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習近平の「右腕」が党籍剥奪、その2日後に訪米 中央軍事委が2人だけになった中国軍の異変|2026年9月22日版

空席が目立つ中国の大会議室を象徴的に描いたイメージ。

習近平の「右腕」が党籍剥奪、その2日後に訪米 中央軍事委が2人だけになった中国軍の異変|2026年9月22日版

中国が9月21日、軍制服組トップだった張又侠・中央軍事委員会副主席と、劉振立・軍事委員兼統合参謀部参謀長の2人を、党籍剥奪と軍籍剥奪の処分にしたと発表した。国営新華社は「政治規律に著しく違反し、徒党を組み、党に対して不忠実だった」と伝えている。

タイミングが尋常ではない。中国外交部は同じ21日、習近平国家主席が9月23日から25日まで米国を国賓訪問すると発表した。軍の最高幹部2人を切り捨てた発表と、11年ぶりの訪米日程の公表が、同じ日に並んだ。

そして今回の処分で、定員7人のはずの中央軍事委員会は、習主席本人を含めて実働2人という異常な状態になった。この記事では、何が起きたのか、なぜ日本の読者にとって重要なのか、そして今週の訪米で何を見るべきかを整理する。

ここがポイント: 習氏の最側近だった軍No.2が「不忠実」の理由で消えた。中国軍の意思決定を担う中央軍事委員会は、事実上ほぼ空席になっている。

目次

まず要点

  • 9月21日、張又侠氏と劉振立氏の党籍・軍籍剥奪を新華社が発表。新華社は事案に「極めて多額の金銭」が絡むとも伝えた
  • 2人の調査は2026年1月に公表され、8月末に軍の職を解かれたうえでの正式処分
  • アルジャジーラによれば、中央軍事委員会の実働メンバーは7人から2人まで減った。残るのは習主席と、2025年10月に副主席となった張昇民氏
  • 習主席は9月23〜25日に米国を国賓訪問。トランプ大統領の招請で、2015年以来の国賓としての訪米となる

何が起きたのか

張又侠氏は2022年の党大会で軍制服組の最上位に立ち、政治局員でもあった。習主席の父親世代からの縁を持つ、いわゆる「太子党」人脈の軍人で、長年「習氏の最も近い軍人」と見なされてきた。劉振立氏は陸軍司令官を経て、統合参謀部という作戦指揮の中枢を預かっていた。

つまり、粛清されたのは疑わしい外様ではなく、体制の中核そのものだ。

処分までの流れ

2026年1月に国防部が2人の調査開始を公表した時点で、外部の観測筋は驚いた。予兆がほとんどなかったからだ。シドニー大学中国研究センターのデイビッド・グッドマン氏は当時、今回の解任は習氏の権力を強めも弱めもしない、現体制に対抗しうる人物は存在しない、と書いている。ウォール・ストリート・ジャーナルは張氏への嫌疑に「米国への核関連機密の提供」が含まれると報じたが、公式発表は具体的な中身に踏み込んでいない。

空洞化した中央軍事委員会

今回で終わりではない点が重要だ。2023年以降、軍事委クラスの幹部が次々に消えている。

人物当時の役職退場時期
魏鳳和前国防相2024年
李尚福国防相2024年
苗華政治工作部主任2025年
何衛東軍事委副主席2025年
張又侠軍事委副主席2026年
劉振立統合参謀部参謀長2026年

欠員の多くは補充されていない。観察者研究財団(ORF)のアトゥル・クマール氏は1月の論考で、この構図を「紙の虎」と呼んだ。装備の近代化は進む一方で、粛清が続けば現場指揮官はリスクを避け、政治的に安全な部下だけを引き上げるようになり、軍の実力はじわじわ削られる――という指摘だ。

なぜ日本の読者に関係するのか

中央軍事委員会は、東シナ海・台湾海峡での部隊運用を含め、人民解放軍の作戦を統括する組織だ。その合議体が機能停止に近い状態にあることは、日本の安全保障環境に二つの相反する意味を持つ。

  • 短期的には、大規模な軍事行動を起こしにくい要因になりうる。作戦中枢の参謀長まで排除された組織が、大きな賭けに出るのは容易ではない
  • 中期的には、予測しにくさが増す。指揮系統が誰に集約されているのかが外から見えにくくなり、偶発的な事案が起きたときの意思疎通の相手が定まらない

ただし、粛清が台湾侵攻の可能性を下げる証拠だと断定するのは早い。グッドマン氏も、その推論は「かなり無理がある」と釘を刺している。現時点で確実に言えるのは、中国軍の人事が3年近く不安定なまま続いている、という事実の方だ。

現場レベルでも影響は出る。海上保安庁や自衛隊が日々向き合う中国海警局・海軍の部隊は、北京の意思決定が揺れている間も現場にい続ける。上層部の空白は、現場の裁量が実際にどこまで広がっているかという問いに直結する。

今週の訪米で何を見るか

習主席の訪米は9月23日から25日。南華早報によれば、トランプ大統領が空港で出迎えるという異例の演出も検討されている。中国外交部の説明は「二国間関係と世界の平和・発展に関わる重大な問題」を協議する、という抽象度の高いものだ。実際の焦点は関税、輸出規制を含む技術、そして安全保障の3点に集まる。

軍幹部の処分をこの日程にぶつけた意図は、公式には説明されていない。考えられる読み方は複数ある。

シナリオ1:国内向けの「決着」を先に済ませた

訪米前に不安定要因を片付け、統一された指導部として米国と向き合う形をつくる。党内統治をめぐる重要会議を控える時期でもあり、国内の議題を先に閉じたという解釈。

シナリオ2:対米交渉での立場を固める合図

軍部に異論がある状態では、貿易でも技術でも大きな妥協はしにくい。軍の指揮権が習氏一人に集約されていることを内外に示す動き、という見方。

シナリオ3:単に手続きの都合

1月の調査公表、8月末の解任という手順を踏んだ結果、公表が9月下旬になっただけという可能性も残る。中国の公式発表は、この種の処分を党の会議日程に合わせて出す例が多い。

どれが正しいかは、現時点で外部から確定できない。

注目すべき3点

  1. 後任人事が出るか。空席のままなのか、誰かが副主席に上がるのか。ここが埋まらない限り、軍の指揮系統は習主席個人への一本化が続く
  2. 訪米の成果物の中身。関税・輸出規制で具体的な数字や期限が示されるのか、共同文書なしの「対話継続」で終わるのか
  3. 東シナ海・台湾周辺での活動量。北京の人事が揺れる間に、現場の艦艇・航空機の動きが減るのか、逆に変わらないのか。ここは日本側が日々観測できる、数少ない実測値になる

軍の最高幹部を切った2日後に、相手国の空港に降り立つ。この落差をどう説明するかを、中国側は今週まだ一度も語っていない。

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