10月1日の使用分から、水道の請求書が変わる地域がある。宇都宮市は平均28.6%、神奈川県営水道は平均22%、神奈川県開成町は平均19.25%。いずれも同じ日を境にした改定だ。
特に宇都宮市は、料率を上げるだけでなく、基本料金に含まれていた月5立方メートルの「基本水量」を同時に廃止する。つまり、ほとんど水を使わない月でも一定量ぶんの権利が付いてくる仕組みが消える。値上げ率よりも、この構造変更のほうが家計の感じ方を左右する可能性が高い。
値上げのニュースとしては小さく扱われがちだが、契約している限り逃げ場がないタイプの支出である点で、電気やガスの単価改定とは性格が違う。
この記事の要点
- 10月1日使用分から、宇都宮市(平均28.6%)、神奈川県営水道(平均22%)、開成町(平均19.25%)が改定に入る
- 宇都宮市は月5立方メートルの基本水量を廃止し、「使った分だけ払う」体系へ移行する
- 宇都宮市の場合、改定が実際の支払いに現れるのは2027年1月または2月の支払い分から(検針周期のため)
- 背景は共通していて、施設の老朽化・耐震化・人口減による使用量減。宇都宮市は今後4年間で約102億円の収入不足を見込む
10月1日に何が変わるのか
改定日は同じでも、中身はかなり違う。値上げ幅と、料金の組み立て方の両方を並べておく。
宇都宮市:29年ぶりの本格改定
宇都宮市上下水道局は、令和8年(2026年)10月使用分から水道料金を平均28.6%引き上げる。水道料金の本格的な改定は1997年以来で、およそ29年ぶりにあたる。
改定案は市の水道料金等審議会が承認し、答申を経て条例改正案が市議会で議決された。下水道使用料についても、1年遅れの2027年10月使用分から9.9%引き上げる予定が示されている。水道と下水道で1年ずらしたのは、同時に上げた場合の負担感を和らげる設計といえる。
そして今回の目玉が基本水量の廃止だ。これまでは基本料金の中に月5立方メートルぶんが含まれていたため、それ以下しか使わない世帯は実質的に「使わなかったぶんも払っている」状態だった。市はこれを「使った分だけお支払いいただく」体系に改める。
審議会では、一人暮らしの高齢者や学生といった少量利用者と、企業などの大口利用者の双方に配慮した料金案が議論された。ただ、基本水量が消えることで、月に数立方メートルしか使わない単身世帯の請求書は、平均改定率の28.6%という数字とは違う動き方をすることになる。
神奈川県営水道:3年かけた値上げの最終段
神奈川県営水道は、単発の値上げではない。条例改正前の水準と比べて2024年10月から平均16%、2025年10月から平均19%、そして2026年10月から平均22%と、3段階で引き上げる計画の最後の一段が10月に来る。
給水対象は横浜市・川崎市を除く県内12市6町。藤沢市や相模原市などが含まれる。県は、耐震化や浸水対策による支出増と、水需要の減少による減収で財政収支が約450億円不足する見通しを改定の根拠としている。
段階的に上げてきたぶん、利用者にとっては「また上がるのか」という3回目になる。
開成町:3人世帯で2か月583円増
神奈川県足柄上郡の開成町は、10月から平均19.25%の引き上げに踏み切る。前回の改定は2017年だった。
町の試算では、3人世帯が2か月で40立方メートルを使う標準的なケースで、3,410円から3,993円へ583円の増額となる。町は2025年度に約2,000万円の赤字を見込み、その後も1,000万円を超える赤字が続く見通しを示していた。人口約1万8千人の小さな町でも、水道事業単体の収支は同じ壁に当たっている。
| 事業者 | 改定率 | 開始 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 宇都宮市 | 平均28.6% | 2026年10月使用分 | 基本水量(月5㎥)を廃止/下水道は2027年10月に9.9% |
| 神奈川県営水道 | 平均22% | 2026年10月 | 2024年16%→2025年19%→2026年22%の最終段/12市6町が対象 |
| 開成町 | 平均19.25% | 2026年10月 | 2017年以来の改定/3人世帯2か月40㎥で583円増 |
なぜ今、いっせいに上がるのか
「物価高だから」では説明が足りない。水道事業の値上げには、電気やガスとは別の構造的な理由がある。
日本の水道施設の多くは1970年代前後に集中して整備された。その管や浄水場が、いま一斉に更新時期を迎えている。さらに能登半島地震以降、耐震化の前倒しを迫られた事業者も多い。
一方で収入側は減り続ける。人口減少に加え、節水型の洗濯機やトイレが普及したことで、一世帯あたりの使用量そのものが落ちている。
問題は、水道事業のコスト構造だ。事業費用の8〜9割が固定費で、使用量が減っても支出はほとんど減らない。水を売って回収する仕組みなのに、売る量だけが縮んでいく。独立採算制を原則とする以上、最後は料金に跳ね返る。
宇都宮市が示した「令和8〜11年度で約102億円不足」という数字は、この構造をそのまま金額にしたものだ。神奈川県営水道の約450億円も同じ性質の穴である。
ここがポイント: 水道料金の値上げは景気連動の一時的なものではなく、更新需要と使用量減という長期トレンドの結果として出てきている。2046年までに全国の水道事業者の96%で値上げが必要になるとの推計もあり、一度上げて終わりにならない可能性が高い。
値上げと減免が同時に走るねじれ
ややこしいのは、同じ自治体が値上げを決めながら、物価高対策として基本料金の減免も実施している点だ。
宇都宮市は過去に水道基本料金を2か月全額免除している。開成町も2026年6月に水道料金の減免を告知した。静岡市に至っては、2026年6月使用分から値上げしたうえで、同年8月〜12月使用分のうち4か月分について基本料金の40%を減額する措置を取っている。
値上げは水道事業会計の話、減免は一般会計からの物価高対策という縦割りの結果だが、請求書を受け取る側からすると「上がったのか下がったのか分かりにくい」状態が生まれる。減免期間が終わったタイミングで、初めて改定後の水準を実感する世帯も出てくるだろう。
ネットでの受け止め
大きな全国ニュースにはなりにくいテーマだが、反応の出方には特徴がある。
- 宇都宮市では、地元の不動産・賃貸業者がSNSで「平均28.6%改定」「基本水量5㎥廃止」「使った分だけ払う料金体系へ」と要点を整理し、入居者や借り手に向けて周知している。生活コストの説明が必要な業種ほど反応が早い
- Web上では、自治体別の値上げ一覧や節水対策をまとめた家計向け解説記事が数多く出ている。電気・ガスの値上げに比べて水道は見落とされやすい、という指摘は複数の媒体に共通する
- 改定幅の大きさや、基本水量の廃止によって少量利用でも負担が生じる点には、戸惑いや納得しづらいという受け止めも出ている。一方で、老朽管の更新や耐震化の必要性そのものは理解を示す声もあり、反応は一枚岩ではない
これから確認すべきこと
改定日と請求日は一致しない。ここが最も誤解されやすい。
宇都宮市の場合、10月使用分からの改定でも、10月1日以前から継続して使っている利用者に新料金が反映されるのは2027年1月または2月の支払い分からだ。検針が2か月ごとのため、タイムラグが生じる。10月や11月の請求書を見て「上がっていないから大丈夫」と判断すると、年明けに差額をまとめて実感することになる。10月1日以降に新しく使用を始めた場合は、初回請求から新料金が適用される。
今後の watch ポイント
- 請求反映のタイミング:自分の地域の検針周期を確認する。隔月検針なら、改定から2〜4か月遅れて効いてくる
- 基本水量の扱い:宇都宮市以外でも、料率引き上げとセットで基本水量を見直す事業者が出るか。単身・高齢世帯への影響が料率だけでは読めなくなる
- 下水道の1年遅れ:宇都宮市は2027年10月に下水道使用料9.9%増を控える。水道だけ見て家計を組むと二段目で足をすくわれる
- 減免措置の出口:物価高対策の基本料金減免が終了する時期。値上げの実感はそこで一気に来る
- 自分の自治体の次の改定:今回の3事業者は先行例にすぎない。長期の更新需要を抱える事業者は多く、公表されている経営戦略や収支見通しを確認しておく価値がある
賃貸物件で水道料金が家賃に含まれている場合や、大家が一括で契約しているケースでは、値上げが別の形で転嫁されることもある。契約書の水道費の扱いを一度見ておくと、来年の請求で慌てずに済む。
参照リンク
- 宇都宮市|水道料金の値上げについてのお知らせ(令和8年10月使用分から)
- 下野新聞|宇都宮市水道料金等審議会、水道料金28.6%引き上げを承認
- 東京新聞|宇都宮市、水道料金28% 10月値上げへ 市審議会が答申
- とちぎテレビ|水道料金を2026年10月分から28.6%値上げ 宇都宮市の審議会が承認
- 日本経済新聞|宇都宮市、水道基本料金を2カ月全額免除
- 神奈川県|水道料金の改定 特設サイト
- タウンニュース|県営水道 段階的値上げ 3年で平均22%改定
- カナロコ|開成町、水道料金を値上げへ 10月から、平均19・25%引き上げ
- 開成町|水道料金を減免いたします
- 静岡市|2026年6月使用分から水道料金・下水道使用料を値上げします
- 水道手続き受付センター|2026年に水道料金が上がる自治体まとめ
- マイナビニュース|水道料金値上げが全国に拡大中
