広域化しても水道代は安くならない? 香川の「約3割値上げ案」が示す本当の効果
水道事業を複数の自治体でまとめても、料金が自動的に下がるわけではありません。共同運営で削減できる費用はあるものの、人口減少や老朽管の更新費、物価・人件費の上昇がそれを上回れば、値上げは必要になります。
その現実を映しているのが香川県です。県内8市8町の水道事業を担う香川県広域水道企業団では、2028年4月の料金統一に向け、平均で27.0〜33.7%引き上げる試算が審議されています。これは最終決定額ではありませんが、「広域化=値下げ」という単純な図式が成り立たないことを示しています。
- 広域化の主な効果は、目先の値下げより将来の値上がり幅を抑えること
- 同じ企業団になっても、料金統一まで地域別料金が続く場合がある
- 統一料金では、これまで安かった地域ほど負担増を感じやすい
- 確認すべきなのは請求額だけでなく、更新工事と財政の持続性
香川では2028年度の料金統一と値上げを同時に検討
香川の統一料金はまだ確定していませんが、現段階の試算は値下げではなく大幅な引き上げを前提としています。
香川県広域水道企業団は2018年4月に発足し、直島町を除く県内8市8町の水道事業を統合しました。ただし、現在も料金は旧事業体ごとに異なり、統一は2028年度の予定です。
企業団の第8回水道事業等審議会資料では、財政目標を緩めて改定率を抑える案について、料金を一括改定した場合の平均改定率を次のように試算しています。
- 料金算定期間3年:27.0%
- 料金算定期間4年:30.5%
- 料金算定期間5年:33.7%
より厚い内部留保を確保する案では、一括改定の平均改定率は31.9〜37.0%です。審議会では料金表や算定期間、改定後の見直し時期を含めて検討が続いており、数字は確定料金ではありません。
それでも、共同運営を始めて約10年後の料金統一時に値上げ案が出ている事実は重要です。事務や施設をまとめて節約しても、それだけでは更新費を賄えないからです。
なぜ共同運営でも料金が上がるのか
最大の理由は、利用者が減る一方で、水道管や浄水場を維持する固定費はすぐには減らないことです。
水道事業は料金収入を基本に運営されます。人口減少で使用水量が減れば収入は落ちますが、家庭まで水を届ける管路やポンプ、浄水施設は引き続き必要です。電力、薬品、工事、人件費の上昇も重なります。
香川県の水道ビジョン中間評価では、広域化後の取り組みとして、浄水場の統廃合、電算システムの統合、官民連携、職員配置の適正化を挙げています。一方で、老朽施設の大規模更新を進めながら料金格差を是正することは困難だとも明記しています。
つまり、広域化には二つの動きが同時にあります。
削減できる費用
- 複数自治体で重複するシステムや業務の集約
- 浄水場や配水施設の統廃合
- 資材調達や工事発注の共同化
- 技術職員や応援体制の広域運用
それでも増える費用
- 老朽管や浄水施設の更新
- 地震に備える耐震化
- 電力、薬品、建設資材、人件費の上昇
- 人口減少による一人当たり負担の増加
ここがポイント: 広域化は費用を消す制度ではありません。単独経営より施設や人員を効率よく使い、避けられない負担増を小さくするための手段です。
「同じ料金にすること」と「安くすること」は別
料金統一は地域間の差をなくしますが、全員の請求額を下げる仕組みではありません。
香川県の公表資料によると、2023年4月時点の家庭用料金は、月20立方メートルで最高5,170円、最低1,100円でした。簡易水道などを含む比較で条件差はありますが、同じ県内でも大きな開きがあったことが分かります。
料金を一本化すれば、これまで高かった地域は相対的に恩恵を受けやすくなります。反対に、施設が集約された都市部など、従来料金が低かった地域では値上げ幅が大きくなる可能性があります。
ここで問われるのは、「同じ企業団だから同じ料金が公平」と考えるか、「地形や施設条件、過去の投資が違う以上、地域別料金にも理由がある」と考えるかです。どちらを重視するかで、料金統一への評価は変わります。
地区別意見交換会でも、統一料金の水準や家計への影響、料金改定後の財政持続性を尋ねる声が出ています。ネット上の水道料金に関する投稿でも、請求額の上昇を心配する反応や、節水しても人口減で収入が減れば値上げになることへの戸惑いが見られます。ただし、個々の投稿は地域全体の意見を代表するものではありません。
奈良では「安い方を適用」する経過措置
負担が急に増える地域には、統一料金を段階的に適用する方法があります。
奈良県では2025年4月、県の用水供給事業と26市町村の水道事業を奈良県広域水道企業団に統合しました。企業団の統一料金は基本料金と使用量別の従量料金で構成されますが、統合前より高くなる利用者には5年間の経過措置があります。
この期間は、旧料金と企業団料金を比較し、統合前より負担が増えないよう調整されます。急激な値上げを避けられる一方、措置が終わるまで地域別の差が実質的に残る点には注意が必要です。
国土交通省の整理を見ると、料金統一の時期や方法は全国一律ではありません。
- 奈良県広域水道企業団:2025年4月に統一、値上がりを抑える経過措置あり
- 香川県広域水道企業団:2028年度に統一予定
- かずさ水道広域連合企業団:2029年度の統一を目標
- 広島県水道広域連合企業団:当面は事業ごとの料金を維持
広域化には、事業そのものを統合する方式のほか、経営だけを一体化する方式、施設や事務だけを共同化する方式があります。「広域化した」という言葉だけでは、料金まで一本化されたのか判断できません。
自分の地域で確認すべき4項目
生活者が見るべきなのは、値上げ率だけでなく、その料金で何を維持・更新できるかです。
自治体や水道企業団が広域化を検討している場合は、次の資料を確認すると家計への影響を把握しやすくなります。
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標準使用量での新旧比較
自宅のメーター口径と直近の使用水量を使い、基本料金と従量料金を合計します。平均改定率と自分の値上げ率は一致しません。 -
経過措置の対象と終了時期
一定期間だけ旧料金が適用される場合、その終了後にいくらになるかまで確認します。 -
施設の統廃合・更新計画
どの浄水場を残し、どの管路を更新するのか。料金引き上げが具体的な耐震化や老朽管更新につながるかが重要です。 -
意思決定と説明の場
企業団の審議会、議会、住民説明会、意見募集の日程を確認します。料金条例を誰が決め、自治体議会がどう関与するのかも見逃せません。
香川で次に注目すべきなのは、2028年4月に適用する料金表の確定と、地域・使用量別の負担額です。広域化の成否は「料金が下がったか」だけでは測れません。単独経営の場合より更新を進められたか、将来の追加値上げをどこまで抑えられたかを、決算と工事実績で追う必要があります。
