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韓国の「海外養子縁組」再調査が再始動 埋もれた記録はどこまで掘り起こせるのか

韓国の「海外養子縁組」再調査が再始動 埋もれた記録はどこまで掘り起こせるのか

韓国で、過去の海外養子縁組をめぐる不正や人権侵害の再調査が再び動き出した。2026年2月に新たな真実和解委員会が発足し、前回委員会で結論が出なかった多数の案件を引き継ぐ。これは単なる過去の清算ではなく、「国家が子どもをどう扱ってきたか」を問い直す社会ニュースとして、欧米の養子当事者コミュニティや人権関係者のあいだで強い関心を集めている。

日本では大きくは報じられていないが、論点は重い。韓国は長年にわたり多数の子どもを欧米へ送り出してきた国で、その過程で記録の改ざん、虚偽の孤児登録、実親の同意不備などがあったとされる。今回の再調査は、どこまで制度的責任に踏み込めるかが焦点になる。

目次

何が起きたのか

2026年2月26日、韓国の3度目の真実和解委員会が新たな申請受付を始めた。AP通信によると、この委員会は前回の委員会で未解決のまま残った2100件超の案件を引き継ぎ、その中には西側諸国へ渡った韓国出身養子らによる311件の申請も含まれる。

前回の調査は2025年に大きな節目を迎えた。韓国の真実和解委員会は、海外養子縁組の一部で人権侵害があったと認定し、政府の責任も認めた。一方で、367件の申し立てのうち認定されたのは56件にとどまり、残る案件は内部対立や任期切れの影響で十分に審理されないまま止まった。

要点を整理すると、現時点の事実関係は次の通りだ。

  • 2025年の調査で、韓国政府の制度的責任が初めて大きく認定された
  • ただし、多数の案件が未処理のまま残った
  • 2026年2月に新委員会が発足し、再調査の窓口が再び開いた
  • 当事者側は、今回こそ個別救済と制度責任の両方に踏み込むよう求めている

なぜこの問題が今も終わっていないのか

背景には、韓国の海外養子縁組が「善意の国際支援」だけでは説明できない歴史を持っていることがある。AP通信とPBS FRONTLINEの共同調査によれば、韓国は長年にわたり約20万人規模の子どもを海外へ送り出してきた。特に1970〜80年代には、私的な養子縁組機関が大きな役割を担い、その過程で書類の不備や改ざん、孤児でない子どもの孤児登録、実親への不十分な説明などが広く起きていた疑いがある。

2025年3月の委員会判断は、この問題を「一部の現場の逸脱」ではなく、福祉支出の抑制や人口政策と結び付いた構造問題として捉えた点が大きい。ここが今回のニュースの核心だ。

つまり問われているのは、ある養子縁組が適法だったかという一点だけではない。韓国政府が民間機関に大きく依存しながら、子どもの出自確認や親権同意の検証をどこまで怠っていたのか。そして受け入れ国側が、その不自然さをどこまで見過ごしていたのかという問題でもある。

いま韓国政府はどこまで動いているのか

韓国政府は完全に何もしていないわけではない。2025年6月にはハーグ国際養子縁組条約の批准を進め、養子縁組手続きを公的枠組みに近づける方向を打ち出した。さらに同年12月には、海外養子縁組を2029年までに段階的に終える方針も示している。

これは制度改革としては重要だ。ただし、当事者にとってより切実なのは「これからの制度」より「すでに失われた記録と身元」をどう回復するかだ。

ここで論点は2つに分かれる。

  • 予防としての制度改革
  • 過去被害への真相解明と救済

前者は進みつつあるが、後者はなお不十分だというのが、養子当事者や支援団体の主張である。実際、2025年末には国連の人権専門家が、韓国政府の真相究明や賠償、救済措置の不足に強い懸念を示したとAPが報じている。

今回の再調査で注目すべき争点

1. 未処理案件をどこまで実質審理できるか

新委員会は前回からの未処理案件を引き継ぐが、実際の調査体制づくりには時間がかかると報じられている。申請を受け付けても、担当チームの整備や資料収集が遅れれば、再び「窓口だけ開いて前に進まない」状態になりかねない。

2. 個別事件ではなく、制度全体の責任をどこまで認定するか

一部案件だけを認定して終わるのか、それとも政府、養子機関、受け入れ国の連動した責任まで広げるのかで、歴史評価は大きく変わる。前回報告は制度責任に踏み込んだが、救済面は限定的だった。

3. 記録が欠落した人をどう救済するか

この問題では、記録がないこと自体が被害の一部になっている。出生記録や親族情報が欠け、本人が出自を証明できないケースでは、通常の民事訴訟のように「被害者側が証拠を出せ」で済ませるのは難しい。ここは再調査の制度設計そのものが問われる。

日本から見ると、なぜこのニュースが重要なのか

この話は韓国の国内問題に見えるが、実際にはかなり国際的だ。送り出した国の責任だけでなく、受け入れた国の審査、記録保存、国籍付与、被害救済まで連鎖しているからだ。欧米でこの問題への関心が強いのは、自国もまた当事者だからである。

日本の読者にとってのポイントは、少子化や福祉、家族政策をめぐる議論と切り離せないことだ。子どもの保護を掲げる制度でも、監督が弱く、民間に委ねすぎると、あとから取り返しのつかない人権侵害になりうる。「良い目的の制度なら運用も良いはずだ」という思い込みは危うい

今後の見通し

現時点で確実に言えるのは、問題が終わっていないということだ。ここから先の見通しは、大きく3つある。

  • 新委員会が前回より踏み込み、未処理案件の審理と制度責任の明確化を進める
  • 制度改革は進んでも、過去案件の救済は限定的なまま残る
  • 韓国国内だけでなく、フランスやデンマーク、米国など受け入れ国側の調査や訴訟が広がる

もっとも可能性が高いのは、まず1と2が並行する形だろう。つまり、制度は前に進むが、個々の当事者の真実回復はゆっくりで、ばらつきも残るという展開だ。

注目ポイント3つ

  • 再調査の再始動は、韓国政府が「終わった話」にできなかったことを意味する
  • 争点は個別の不正だけでなく、国家と民間機関が作った仕組み全体にある
  • 今後は韓国国内の調査だけでなく、受け入れ国側の責任論にも広がる可能性が高い

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