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「福祉避難所」は先着順ではない――直接行ける人、一般避難所を経由する人

福祉施設で避難方法を確認する車いす利用者と家族、自治体職員。

「福祉避難所」は先着順ではない――直接行ける人、一般避難所を経由する人

福祉避難所を利用できるのは、一般避難所での生活が難しく、特別な配慮を必要とする人です。ただし、高齢者や障害のある人なら誰でも自由に入れるとは限りません。

誰を受け入れるか、直接避難できるかは、市町村が施設ごとに定めます。 事前に避難先を調整している人は直接向かえる場合がある一方、一般避難所で状態を確認してから移る地域もあります。

この記事の要点は次の4つです。

  • 対象は高齢者、障害者、妊産婦、乳幼児、医療的ケアが必要な人、傷病者など
  • 年齢や手帳の有無だけでなく、避難生活で必要となる支援から判断される
  • 直接避難には、個別避難計画などによる事前調整が必要な場合が多い
  • 利用方法は自治体ごとに異なるため、平時の確認が欠かせない
目次

福祉避難所は「支援を受けながら過ごす避難所」

福祉避難所の核心は、単に設備がバリアフリーであることではなく、一般避難所では難しい生活を支える体制にあります。

内閣府のガイドラインは、受入対象として次のような人を想定しています。

  • 車いす利用者、視覚・聴覚障害者などの身体障害者
  • 知的障害者、精神障害者
  • 一人暮らしの高齢者や高齢者だけの世帯
  • 人工呼吸器や酸素供給装置を使う在宅の難病患者
  • 日常的に医療的ケアが必要な人や医療的ケア児
  • 妊産婦、乳幼児、病弱者、傷病者

付き添いや介助を担う家族も、受入対象に含めることができます。

ただし、対象者の線引きは診断名や年齢だけでは決まりません。例えば、同じ高齢者でも、体育館で支障なく過ごせる人と、認知症や持病のため静かな空間、服薬管理、排せつ介助が必要な人では状況が異なります。

一方、常時の医療処置が必要な人や、避難所での生活そのものが難しい人には、医療機関への搬送や福祉施設への緊急入所が適切な場合があります。福祉避難所は病院や入所施設の代わりではありません。

一般避難所との違いは設備より「対象と支援体制」

一般避難所は幅広い被災者を受け入れる場所です。福祉避難所は受入対象を絞り、その人たちに必要な環境を整えます。

一般避難所

学校の体育館や公民館などが中心で、地域住民を広く受け入れます。福祉避難所ほど専門的な設備や人員が整っていなくても、要配慮者用スペース、段ボールベッド、簡易トイレなどを設けることが求められています。

福祉避難所

社会福祉施設、福祉センター、学校の特定棟などが使われます。避難者の状態に応じ、次のような支援を用意します。

  • 段差を減らした移動経路や手すり、仮設スロープ
  • ベッド、車いす、歩行器、ポータブルトイレ
  • おむつ、ストーマ用装具、介護・衛生用品
  • 食事やトイレ介助、生活上の相談
  • 手話、筆談、絵カードなどによる情報保障
  • 医療的ケアに必要な電源、物品、人材

専門職が常に全員そろっている施設とは限りません。市町村は施設管理者、福祉事業者、医療機関、災害派遣福祉チームなどと連携し、避難者の状態に応じて人員を確保します。

ここがポイント: 福祉避難所は「より快適な一般避難所」ではなく、一般避難所で生活を続けることが難しい人の健康悪化を防ぐための避難先です。

直接行けるとは限らない理由

福祉避難所には、直接避難型と一般避難所から移る二次避難型が混在しています。 ここが最も誤解されやすい点です。

2021年の制度改正後、市町村は指定福祉避難所について、受け入れる人をあらかじめ特定して公示できるようになりました。個別避難計画などで本人、家族、自治体、施設が調整していれば、普段利用している福祉施設へ直接避難する運用も可能です。

しかし、すべての福祉避難所が発災直後から開くわけではありません。建物の安全、職員の参集、既存利用者への対応、停電や断水、受入可能人数を確認してから開設する施設もあります。

そのため、実際の流れは主に次の2通りです。

  1. 個別避難計画などで決めた指定福祉避難所へ直接避難する
  2. まず一般避難所へ行き、保健師や自治体職員が状態を確認した後、福祉避難所へ移る

自治体ごとの差も明確です。福井市は、施設との事前協議と個別避難計画により直接避難できる仕組みを案内しています。一方、たつの市は福祉避難所を「二次的避難所」と位置づけ、発災当初からは利用できないと説明しています。

この違いから、「近所に福祉避難所があるから、災害時は直接行けばよい」とは判断できません。対象外の人が殺到すると、本来必要な人を受け入れられなくなるおそれもあります。ただし、命を守るための緊急措置として、一時的に受け入れる判断はあり得ます。

誰が決め、誰が運営するのか

利用方法を決める中心は市町村ですが、実際の運営は行政だけでは完結しません。

  • 市町村:施設の指定、対象者の公示、開設判断、避難者の調整、物資・移送手段の確保
  • 都道府県:市町村間の調整、専門人材や広域支援の確保
  • 福祉施設などの運営者:場所の提供、施設内の運営、必要な支援の把握
  • 医療・福祉関係者:健康確認、介助、相談、医療機関や緊急入所先との連携
  • 本人と家族:必要な配慮、移動方法、薬や医療機器の情報を平時から共有

2026年6月には山口市が、介護サービス事業者と連携し、市内22施設を福祉避難所として指定して運用を始めました。市が強調したのは施設数だけでなく、対象者の受け入れから運営までを事前に調整することでした。

同年3月には東京都も、自治体や社会福祉施設の取り組みをまとめた事例集を公表しています。施設名を一覧にするだけでは機能せず、人員、物資、連絡、訓練まで決めておく必要があるためです。

費用は誰が負担するのか

災害救助法が適用された場合、福祉避難所で行う応急救助に必要な費用は国庫負担の対象になり得ます。

対象として示されているのは、避難者おおむね10人につき1人の生活相談員等を置く費用、ポータブルトイレやベッドなどの器物、紙おむつやストーマ用装具などの消耗品です。都道府県が施設へ委託したスペースや食事の提供費も、要件を満たせば対象になり得ます。

ただし、避難中に通常の介護保険サービスや障害福祉サービスを利用した場合まで、すべて同じ費用処理になるわけではありません。避難所としての支援と、個別に契約する福祉サービスは制度上の扱いが異なるため、自治体や事業者への確認が必要です。

平時に確認するのは「場所」より利用条件

ハザードマップで福祉避難所の場所を見つけても、それだけでは準備は完了しません。家族で確認したいのは次の項目です。

  • 自分や家族は、その施設の公示された受入対象に入るか
  • 直接避難できるか、一般避難所を経由するか
  • 付き添う家族は何人まで受け入れられるか
  • 車いす、人工呼吸器、服薬などに必要な支援を受けられるか
  • 停電時の電源と、施設までの移動手段をどう確保するか
  • 個別避難計画を作成できるか
  • ペットや補助犬の扱いはどうなっているか

問い合わせ先は、市町村の防災担当または福祉担当です。ケアマネジャー、相談支援専門員、訪問看護師を利用している人は、必要な配慮を整理したうえで相談すると具体化しやすくなります。

自治体サイトで「直接避難」「二次避難」という異なる案内が見つかるのは、制度の誤りではなく地域ごとの運用差です。次に大雨や地震が起きてから検索するのでは遅い場合があります。最優先の確認事項は、自分の地域で直接避難の事前調整が必要かどうかです。

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