アイルランド、通学路改善に83校追加 徒歩・自転車を選べる校門前へ|2026年10月25日版
アイルランドが、子どもたちの通学路を整備する「Safe Routes to School(SRTS)」に83校を追加する。国家運輸庁(NTA)が10月8日に発表した。参加校は609校になるが、参加決定は工事完了を意味しない。新たな学校では、自治体などと必要な対策を検討する段階から始まる。
この事業が変えようとしているのは、毎日の登下校の選択肢だ。校門前の混雑や横断の危険を減らし、保護者が徒歩や自転車での通学を選びやすい道路をつくる。NTAの発表は、対象校の拡大とともに、整備を実際に届ける課題も示している。
- 新たに83校が参加し、事業の参加校は計609校へ。
- 校門前、通学経路、駐輪場所を組み合わせて改善する。
- 整備済み校では通学手段の変化が報告されているが、全国の効果とは区別が必要。
校門前を変え、徒歩で通える道につなぐ
SRTSの対象は、学校の敷地内だけではない。
NTAの事業概要では、主な目的を次の3つに置いている。
- 校門前の改善:混雑を和らげ、学校への出入りを安全にする。
- 通学経路の改善:歩行者と自転車が通りやすい設備を整える。
- 駐輪場所の拡充:自転車で登校した後に置ける場所を増やす。
学校の入口が整っていても、途中の交差点を渡りにくければ、徒歩通学は選びづらい。自転車で到着できても、置き場所が足りなければ使い続けにくい。事業は、こうした通学の一連の動きを扱う設計になっている。
運輸省がNTAを通じて資金を出し、環境団体An Taisceのチームが調整を担う。学校ごとの道路条件に合わせ、自治体や学校、地域住民と対策を具体化する。
ここがポイント: 徒歩・自転車での通学を増やすには、校門前の安全、途中の経路、到着後の駐輪場所をつなげて考える必要がある。
整備済み校では、自動車通学が約10%減少
道路を変えると、通学手段も変わるのか。事業側は、整備済み校の調査から変化を報告している。
NTAが7月に公表した2025年年次報告の紹介によると、対象校の通学調査では次の増減があった。
- 自動車の利用:約10%減少。
- 徒歩:約8%増加。
- 自転車:約49%増加。
自転車の「49%増」は、通学者全体の49%が自転車になったという意味ではない。 利用の増加率として示された数字であり、構成比やパーセントポイントの変化と混同できない。
また、これは整備が完了した学校での調査だ。アイルランド全体の児童・生徒にそのまま当てはめたり、事故が同じ割合で減ったと読んだりすることはできない。それでも、道路整備後に家庭の通学行動が変わったことを示す材料にはなる。
2025年には60件の整備事業が完了し、同年末までの累計は156件になった。同年に自転車用510台分、キックスクーター用522台分の駐輪場所も整備された。横断場所などの安全対策に加え、日常的に使える設備を増やしている。
609校への拡大で問われる、工事を届ける速さ
次の焦点は、参加校数の増加を道路の改善につなげられるかだ。
10月の発表では、完成したスクールゾーンは189校。ほかに工事中、設計中、住民への意見聴取中など、異なる段階の案件がある。新規参加校の家庭が、発表直後から整備の恩恵を受けるわけではない。
今後は、次の2つの進み方が考えられる。
- 設計と合意形成が進む場合:各校の道路条件に合う対策がまとまり、工事へ移行する。
- 調整に時間がかかる場合:参加が決まっても、通学環境の改善まで待つ期間が長くなる。
これは事業の進行段階を踏まえた見通しであり、個別校の遅延が確定しているという意味ではない。
日本の学校や自治体が取り組みを読む際にも、「対象校に入ったか」だけでは判断しにくい。通学路のどこを直すのか、いつ使えるようになるのか、完成後に通学手段がどう変わったかを分けて見る必要がある。
今後の注目点は3つ
拡大の成果は、参加校の数よりも毎日の道で確かめたい。
- 新規83校の整備内容と工程:どの危険箇所を、いつ改善するのか。
- 整備後の利用変化:徒歩や自転車の増加が、その後も続くか。
- 安全面の検証:通学手段の変化に加え、車の速度や事故などをどう評価するか。
次に見るべき数字は、参加校数の更新だけではない。工事を終えた学校が増え、子どもが実際に使える経路がどこまでつながったかだ。
