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ウズベキスタンのIT優遇策はなぜ変わったのか 4月1日に始まった「輸出重視」への転換を読む

ウズベキスタンのIT優遇策はなぜ変わったのか 4月1日に始まった「輸出重視」への転換を読む

ウズベキスタンで2026年4月1日、政府系テック拠点「IT Park Uzbekistan」の優遇ルールが大きく変わった。国内向けの決済・マイクロファイナンス事業は税・関税優遇の対象から外れ、その一方で、海外展開を狙うスタートアップには新しい支援が広がる

ポイントは単純だ。政府は「ITなら何でも優遇」から、「外貨を稼ぐ輸出型のデジタル産業を厚く支える」へ軸を移した。中央アジアの成長市場として注目される国だけに、この方針転換は現地のフィンテック、スタートアップ、海外投資家の見方を変えそうだ。

  • 4月1日から、決済事業者や決済システム運営者、電子決済系マーケットプレイス、マイクロファイナンス事業者はIT Parkの優遇対象外
  • 残る企業にも、売上規模と輸出実績に応じた負担ルールが入る
  • 逆に、スタートアップにはIT Park入居資格や海外展開支援を広げる措置が動き出した
  • つまり、国内金融サービスの優遇縮小と、輸出志向スタートアップ支援の拡大が同時進行している
目次

何が変わったのか

今回の制度変更は、2025年12月26日付の大統領決議PP-388を受けたものだ。IT Park Uzbekistanの説明によると、4月1日から次の分野では税・関税インセンティブが適用されなくなる。

  • 決済事業者
  • 決済システム運営者
  • 電子決済系のマーケットプレイス
  • マイクロファイナンス事業者

これまでIT Parkは、ウズベキスタンを中アジアのデジタル拠点に育てるための看板政策だった。税優遇を武器に、外資系IT企業や輸出型サービス企業を呼び込み、雇用と輸出を伸ばしてきた。

しかし今回、政府はその枠組みを絞り込んだ。現地テックメディアのPivotは、影響を受ける具体例として決済サービスのClick、Payme、Paynet、決済ネットワークのUzcard、Humoなどを挙げている。重要なのは個社名そのものより、国内で大きく育った金融系デジタル企業が、もはや一律の育成対象ではなくなったという政策メッセージだ。

ここがポイント: ウズベキスタン政府は、国内向けフィンテックの保護より、輸出を増やすIT産業の選別支援へと舵を切った。

なぜ「輸出重視」に寄ったのか

IT Parkの公式説明では、新制度の狙いは「輸出志向のIT製品・サービスに重点を置いた持続可能なITエコシステム」の形成にある。要するに、国内市場の便利なアプリや決済サービスを増やすだけではなく、海外から売上を取れる企業をもっと増やしたいということだ。

この背景は、数字を見ると分かりやすい。IT Parkは2025年、輸出企業と外国企業の流入を強く打ち出していた。政府としては、税優遇を広く配るより、輸出や外貨獲得につながる分野に資源を寄せたほうが政策効果が高いと判断したとみられる。

企業に求められる新しい基準

公式発表と関連資料から見えるのは、単なる「優遇打ち切り」ではなく、企業行動を変えようとする設計だ。

  • 2026年からは輸出比率の達成がより重くなる
  • 売上規模が大きい企業ほど、輸出未達時の負担が重くなる仕組みが導入される
  • 2027年には最低輸出比率がさらに引き上げられる

Outsource.gov.uzの説明では、年商1000億スム超の大口IT Park入居企業には、2026年1月から輸出比率20%、2027年1月から35%という目安が示されている。基準を満たせば拠出率は1%、下回れば2%になる仕組みが案内されている。

つまり政府は、「優遇を受けるなら海外で売ってほしい」とかなり明確に言い始めたわけだ。

厳しくするだけではない スタートアップ向けはむしろ広がる

今回のニュースが面白いのは、締め付け一辺倒ではない点だ。2月に公表されたIT Parkの説明では、同じ4月1日から「Digital Startups」参加企業への支援が拡充される。

具体的には次のような内容だ。

  • 「Digital Startups」参加企業は、最低輸出要件なしでIT Parkのレジデント資格を自動取得
  • 国際アクセラレーター参加、研修、認証取得などの費用を最大50%、上限2万ドルまで補助
  • startupbase.uzの成功スタートアップ登録企業は、税滞納がなければ年間最大50万ドルを海外口座へ送金可能
  • ベンチャーファンドは所在地にかかわらずIT Parkレジデント資格を取得可能
  • クラウドファンディング制度や法務・財務アドバイザリー整備も進める方針

ここで見えるのは、国内向けの大きな金融サービスには厳しくしつつ、まだ小さいが海外市場を狙う企業には入り口を広げるという二段構えだ。

誰に得で、誰に痛いのか

影響はかなり分かりやすい。

得をしやすい側:

  • 輸出型のソフトウェア企業
  • 立ち上げ直後のスタートアップ
  • ウズベキスタンを中継拠点にしたい海外VCや海外顧客向け開発企業

厳しくなる側:

  • 国内市場中心で収益を上げる決済・マイクロファイナンス企業
  • 輸出比率を伸ばせない大手IT Park企業
  • 優遇前提で事業設計をしていた金融系デジタル事業者

日本から見ると何が重要か

日本でこの話が大ニュースになる可能性は高くない。ただ、実務的には見逃しにくい。

第一に、ウズベキスタンは「新興国のデジタル育成政策」が次の段階に入ったことを示している。創業支援の時期が終わると、政府は必ず「どの業種を残し、どこから優遇を外すか」という選別に入る。今回はその典型だ。

第二に、中央アジアのオフショア開発やBPO、スタートアップ投資を見ている企業にとっては、優遇の向きがより明確になった。今後は「ウズベキスタンで何をやるか」によって条件差が大きくなる。国内金融サービスを回す拠点として見るのか、海外向けプロダクトや開発輸出の拠点として使うのかで、制度の追い風が変わる。

第三に、フィンテック規制の整理という面もある。決済やマイクロファイナンスは、単なるITサービスではなく、金融安定や消費者保護とも直結する。優遇の看板から切り離す動きは、これらを「育成枠」より「規制対象」として扱い直す流れとも読める。

今後の注目点

最後に、見るべき点は3つある。

  • 4月以降、優遇対象外になった国内フィンテック各社が事業再編や法人構成の見直しに動くか
  • 輸出比率20%ルールが、実際にITサービス輸出の増加につながるか
  • スタートアップ優遇拡大で、海外VCや外国籍創業者の流入がどこまで増えるか

制度変更そのものはもう始まっている。次に問われるのは、ウズベキスタンが本当に「国内で便利なデジタル国家」から「外で稼げるデジタル輸出国」へ進めるかどうかだ。

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