上げに異議を申し立てられる。制度の実効性は、借主が手続きを知っているか、相談先へ到達できるかにも左右される。

影響を受ける人、別ルールになる人

政府は、改革によってイングランドの民間賃貸に暮らす約1,100万人の権利が強化されたとしている。一方、住まいの種類と地域を確認せずにルールを当てはめるのは危険だ。

今回の政府案内が直接対象とするのは、イングランドの民間家主から住宅を借りる人である。次の人には異なるルールが適用される。

  • 自治体や住宅協会から借りている人
  • 大学などの学生寮に住む人
  • 家主と同居する間借り人
  • スコットランド、ウェールズ、北アイルランドで借りている人

また、政府は民間家主と賃貸物件のデータベース、独立したオンブズマン制度を2026年後半から段階的に導入する方針を示している。危険なカビや住宅の不具合への対応基準など、開始時期が確定していない改革も残る。

今後の焦点は「権利を使えるか」

法律上の転換点は7月31日だが、制度の成否はその翌日に決まるものではない。見るべきなのは、理由なき退去が別名目の申し立てに置き換わっていないか、借主が不当な家賃改定に異議を申し立てられるか、自治体が違反を調査できるかだ。

今後の注目点は3つある。

  1. 移行期の裁判件数
    7月末までに旧セクション21通知を使った申立てが集中するか。

  2. 新しい退去理由の運用
    売却や家主入居を理由とする申立てについて、裁判所が証拠と手続きをどう確認するか。

  3. 次段階の実施時期
    家主データベース、オンブズマン、民間賃貸への住宅品質基準が、予定どおり具体化するか。

日本でも住居費の上昇や高齢者、外国人、低所得世帯の入居拒否が課題になるなか、英国の制度が示すのは単なる「借主保護」の標語ではない。募集価格、前払い、値上げ、退去理由、相談先を一連の契約過程として規制し、家主が何を説明しなければならないかを具体化している。

まず確認すべき日は7月31日。その後は、紙の上で増えた権利が、相談窓口と裁判の現場で実際に使えるかが問われる。

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