ブリュッセルの住宅街で駐車が有料化 「青ゾーン」から「緑ゾーン」へ変わる意味
ブリュッセル市は、北部のネーデル=オフェル=ヘームベークで、2026年4月15日から路上駐車の扱いを「青ゾーン」から「緑ゾーン」に切り替える。これまで一定時間は無料で使えた地域が、月曜から土曜の9時から19時まで有料になる。
狙いは、単なる増収ではない。市は、長時間駐車を減らし、住民と訪問者が使える空きを増やすための措置だと説明している。郊外の住宅街が、通勤者の「置き場」になってきたことへの対応だ。
- 開始日: 2026年4月15日
- 対象: ブリュッセル市北部のネーデル=オフェル=ヘームベーク地区
- 変更点: 青ゾーンから緑ゾーンへ移行し、非住民の駐車が有料化
- 住民側: 既存の住民駐車カードは有効で、手続きは不要
何が変わるのか
今回の変更で大きいのは、駐車時間の考え方が変わることだ。
青ゾーンでは、駐車ディスクを使えば原則として無料で短時間駐車できる。ネーデル=オフェル=ヘームベークも、2026年4月14日まではこの扱いが続く。
4月15日からは緑ゾーンになる。緑ゾーンは有料ゾーンで、住民駐車許可を持つ人を優先する設計だ。parking.brussels の説明では、緑ゾーンの地域標準料金は次のようになっている。
- 最初の15分: 駐車券を発行すれば無料
- 1時間目: 1.80ユーロ
- 2時間目: 3.70ユーロ
- 追加1時間: 2.70ユーロ
- 未払いなどの場合: 4.5時間ごとに37ユーロ
市の発表では、ネーデル=オフェル=ヘームベークの有料時間は月曜から土曜の9時から19時まで。住民駐車カードをすでに持っている人は、そのまま使える。
ここがポイント: 無料の短時間駐車を完全になくすのではなく、非住民の長時間駐車に料金をかけ、住民用の駐車枠を回復させる仕組みだ。
なぜ住宅街で有料化するのか
背景にあるのは、住宅街の路上スペースが通勤者の受け皿になってきたことだ。
ブリュッセル市議のアナイス・マエス氏の発表資料では、近年のネーデル=オフェル=ヘームベークの一部が、多くの通勤者にとって「駐車の逃げ場」になっていたと説明されている。市議会は2026年2月9日にこの変更を承認し、4月15日に施行する流れになった。
ここで問題になるのは、道路そのものの広さではない。誰が、何時間、どの目的でその場所を占めるのかだ。
住宅街の路上駐車は、次のような使い方が重なりやすい。
- 住民が帰宅後に車を置く
- 介護や家族訪問のために短時間停める
- 近くの施設や交通機関を使う人が長時間置く
- 買い物や用事のために一時的に停める
無料の青ゾーンは、短時間利用には分かりやすい。一方で、取り締まりや回転が十分でなければ、住民の近くの枠が外部利用で埋まりやすい。緑ゾーン化は、そこに料金と許可制度を入れて、使い方を振り分ける措置になる。
住民と訪問者には何が残るのか
市は、住民側の負担を抑える説明を前面に出している。
既存の住民駐車カードは有効で、ネーデル=オフェル=ヘームベークの変更に合わせて新たな手続きをする必要はない。住民駐車カードは、居住地の区域で使える電子カードで、世帯ごとに最大2枚まで取得できる仕組みだ。
料金面では、ブリュッセル市の住民駐車カードは次の水準になっている。
- 1枚目: 1年15ユーロ、2年30ユーロ
- 2枚目: 1年127ユーロ、2年254ユーロ
- セカンドホーム向け: 1年529ユーロ、2年1058ユーロ
訪問者向けの扱いも残る。市の制度では、住民は訪問者用の駐車バウチャーを年間最大100枚まで使える。2026年からは、最初の20枚が無料となり、その後は4.5時間あたり2.50ユーロの割引チケットが用意される。
これは、住民だけを守る制度ではない。家族の訪問、修理業者、介護、友人の来訪といった、住宅街で実際に起きる用事を残しながら、長時間の外部駐車を抑える組み立てになっている。
ブリュッセル市全体の駐車政策ともつながる
今回の変更は、1地区だけの細かな規則変更ではなく、ブリュッセル市の新しい駐車計画の一部だ。
市は2025年6月24日に市の駐車規則を改定した。そこで示された柱は、住民、地域の商店、訪問者の使い方を分けて調整することだった。
主な内容は次の通り。
- パーキングメーターで20分間の無料駐車を導入し、短い買い物や用事に対応する
- 住宅地では有料時間を19時までにする
- ペンタゴン、ルイーズ地区、ヘイゼルなど活動量の多い地区では21時まで有料を維持する
- 住民向けの無料訪問者チケットを年間10枚から20枚に増やす
つまり、市は「車を締め出す」だけでなく、短時間利用、住民利用、長時間利用を分けている。住宅街で必要な訪問を残しながら、通勤者の長時間駐車には料金でブレーキをかける。
この設計は、日本の都市部や郊外駅周辺にも引きつけて読める。たとえば、駅から少し離れた住宅街で無料駐車が増え、住民が夜に停めにくくなる場合、単に駐車禁止を増やすだけでは摩擦が大きい。住民許可、短時間無料、訪問者枠をどう組み合わせるかが実務上の論点になる。
反発が出やすい点もはっきりしている
有料化は、住民にとっても完全に痛みのない変更ではない。
住民カードを持たない人、手続きに慣れていない人、家族や介護者の車を頻繁に受け入れる世帯は、制度を理解して使い分ける必要がある。訪問者バウチャーがあるとはいえ、年間枚数や申請方法を知らなければ不便に感じる場面は出る。
また、地区の境界付近では、無料で停められる隣接エリアに車が移る可能性もある。ブリュッセル市の新駐車計画でも、隣接自治体との規則調整が今後の課題として挙げられている。
見ておきたい争点は、次の3つだ。
- 有料化後、本当に住民向けの空きが増えるか
- 通勤者の車が別の住宅街へ移動しないか
- 訪問者バウチャーや住民カードの手続きが高齢者や介護利用者に分かりやすいか
小さな駐車規則が都市政策になる
ネーデル=オフェル=ヘームベークの変更は、派手な交通政策ではない。対象は一つの地区で、変更点も「青ゾーンから緑ゾーンへ」という地味なものだ。
しかし、路上駐車は都市の生活に直結する。帰宅した住民が停められるか。短い買い物で商店前に停められるか。介護に来た人が近くに車を置けるか。そこに、通勤者の長時間駐車が重なる。
ブリュッセル市は、4月15日からこの重なりに料金と許可制度で線を引く。次に見るべきなのは、住民の駐車が本当に改善するか、そして外に押し出された車がどこへ向かうかだ。
