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コネチカット州のホームレス罰則禁止法案、何を変える?「寝る・食べる」を自治体が罰せない線引き

コネチカット州のホームレス罰則禁止法案、何を変える?「寝る・食べる」を自治体が罰せない線引き

コネチカット州で、ホームレス状態の人が公共の場所で寝る、休む、食べる、医療を受ける、寄付を求めるといった行為を、自治体が罰則で取り締まれないようにする法案が前進している。焦点は「野宿を認めるか」ではなく、住まいがない人の日常行為を、罰金やチケットでさらに追い込むべきかという線引きだ。

法案は HB 5260。州議会の公式資料では、自治体が「certain activities of daily living」に罰則を科すことを禁じる内容として扱われている。現地報道によると、住宅委員会と計画・開発委員会を通過し、下院での扱いが次の焦点になっている。

  • 対象は、自治体が所有・管理する公開空間での基本的な生活行為
  • 寝る、休む、食べる、飲む、天候から身を守る、医療を受ける、寄付を求める行為を含む
  • 学校、商業空港、州交通局が管理する土地、建物内部などは対象外
  • 公衆の健康・安全を脅かす行為まで自治体が規制できなくなるわけではない
目次

何が変わるのか

この法案が成立すれば、自治体は「公共の場所にいること」そのものに近い行為を、ホームレス状態の人だけに不利な形で罰することが難しくなる。

罰則の対象から外す行為

州議会に提出された法案文は、ホームレス状態の人について、自治体が次の行為を禁止・処罰する条例を制定または執行できないとする。

  • 公共の場所を他の人と同じように使い、移動すること
  • 合法的に駐車された車やRVで寝ること
  • 公開されている衛生施設を使うこと
  • 公共の場所で寝る、休む、飲食する、天候から身を守ること
  • 医療を受けること
  • 食料、水、お金などの寄付を求めること

重要なのは、法案がすべての規制を消すわけではない点だ。法案文には、公共の健康、福祉、安全を危険にさらす、またはそのおそれがある行為を禁じる条例までは妨げない、という但し書きがある。

つまり、公園や歩道の管理、危険な構造物、衛生上の問題、通行妨害への対応は残る。一方で、住まいがない人が寒さをしのいで休むだけで罰金を受けるような運用には、州法で歯止めをかける狙いがある。

ここがポイント: 法案は「公共空間を完全に自由化する」ものではなく、自治体の安全管理を残しながら、生活の最低限の行為を罰則化しにくくするものだ。

背景にあるのは米最高裁の判断

この動きの背景には、2024年6月28日の米連邦最高裁判決「City of Grants Pass v. Johnson」がある。同判決は、オレゴン州グランツパス市の公共キャンプ規制をめぐり、公共の場所で寝る、キャンプする行為への処罰が、ただちに合衆国憲法修正第8条の「残虐で異常な刑罰」に当たるとはいえない、という方向を示した。

この判決後、自治体は野宿やキャンプを制限する条例を作りやすくなった。住宅支援団体が警戒するのは、そこで発生する実務上の連鎖だ。

  • 罰金が払えず、未払いが残る
  • 裁判所や警察との接点が増える
  • 記録や債務が就労、賃貸契約、支援申請の障害になる
  • 結果として、住まいを得る道がさらに狭くなる

コネチカット州の法案は、この全国的な流れに対する州レベルの反応と見られる。連邦最高裁が自治体の裁量を広げた後、州が別の基準を設け、自治体の罰則運用を制限しようとしている。

現場でぶつかる二つの要請

支持側は、罰則ではホームレス状態そのものは減らないと主張する。コネチカット州では、2025年1月のポイント・イン・タイム調査で、シェルター内外を含むホームレス状態の人が3,735人とされ、2024年の3,410人から増えた。屋外や車内などで暮らす「unsheltered」の人は574人から833人へ、45%増えたと報じられている。

この数字が意味するのは、取り締まりの対象が紙の上の概念ではないということだ。車で寝る人、公園で休む人、寒さを避ける場所を探す人が実際に増えている。

一方で、自治体側の懸念も単純ではない。小さな中心市街地、公園、商店街では、衛生、通行、安全、近隣事業者への影響を無視できない。コネチカット・パブリックは、反対意見として、自治体が野営地化や不衛生な状態を防ぐ手段を失うことへの懸念を紹介している。

この法案の争点は、次の二つをどう分けるかにある。

  • 罰するべきではない行為: 寝る、休む、食べる、寒さを避けるなど、住まいがないため公共空間で行わざるを得ない行為
  • 自治体が対応すべき行為: 危険物、火気、通行妨害、衛生被害、公共施設の占有など、他者の安全や利用を損なう行為

この線引きが曖昧なままだと、支援の現場も自治体の職員も動きにくい。法案は、少なくとも「生活行為そのものを罰金にする」方向にはブレーキをかけようとしている。

日本から見ると何が参考になるか

日本で同じ制度をそのまま導入できる、という話ではない。法体系も自治体の権限も違う。ただ、駅周辺、公園、河川敷、公共施設の管理をめぐる判断では、似た論点が出てくる。

特に参考になるのは、公共空間の管理を「排除か放置か」の二択にしない点だ。

  • 生活行為への罰則化は、本人の再建を難しくする可能性がある
  • 住民や店舗の安全・衛生上の不安は、自治体が現実に対応しなければならない
  • 取り締まりだけでなく、緊急宿泊、医療、生活相談、住宅支援を同時に用意しないと、場所を移すだけになりやすい

コネチカット州の議論は、ホームレス支援を福祉部門だけの話にしていない。警察、都市管理、公園、商店街、交通用地、住宅政策が同じテーブルに乗っている。そこにこの法案の実務的な意味がある。

今後の注目点

HB 5260 は、成立すれば2026年10月1日に施行される内容として提出されている。ただし、下院・上院での審議、修正、知事の署名まで進む必要がある。

今後見るべき点は三つある。

  • 下院審議で、対象となる公共空間や除外規定が修正されるか
  • 自治体の安全管理権限と、罰則禁止の境界がどこまで明文化されるか
  • 罰則を減らすだけでなく、シェルター、住宅支援、医療・相談体制への資金が伴うか

罰金をなくしても、寝る場所が増えるわけではない。だが、罰金や記録で住まいへの道をさらに遠ざけるのか、それとも安全管理と支援を分けて設計するのか。コネチカット州の法案は、その選択を州議会に突きつけている。

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