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英国で「子どもの保護」を地域共同調達へ、5つの新組織が始動|2026年7月12日版

英国で「子どもの保護」を地域共同調達へ、5つの新組織が始動|2026年7月12日版

英国で「子どもの保護」を地域共同調達へ、5つの新組織が始動|2026年7月12日版

英国イングランドで、家庭を離れて暮らす子どもの居場所を自治体が地域単位で確保する仕組みが広がる。政府は7月8日、5つの「地域ケア協同組織(RCC)」を新設し、年内には4つの里親支援拠点も稼働させると発表した。

狙いは、自治体ごとに足りない児童養護施設や里親家庭を奪い合う構図を改め、子どもを遠方へ移さず、必要な支援につなげることだ。制度の成否は、地域で実際に受け入れ先を増やせるかにかかっている。

  • 複数の自治体、保健、少年司法が地域単位で連携する
  • 子どもの居場所を「個別の自治体の調達」から「地域の計画と確保」へ移す
  • 2026年末までに新たな里親支援拠点も4か所が動き出す予定
  • 予算をまとめるだけでなく、近隣で暮らし続けられる受け皿を増やせるかが焦点
目次

何が変わるのか

RCCは、地方自治体が主導し、保健サービスや少年司法などと組んで、社会的養護が必要な子どもの住まいと支援を計画・委託する地域組織だ。従来は自治体がそれぞれ施設や里親家庭を探し、空きがなければ地域外の高額な受け入れ先に頼る場面があった。

新しい方式では、複数の自治体が需要を予測し、どの種類の受け皿が何人分必要かを共同で考える。対象は里親委託だけではない。児童養護施設、専門的な支援付き住居、退所後の支援まで含め、子どもの状況に応じた選択肢を地域で組み立てる。

ここがポイント: 子どもの転居先を探す「緊急の調達」から、地域全体で必要な受け皿を先回りして整える仕組みへの転換を目指している。

背景にあるのは、費用と居場所の不足

英国教育省によると、イングランドの地方自治体は2024〜25年度に子どもの社会的養護へ約90億ポンドを支出した。それでも、子どもに見合う場所が十分に用意できていないことが制度導入の背景にある。

特に難しいのは、複合的な支援が必要な子どもの受け入れだ。緊急性が高いほど自治体の選択肢は狭まり、本人にとってなじみのない地域へ移ることにもなり得る。学校、兄弟姉妹、友人、担当者との関係が途切れれば、生活を立て直す支援そのものが難しくなる。

政府は今回、RCCの拡大とともに以下を進めるとしている。

  • 里親を増やし、住環境の改修などを後押しする「Room Makers」プログラムの拡大
  • 里親制度の基準を整理するための協議
  • 社会的養護に関わる子どもと家族向けに、専門職がチームで支えるメンタルヘルスの試行
  • 自由を大きく制限する施設に置かれる、またはそのおそれがある子ども向けの個別支援プログラム

政府発表には、民間事業者による過度な利益追求を抑えるという表現もある。ただし、RCCだけで価格問題が解決するわけではない。地域に足りないのが専門施設や経験のある里親家庭なら、共同調達は不足を見えやすくする一方、供給を生むための人材・不動産・運営資金も必要になる。

「近くで暮らす」を実現するための3つの課題

制度は共同で発注する仕組みだが、問われるのはその先だ。

1. 需要予測を現場の配置に結び付けられるか

RCCには、地域のデータを分析し、将来必要になる受け皿を予測する役割がある。需要の見通しがあっても、施設の開設や里親の育成には時間がかかる。予測を毎年の計画や資金配分に反映できなければ、緊急時に遠方を探す状況は残る。

2. 連携の窓口を増やすだけで終わらせないか

児童福祉、医療、教育、警察、少年司法は、それぞれ情報の持ち方も判断の時間軸も異なる。RCCが機能するには、子どもの事情を共有しながら、誰が支援を決め、費用をどう分担するかを明確にしなければならない。

3. 子どもの意思を配置の判断に入れられるか

「近く」の意味は単なる距離ではない。通い続けたい学校があるのか、会いたい家族がいるのか、特定の支援者との関係が重要なのかで変わる。制度が効率化だけを追えば、子ども本人の生活上の優先順位が後回しになる危険もある。

法律と実施計画で、全国展開の土台はできた

RCCの方向性は、2026年4月に成立したChildren’s Wellbeing and Schools Act(子どもの福祉・学校法)にも位置付けられている。政府はまず先行地域で運用を試し、今回の5組織を含む段階的な拡大を進める方針だ。

この方式の強みは、小さな自治体だけでは抱えにくい専門的な受け入れ先を、地域全体の需要として扱える点にある。反対に、運営責任が広域化しても、子どもと家族が相談する窓口まで遠くなれば本末転倒になる。

日本でも、児童相談所の管轄を越える転居や、里親・施設の受け皿不足は無関係な話ではない。比較する際に重要なのは組織名ではなく、自治体が単独で確保しにくい資源をどう共有し、子どもの学校・家族・医療とのつながりをどう守るかという実務だ。

今後の注目点

  • 新設されるRCCが、地域外への配置をどの程度減らせるか
  • 里親家庭と専門的な施設の受け皿が、需要予測に見合う速さで増えるか
  • 共同化による費用抑制と、子ども一人ひとりに合う場所の選択を両立できるか

年内に動き出す里親支援拠点と、新たなRCCの運営データは、この改革が会議体の再編にとどまるのか、それとも子どもの暮らす場所を変えられるのかを測る最初の材料になる。

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