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朝だけ開く「地域の足」 豊岡・竹野のスクールバス混乗が示す現実解

竹野地域の停留所で児童と住民がスクールバスに乗る様子。

朝だけ開く「地域の足」 豊岡・竹野のスクールバス混乗が示す現実解

兵庫県豊岡市の竹野地域で、2026年6月26日からスクールバスの空席に地域住民が乗れるようになりました。対象は登校便だけですが、予約なしで利用でき、高齢者の通院や高校生の通学を支えます。

重要なのは、単に空席を貸すだけではない点です。バス会社の運行管理、地域ドライバー、既存のスクールバスを一つの仕組みに組み合わせたことに、この取り組みの新しさがあります。

  • 対象は竹野地域を走るスクールバス3路線の登校便
  • 予約不要で、運賃は地区内300円、地区をまたぐ場合は500円
  • 運行主体は全但バス、事業主体は豊岡市
  • 児童・生徒の安全と通学を優先し、休校日は運行しない
目次

何が始まったのか――スクールバス3路線を住民に開放

今回の混乗は、朝の通学便に残る座席を地域交通として使う仕組みです。

対象となるのは、竹野地域の床瀬線、三原線、海岸線の3路線。山間部や海岸部から竹野振興局方面へ向かう登校便に、児童・生徒だけでなく地域住民や高校生も乗車できます。

利用条件は比較的シンプルです。

  • 運行開始:2026年6月26日
  • 利用できる便:登校便のみ
  • 予約:不要
  • 運賃:竹野・中竹野・竹野南の各地区内は300円
  • 地区をまたぐ移動:500円
  • 運休日:学校の休校日、臨時休校日

下校便は利用できません。したがって、朝に病院や駅方面へ出かける場合、帰りは予約型乗合交通「たけの~る」や既存の公共交通など、別の手段を組み合わせる必要があります。

ここは利便性の限界である一方、通学を妨げない範囲から始めるという安全上の線引きでもあります。

空席だけでなく、運転する人も地域で補う

竹野の取り組みの核心は、車両の共有と運転手不足への対応を同時に進めたことです。

バス会社が運行管理を担う

事業主体は豊岡市、運行主体は全但バスです。運行方法には道路運送法第78条第3号に基づく枠組みが使われています。

地域ドライバーが運転に参加しても、個人が自己判断で住民を運ぶわけではありません。全但バスが運行管理や車両管理を担い、その管理下で地域の一種免許保有者を活用します。運転者の確保を地域に広げながら、安全管理の責任主体を明確にする設計です。

豊岡市は、このように地域ドライバーがスクールバスを運転し、空席に住民を乗せる形態を日本初と説明しています。

既存の交通資源を組み替える

竹野地域では、2025年10月から予約型乗合交通「たけの~る」が運行されています。市、全但バス、竹野地域運営協議会、豊岡市社会福祉協議会が役割を分担し、地域内の移動を支える仕組みです。

今回の混乗では、たけの~ると同じ300円・500円の運賃体系が採用されました。利用者にとって料金を理解しやすくし、朝は定時運行のスクールバス、それ以外の時間は予約型交通という使い分けにつなげる狙いが読み取れます。

ここがポイント: スクールバス混乗は、新しいバスを追加する施策ではありません。すでに走る車両の空席と、地域にいる運転可能な人を、バス会社の管理下で地域交通へ組み直す取り組みです。

なぜ今、スクールバスの「混乗」なのか

背景にある主因は、車両よりも運転手が足りないことです。

人口が少ない地域では、路線バスの利用者が減る一方、高齢者の通院や買い物、高校生の通学といった移動需要は残ります。しかし、需要ごとに別々の車両と運転手を用意する方式は維持しにくくなっています。

そこで注目されるのが、児童・生徒のために確保されているスクールバスです。文部科学省によると、2023年度時点で全国の公立小学校の18.2%にスクールバスが導入されています。学校統廃合や通学路の安全確保に伴い、導入率は上昇傾向にあります。

国土交通省の「令和7年版国土交通白書」も、通学を妨げない範囲で住民を乗せる混乗や、通学時間外に車両を使う「間合い利用」を、地域の輸送資源を生かす方法として取り上げました。

同白書掲載の国民意識調査では、スクールバスや送迎バスを使ったコミュニティーバスについて、「問題なく受け入れられる」と「やむをえず受け入れる」を合わせた回答が約8割でした。一方、時間帯の制約や車内混雑への不便も前提にした結果であり、無条件の支持を示す数字ではありません。

利用者、自治体、学校は何を担うのか

混乗を続けるには、誰が判断し、誰が費用と安全に責任を持つのかを曖昧にできません。

住民は「使える時間」を確認する

竹野の混乗便は予約不要ですが、毎日走る一般路線バスではありません。学校の予定に連動し、臨時休校でも運休します。

利用者には、次の確認が必要です。

  • 希望日の登校便が運行されるか
  • 目的地まで利用できる停留所があるか
  • 帰宅時に使える別の交通手段があるか
  • 児童・生徒の利用を優先する条件に対応できるか

特に通院では、行きの便だけでなく、診察終了後の帰路まで先に考える必要があります。

自治体は部局をまたいで調整する

スクールバスは教育目的、地域交通は交通政策として扱われやすく、担当部署や予算が分かれます。混乗には教育委員会、交通部局、学校、運行事業者の調整が欠かせません。

国土交通省と文部科学省は2024年10月、スクールバスと地域交通を効果的に活用する際の留意事項を自治体へ通知しました。2026年5月の衆議院国土交通委員会では政府側が、児童・生徒の登下校に支障がなければ、住民を混乗させたり空き時間に別用途で使ったりしても、スクールバス運行費に対する普通交付税措置の対象になると説明しています。住民から運賃を徴収することや、交通部局の予算を充てることだけを理由に減額されることもないとしました。

竹野の事業は、国の「交通空白」解消等リ・デザイン全面展開プロジェクトの採択を受けて実施されています。ただし、実証や国の支援が終わった後も続けられるかは、利用実績と自治体負担、運行事業者の体制を見て判断することになります。

学校と運行事業者は通学の安全を守る

一般利用者が増えても、スクールバス本来の目的は児童・生徒の安全な通学です。座席数、乗降時の見守り、遅延への対応、事故時の連絡、一般利用者とのトラブル防止を、運行前に定めておく必要があります。

利用が増えるほど成功とは限りません。住民の乗車によって児童・生徒が座れない、登校が遅れるといった事態が起きれば、本来の役割が崩れます。評価すべきなのは乗車人数だけでなく、通学を守りながら地域の移動をどこまで補えたかです。

見落とせないのは「帰りの足」と地域差

混乗は交通空白を一度に解消する万能策ではなく、決まった方向・時間の需要に強い補完策です。

竹野では朝の登校便を使えるため、地域の集落から振興局方面へ向かう移動には役立ちます。しかし、帰りの便がなく、学校が休みの日には運行されません。住民の生活時間と学校の時間割が合わない地域では、同じ仕組みを導入しても利用は伸びにくいでしょう。

また、混乗に適した条件は地域ごとに異なります。

  • スクールバスに安定した空席があるか
  • 病院、駅、商店など生活上の目的地を通るか
  • 一般利用者が安全に待てる停留所があるか
  • 帰りを担う路線バスや予約型交通があるか
  • 運行管理を担える事業者と地域ドライバーを確保できるか

住民の受け止めを確かめる際も、「空席を使えて効率的か」という賛否だけでは足りません。保護者にとっては通学の安全、一般利用者にとっては運休日や帰路の分かりやすさ、運転手にとっては責任範囲と勤務条件が重要です。それぞれが違う場面を見ているためです。

次に見るべきは、朝の1便が生活の往復につながるか

竹野の取り組みは、スクールバスを住民にも開けば終わり、という話ではありません。今後の焦点は、朝の混乗便と予約型交通を組み合わせ、通院や通学の往復を実際に成立させられるかです。

確認したい指標は明確です。

  • 一般利用者がどの停留所と時間帯を使ったか
  • 児童・生徒の着席や定時到着に支障がなかったか
  • 地域ドライバーを安定して確保できたか
  • 予約型交通を含む帰りの足へ接続できたか
  • 国の支援後も自治体と運行事業者が費用を負担できるか

自分の地域で同じ方式が使えるかを考えるなら、自治体の交通担当だけでなく教育委員会にも、スクールバスの混乗や空き時間活用を検討しているか尋ねるとよいでしょう。成否を分けるのは空席の有無だけではありません。学校の時刻表と住民の一日の移動を、往復で結び直せるかが次の分岐点です。

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