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豪州で10月1日から「カード払いの上乗せ手数料」禁止──値札が支払額になる一方、残る「週末料金」と値上げ圧力|2026年9月30日版

オーストラリアのカフェでカードをタッチして支払う客の様子

豪州で10月1日から「カード払いの上乗せ手数料」禁止──値札が支払額になる一方、残る「週末料金」と値上げ圧力

オーストラリアでは、カフェでコーヒー1杯をカードで払うと、レシートに「card surcharge」として1〜2%前後が上乗せされる光景が珍しくありませんでした。この上乗せが、2026年10月1日から原則として禁止されます。

決めたのは中央銀行にあたるオーストラリア準備銀行(RBA)です。Visa、Mastercard、eftpos(豪州の国内デビット網)でのカード払いに、店が「カードだから」という理由で手数料を足すことができなくなります。

消費者にとってはわかりやすい変化です。ただ、手数料そのものが消えるわけではありません。店が負担していた決済コストをどこで回収するのか。そこが次の焦点になっています。

この記事の要点

  • 10月1日から、Visa・Mastercard・eftposのカード払いへの上乗せ手数料が禁止。American Express、JCB、UnionPayも同日から自主的に撤廃する
  • RBAによると、消費者が払っていた上乗せ手数料は年約16億豪ドル。上乗せをしている店は全体の16%で、2022年から倍増していた
  • 週末・祝日料金、予約手数料、サービス料は禁止の対象外。現金払いの割引も引き続き認められる
  • 店側の手数料も下がり、RBAは年約9億1,000万豪ドルの削減を見込む。ただ、小規模店には値上げで対応するという声も出ている
目次

何が禁止され、何が残るのか

禁止されるのは「カードで払うこと」を理由にした上乗せだけです。名目の違う料金はそのまま残るため、レシートの見方が変わります。

禁止の対象

RBAのFAQと豪州の主要報道を整理すると、対象は次のとおりです。

  • 禁止の対象:eftpos、Visa、Mastercardのクレジット・デビット・プリペイドカード。店頭払いもネット払いも含む
  • 自主的に撤廃するブランド:American Express、JCB、UnionPayは10月1日から。PayPalは10月5日から(SBS報道)
  • 海外発行のカード:上記ネットワークのカードであれば、海外発行でも上乗せ禁止の対象

旅行者にも関係する話です。日本発行のVisa・MastercardやJCBで払う場合も、10月1日以降は「カード手数料」として上乗せされなくなります。

禁止の対象外

一方で、次の料金はこれまでどおり認められます。

  • 週末・祝日料金(飲食店の「Sunday surcharge」など)
  • 予約手数料、サービス料、配送料
  • 州・準州が規制するタクシーの上乗せ料金
  • 現金や口座振込(PayID)などへの割引
  • カード払いの最低利用額の設定

ここがポイント: 消えるのは「カード払いだから」という名目の上乗せだけです。週末料金やサービス料は残り、店は決済コストを本体価格に含めることもできます。

RBAは「カードの上乗せがなくなれば、値札の価格が消費者の支払う価格になる」と説明しています。この言葉どおりになるかは、店が決済コストをどこに移すかで決まります。

なぜRBAは「禁止」まで踏み込んだのか

豪州ではもともと、上乗せ手数料そのものは合法でした。条件は「店が実際に負担した決済コストを超えないこと」です。問題は、このルールが実際には機能していなかったことでした。

数字で見る上乗せ手数料

RBAが2026年3月に公表した結論ペーパーによると、状況は次のとおりです。

  • 指定ネットワーク上で消費者が払った上乗せ手数料は年約18億豪ドル。そのうち約16億豪ドルが今回の禁止で消える
  • 上乗せを行う店は全体の約16%で、2022年から倍増していた
  • 小規模店は、大手より高い手数料を払っていることが多く、規制上限に近い水準になりやすい

RBAの判断は、上乗せが「もはや意図どおりに機能していない」というものです。消費者にも店にも仕組みがわかりにくく、どこまでが正当なコストなのかを外から確かめる手段もありませんでした。

手数料の上限も同時に引き下げ

禁止だけでは、小規模店に負担が偏ります。そこでRBAは、カード会社間で受け渡すインターチェンジ手数料の上限も同じ日に引き下げます。これが店の支払う決済手数料の大部分を占めています。

対象(豪州発行のカード)これまで10月1日から
個人向けクレジットカード上限0.8%上限0.3%
デビット・プリペイド0.2%または10セント0.16%または8セント
法人向けクレジットカード0.8%0.8%(据え置き)
海外発行カード上限なし2027年4月1日から上限1.0%

RBAは、制度が全面的に動き出した段階で、店側の負担が年約9億1,000万豪ドル減ると試算しています。大手の決済事業者や国際ブランドに手数料の公表を義務づけ、店が決済サービスを比べやすくする措置も段階的に入ります。

小規模店の現場では何が起きているか

制度の設計そのものより、豪州の報道が大きく取り上げているのは小さな店の反応です。

ABCニュースが取材した南オーストラリア州マウントガンビアのパン屋では、店主のディラン・マックイーン氏が前年度に5,785豪ドルのカード手数料を払っていました。この店は上乗せをしたことがなく、「現金歓迎」の貼り紙で対応してきたといいます。現金払いは全取引の16%ほどです。マックイーン氏は「人は便利さにお金を払う」と話し、貼り紙の効果は限られるとみています。

同じ州で園芸店を営むカラム・ヘイガース氏は、決済手数料が年に「数万豪ドル」かかると語りました。20豪ドル未満の買い物には2.9%を上乗せしていたものの、徹底はできていなかったそうです。

同じ報道では、10月1日以降に価格を上げるつもりだという店が多いことも伝えられています。

専門家が見る「本当の勝負どころ」

RMIT大学のアンジェル・ジョン教授(金融)は、小規模店にとって最大の問題は「インターチェンジ手数料の引き下げ分を実際に受け取れるかどうか」だと指摘しています。上限が下がっても、店と契約する決済事業者が料金を据え置けば、店の負担は変わりません。同教授は「今すぐ決済事業者に電話して、もっと良い条件にできないか聞くべきだ」と助言しています。

ABCによると、銀行側は期限を前に、店向けの手数料引き下げを急いでいます。

スウィンバーン大学のスティーブ・ワージントン教授は、現金払いへの割引を始める店が出てくるとみています。生活費の高騰が続くなかで「10%の割引は魅力的な水準かもしれない」という見立てです。

この先どうなるか──三つのシナリオ

ここから先は見通しです。10月1日以降の値札の動きについて、豪州の報道や専門家の見方から、大きく三つのシナリオが考えられます。

シナリオ1:手数料引き下げが店に届き、価格はほぼ横ばい

決済事業者の競争が進み、インターチェンジ手数料の引き下げ分が店の手数料に反映されるケースです。店は上乗せをやめても大きな負担増にはならず、消費者は支払額が下がったと感じます。RBAが想定しているのはこの姿です。

シナリオ2:本体価格や「別名目の料金」に置き換わる

手数料の引き下げが小規模店まで届かなければ、店はメニュー価格の値上げや、週末料金・サービス料の拡大で回収に動きます。禁止されたのは名目であって、コストではありません。上乗せが見えにくくなるだけに終わる可能性もあります。

シナリオ3:現金への回帰とポイント特典の縮小

現金割引が広がれば、カード離れが一部で起こります。エコノミストのジョン・ホーキンス氏は、豪州人の約半数は典型的な1週間に現金を使わないとしつつ、現金の利用はこの1年でわずかに増えたと指摘しています。

もう一つの波及先はカード利用者です。インターチェンジ手数料はカード発行会社の収入源でもあり、報道では、銀行がクレジットカードのポイント特典を削ったり年会費を上げたりする動きも指摘されています。上乗せがなくなる代わりに、カードを持つコストが上がる形です。

実際には三つが店ごと、業種ごとに混在する展開になりそうです。飲食店のように週末料金の慣行がある業種ほど、シナリオ2に寄りやすい構造です。

取り締まりは誰がするのか

上乗せ禁止は法律ではなく、各カードネットワークが導入する「上乗せ禁止」ルールと、店との加盟店契約で担保されます。

  • 禁止ルールの執行:カードネットワークと決済事業者が担当。豪州の競争・消費者委員会(ACCC)ではない
  • ACCCと州当局の役割:価格や値上げ理由について、店が誤解を招く表示をしていないかを消費者法で監視

SBSは、上乗せを請求された場合の手順として、料金の種類を確認し、店に取り消しや返金を求め、カードネットワークや決済事業者に報告し、それでも解決しなければACCCや州の消費者保護機関に相談する流れを紹介しています。

「値上げは今回の制度変更のせいだ」という説明が事実と合わなければ、消費者法の問題になります。ACCCが監視できるのはこの部分です。

日本から見るとどう映るか

日本では、多くのカード会社が加盟店規約でカード払いへの上乗せを禁じています。豪州は、店に上乗せを認めてきた仕組みを、日本に近い「値札が支払額」という形へ切り替えることになります。

ただし豪州は、上乗せを禁じるだけでなく、店が払う手数料の上限を国が大きく引き下げ、手数料の公表まで義務づけました。店の手数料率が交渉と慣行に委ねられている日本とは、この点が違います。キャッシュレス化で店側の決済コストが課題になる国にとって、「上乗せ禁止」と「手数料上限」をセットで動かした例として注目されます。

豪州を旅行する人にとっての実務的な変化は単純です。10月1日以降、Visa・Mastercard・JCBで払って「card surcharge」が付いていたら、それは禁止された料金の可能性があります。一方、日曜や祝日の飲食店で付く料金は別物で、引き続き合法です。

今後の注目ポイント

  • 手数料の引き下げは小規模店まで届くか:銀行・決済事業者が店向けの料金をどこまで下げるか。届かなければ、値上げの口実が残る
  • 週末料金やサービス料の広がり:上乗せが別の名目に移っていないか。ACCCが誤解を招く表示にどう動くか
  • 2027年4月の第2段階:海外発行カードの手数料上限(1.0%)と透明性ルールの導入で、観光地の店の負担がどう変わるか

参照リンク

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