教室に入れなくても、学校とはつながれる 広がる「校内の別室」と利用前に確かめたいこと
教室に入るのが難しくても、学校の中の別室なら過ごせる。そんな子どものために、空き教室などを使って学習や相談を支える「校内教育支援センター」が全国で増えています。
ただし、同じ名称でも、開室日、担当者、過ごし方、下校時の対応は学校や自治体によって異なります。利用を考える家庭は、設置の有無だけでなく「実際に何曜日、何時まで使えるか」を確かめる必要があります。
この記事の要点は次の4つです。
- 在籍校の中で、教室以外の居場所と学習機会を提供する仕組み
- 2025年の設置校は全国1万5,874校まで増加
- 利用方法や支援員の配置、時間割は自治体・学校ごとに違う
- 下校や送迎まで含め、保護者の生活と両立できる運営かが次の課題
校内教育支援センターは「学校の中にある別の選択肢」
最大の特徴は、在籍している学校とのつながりを保ちながら、教室とは別の場所で過ごせることです。
文部科学省は、学校には行けても自分の学級に入りにくいときや、気持ちを落ち着かせたいときに利用できる、学校内の空き教室などを活用した部屋と説明しています。自治体によって「スペシャルサポートルーム」「校内支援教室」など呼び名はさまざまです。
そこで行われる支援には、主に次のようなものがあります。
- プリント、教科書、ICT端末などを使った個別学習
- 支援員や教員との相談
- 読書や創作など、落ち着いて過ごす活動
- 一部の授業や行事への参加に向けた調整
- 担任、養護教諭、スクールカウンセラーらとの情報共有
東京都豊島区の例では、生徒が自分で予定を決めて活動し、希望や状態に応じて一部の一斉授業に参加します。支援員は学習だけでなく、給食、配布物の確認、家庭への連絡にも関わっています。
「別室に通えば、すぐ教室へ戻らなければならない」という単純な仕組みではありません。まず安心して過ごし、学校との接点を切らさないこと自体が重要な役割です。
学校外の教育支援センターやフリースクールとは何が違うのか
違いは、場所と運営主体、利用条件です。 校内教育支援センターは在籍校の中にありますが、学校外にも複数の学びの場があります。
校内教育支援センター
在籍校の校舎内に置かれ、学校や教育委員会が運営します。担任や教科担当者と情報を共有しやすく、教室での授業や学校行事に部分的に参加する動きも組み立てやすいのが特徴です。
利用料を一律に徴収する全国制度ではなく、公立学校では自治体や学校設置者の予算で運営されます。ただし、教材や昼食、送迎などに個別の負担が生じるかは学校へ確認が必要です。
学校外の教育支援センター
市区町村教育委員会などが学校外に設ける公的な施設です。教科学習、体験活動、カウンセリングなどを行います。通所できる曜日や交通手段は地域によって異なります。
フリースクールなどの民間施設
運営方針や活動内容は施設ごとに異なり、利用料が必要な場合があります。一定の要件を満たせば、校長の判断で活動日が指導要録上の出席扱いになることもあります。
ここがポイント: 校内教育支援センターは、ほかの選択肢を排除する制度ではありません。子どもの状態に応じて、校内の別室、学校外の公的施設、民間施設、自宅での学習などを組み合わせる視点が必要です。
設置校は増えたが、小学校と中学校で差がある
全国的な整備は進んでいるものの、どの学校でも同じように使える段階には達していません。
文部科学省のCOCOLOプラン進捗資料によると、校内教育支援センターの設置校は2024年の1万2,712校から、2025年には1万5,874校へ増えました。設置率は小学校49.1%、中学校77.5%です。
一方、2024年度に不登校とされた小中学生は35万3,970人で、12年連続の増加となりました。前年度からの増加率は2.2%まで縮小したものの、支援が必要な子どもの数は依然として過去最多です。
国は支援員配置を補助し、実施主体は主に市区町村などの学校設置者です。2025年度の補助事業では、支援員の報酬や交通費、委託費などを対象とし、国・都道府県・市区町村が原則3分の1ずつ負担する枠組みが示されました。
ここで見落とせないのは、部屋を用意することと、毎日利用できる支援体制をつくることは別だという点です。専任者が常駐する学校もあれば、複数校を巡回したり、限られた曜日だけ支援員を配置したりする学校もあります。
鎌ケ谷市で表面化した「利用できても帰れない」問題
家庭にとっては、室内の支援内容だけでなく、登下校を含む一日の流れが利用の可否を左右します。
千葉県鎌ケ谷市は2025年4月から全小学校に校内支援センターを設け、「ひだまり先生」を週2日または3日配置しました。2026年度には対象を市内すべての小中学校へ広げ、支援員を5人から7人に増員する事業を約1,813万円で進めています。
一方、市が2026年7月にウェブサイトで公開した市民意見には、教室へ戻れず途中で帰る場合に保護者の迎えが必要となり、仕事のある日はセンターを利用しにくいという訴えが掲載されました。
市は安全を優先して各校で対応していると説明し、ファミリー・サポート・センターによる送迎も不登校の場合を含めて対象になると回答しました。ただし、自宅で子どもを引き渡す際には大人がいることを条件としています。
このやり取りが示すのは、「校内に居場所ができた」という情報だけでは家庭が利用可能か判断できないことです。特に小学生では、次の条件が大きく影響します。
- 子どもだけで登下校できるか
- 途中で帰宅する場合、迎えが必要か
- 支援員が不在の日も別室を使えるか
- 給食を別室で食べられるか
- 放課後児童クラブや送迎支援へつなげられるか
ネット上の強い賛否を集める話題というより、自治体の意見受付を通じて、働く保護者には利用条件が実質的な壁になることが具体化した事例です。安全確保と保護者の就労をどう両立させるかは、一つの学校だけでは解決しにくく、教育委員会と子育て支援部門の連携が問われます。
利用したいとき、最初に誰へ相談するのか
まず在籍校へ相談し、利用条件を具体的に確認するのが基本です。 豊島区も、利用に当たって学校の先生へ相談するよう案内しています。
全国共通の一律申請書や利用手順があるわけではありません。一般的には、次のような流れが考えられます。
- 担任、養護教諭、教育相談担当者などへ相談する
- 子ども本人の希望と、負担になっている場面を伝える
- 別室を見学し、短時間の利用から試す
- 通う曜日、滞在時間、学習内容、連絡方法を決める
- 状態に応じて利用計画を見直す
相談時には「利用できますか」だけで終わらせず、以下を聞いておくと生活上の行き違いを減らせます。
- 対象学年と利用条件
- 開室する曜日と時間、支援員の在室時間
- 遅れて登校する場合の入口や連絡方法
- 途中下校の条件と、迎えが必要になる場面
- 給食、テスト、成績評価、出欠記録の扱い
- 教室の授業への部分参加が必須か、本人が選べるか
- スクールカウンセラーなど専門職へ相談できるか
子どもが学校との連絡自体を負担に感じている場合は、保護者が教育委員会や地域の教育相談窓口へ先に相談する方法もあります。
次に問われるのは「設置数」より運営の中身
今後の分岐点は、支援員を安定して確保し、家庭の事情に左右されにくい利用条件を整えられるかです。
熊本市内21校を対象にした熊本大学の研究報告では、短時間でも来室できるようになったことや、子どもの心理面の変化が成果として挙げられました。その一方、21校中15校で、担任による関わり方の違いや、センターの役割が教職員間で共有されていないといった課題が指摘されています。利用者が多い学校の人員不足、家庭との連携の難しさも報告されました。
センターを特定の支援員に任せきりにすると、その人の勤務日や経験によって利用環境が変わります。担任、管理職、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーが役割を分担し、担当者が不在でも支援を切らさない体制が必要です。
保護者が自分の地域で見るべきポイントは、設置済みかどうかだけではありません。
- 週に何日、何時間使えるのか
- 本人が安心して過ごせる運用になっているか
- 学習、相談、昼食、登下校を一続きで支えられるか
- 学校外の支援先へ柔軟につなげられるか
- 子どもと保護者の意見を定期的に運営へ反映しているか
校内教育支援センターが本当の選択肢になるかは、看板や部屋の数ではなく、子どもが利用したい日に利用でき、家庭が無理なく支え続けられるかで決まります。自治体が次に公表すべきなのは設置校数だけでなく、開室日数、支援員の配置、利用者の声を踏まえた改善状況です。
