呉市のパートナーシップ宣誓制度、市営住宅と罹災証明に届く生活支援|2026年7月8日版
広島県呉市で2026年4月1日から始まったパートナーシップ宣誓制度は、婚姻制度そのものを変えるものではありません。けれども、市営住宅の入居申請、り災証明書の代理申請、軽自動車税の減免、犯罪被害者等見舞金といった生活の場面で、関係を公的に示せる手段になります。
大きな全国ニュースにはなりにくい動きですが、住まい、災害後の手続き、福祉・税の窓口で「家族として扱われるか」が問われる人には具体的な意味があります。
- 呉市は2026年4月1日から制度を開始
- 宣誓できるのは、一方が呉市在住または転入予定などの要件を満たす2人
- 受領証で使える市のサービスに、市営住宅、り災証明書の代理申請などが含まれる
- 広島県も、県内の導入市町で証明を受けたカップル向けに県営住宅や自動車税減免などの扱いを示している
呉市で何が始まったのか
呉市の制度は、互いをパートナーとして協力し合う2人の関係を、市が公的に認める仕組みです。市は「法律上の婚姻とは異なる」と明記しており、相続や税控除など、結婚と同じ法的効果を生む制度ではありません。
それでも、窓口で提示できる受領証があることは小さくありません。
呉市が挙げている利用可能サービスは次の通りです。
- 市営住宅の入居申請
- り災証明書の代理申請
- 身体障害者などに対する軽自動車税の減免
- 犯罪被害者等見舞金
特に目を引くのは、災害後の手続きです。り災証明書は、住まいが被害を受けたときの支援や保険、各種手続きにつながる入口になります。そこで代理申請の対象になれるかどうかは、被災直後に役所へ行けない人や、生活を共にする相手が動く場面で差が出ます。
生活への影響は「家族扱い」の入口にある
制度の価値は、理念よりも日常の手続きに表れます。
たとえば、市営住宅に申し込むとき、同居する相手との関係をどう示すのか。障害のある人の移動に使う車について、パートナーが運転する場合に減免の対象になるのか。犯罪被害や災害のあと、誰が窓口で手続きを担えるのか。
こうした場面では、関係を説明する負担が当事者に偏りがちです。受領証は、その説明を毎回一から求められる状態を少し減らします。
ここがポイント: 呉市の制度は結婚と同じ権利を与えるものではない一方、住宅、災害、福祉・税の窓口で「一緒に暮らす相手」として扱われる余地を広げる制度です。
手続きは予約制、個室対応も明記
呉市は宣誓手続きについて、事前に電話またはメールで宣誓希望日を調整し、必要書類をそろえて2人で窓口に来る流れを示しています。宣誓書は、プライバシーに配慮して個室で記入するとしています。
必要書類には、住民票または住民票記載事項証明書、配偶者がいないことを証明できる書類、本人確認書類などが含まれます。制度を使うには、理念への賛同だけでなく、自治体窓口での実務に乗ることが必要です。
広島県内では県サービスにもつながる
呉市単独の話に見えて、実際には広島県の行政サービスとも接続しています。
広島県は、県内でパートナーシップ宣誓制度を導入している市町で証明を受けたカップルについて、県の行政サービス等の利用が可能だと案内しています。2026年4月1日時点の県ページでは、広島市、呉市、三原市、府中市、三次市、庄原市、大竹市、東広島市、廿日市市、安芸高田市、府中町、海田町、安芸太田町、北広島町、世羅町が挙げられています。
県が示している主なサービスは、県営住宅への入居と、身体障害者等に対する自動車税の減免です。
これは、市町村が出す受領証が、市の中だけで完結せず、県の住宅や税の窓口にも関わることを意味します。生活圏が市境で切れない人にとっては、この接続が重要です。
全国では広がったが、残る差もある
公益社団法人Marriage For All Japanのデータベースでは、パートナーシップ制度の人口カバー率は93.71%、導入自治体数は563自治体とされています。制度の有無だけで見れば、すでに「一部の先進自治体だけの取り組み」ではなくなりました。
一方で、制度の中身は自治体ごとに違います。
- ファミリーシップまで含むか
- 子どもや近親者をどう扱うか
- 住宅、医療、税、災害関連手続きのどこまで対象にするか
- 転居時に受領証を継続利用しやすいか
呉市の場合、現時点で市が明記しているのは市営住宅、り災証明書、軽自動車税減免、犯罪被害者等見舞金などです。市は「この他にも利用可能となるサービスの追加を検討」としており、今後どこまで広がるかが次の焦点になります。
次に見るべきポイント
この制度を見るとき、賛否の大きな言葉だけで判断すると、生活上の変化を見落とします。確認すべきなのは、実際に窓口で何ができるようになるかです。
今後の注目点は次の3つです。
- 呉市が利用可能サービスをどこまで追加するか
- 県内市町との相互利用や転居時の手続きがどれだけ簡単になるか
- 医療、学校、子育て、防災など、日常に近い分野へ運用が広がるか
制度は始まっただけでは十分ではありません。受領証を持つ人が、住宅を探すとき、災害後に書類を出すとき、税や福祉の窓口に立つとき、どこまで説明負担を減らせるのか。呉市の次の更新で見るべき点はそこです。
