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「18歳未満の選挙運動は禁止」に東京地裁が違憲判断|SNSのシェアも罰則対象だった1952年の規定|2026年9月26日版

選挙ポスター掲示板の前でスマートフォンを手にする高校生のイメージ

「18歳未満の選挙運動は禁止」に東京地裁が違憲判断|SNSのシェアも罰則対象だった1952年の規定|2026年9月26日版

応援したい候補者の投稿を、高校生がSNSでシェアする。それだけで「1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金」の対象になりうる——この扱いを定めてきた公職選挙法の規定について、東京地裁が9月25日、憲法違反だと判断した。

衣斐瑞穂裁判長は、18歳未満の自発的な選挙運動を一律に禁じることを「表現の自由という精神的自由に対する重大な制約だ」と指摘した。この規定は1952年の法改正で入ったもので、憲法適合性に司法が判断を示したのは初めてだ。

ただし、原告4人が求めた1人10万円の損害賠償と地位確認は、いずれも退けられている。違憲と言いながら救済はしない、という構図をどう読むかが、この判決のいちばん難しいところだ。

目次

この判決の要点

  • 東京地裁が9月25日、18歳未満の選挙運動を一律に禁じる公選法の規定を憲法21条違反と判断(司法判断は初)
  • 禁止の対象には、電話での投票呼びかけやSNSでの候補者投稿のシェア・拡散が含まれる
  • 罰則は1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金、公民権停止は最長5年
  • 一方で、18歳未満を「使って」選挙運動をした側への罰則規定は合憲とされた
  • 賠償請求と地位確認は棄却。国会の立法不作為も違法とは認められなかった

何が争われ、何が認められたのか

原告は、東京都、愛知県、北海道、関西地方に住む当時16〜18歳の4人。全員が高校生だった2025年2月28日に提訴し、判決時点では17〜20歳になっている。候補者を応援しようとしながら、公選法の規定を理由に断念した経験が出発点だった。

求めたのは二つ。18歳未満でも選挙運動ができる地位にあることの確認と、1人10万円、計40万円の国家賠償である。

判決の判断は、論点ごとにきれいに分かれた。

争点東京地裁の判断
18歳未満本人の選挙運動を一律禁止する規定違憲(憲法21条に反する)
その違反に科される罰則合理的な根拠を欠く
18歳未満を使って選挙運動をした側への罰則合憲
選挙運動ができる地位の確認棄却
国家賠償(立法不作為)棄却

「目的は正当、手段が過剰」という筋道

判決は、禁止規定の目的そのものは否定していない。選挙の公正確保と未成年者の保護という狙いは認めたうえで、その目的のために一律禁止まで必要かを問うた。

連呼行為の制限や戸別訪問の禁止など、公選法にはすでに細かな規制が並んでいる。候補者陣営が未成年を人海戦術で動員するといった懸念も、それらの規定で対処できる。だから「一律禁止の必要性は判然としない」——判決はそう組み立てた。

そのうえで、「未成年者が自らの価値判断に基づいて選挙運動に参加することを、法令で禁止する実質的根拠は見いだし難い」と述べている。ここが判決の芯だ。守る対象は未成年者本人であって、本人の自発的な意思表示まで刑罰で封じる理由にはならない、という読み方である。

ここがポイント: 違憲とされたのは「18歳未満本人が自分の判断でする選挙運動」の禁止。未成年を動員した大人を罰する部分は合憲のまま残った。子どもを守る規制と、子どもの表現を止める規制が切り分けられた。

なぜ生活に近い話なのか

抽象的な憲法論に聞こえるかもしれないが、実際に引っかかるのは、ごく日常の操作だ。

選挙期間中、18歳未満が次のような行為をすると、法律上は選挙運動にあたりうる。

  • 特定候補の投稿をXでリポストする、Facebookでシェアする
  • 知り合いに電話やメッセージで「この人に投票して」と呼びかける
  • 候補者の応援メッセージを自分のアカウントで発信する

一方、陣営でポスターを貼る、はがきの宛名を書くといった機械的な作業は、選挙運動そのものとは扱われないとされてきた。つまり手を動かす作業は許され、意見を言うことは禁じられるという線引きが続いてきたわけだ。

18歳になれば同じ行為が一斉に解禁される。17歳と18歳のあいだに、刑事罰を伴う断崖がある。高校3年のクラスで、誕生日が来た生徒だけが政治の話をSNSに書ける——実務上はそういう状態が生まれている。

2016年に選挙権年齢が18歳に下がり、学校では主権者教育が広がった。投票の意義を教えられる一方で、その一歩手前の「応援を口に出す」行為は罰則付きで禁じられている。原告側が「民主主義に有意義な活動を不当に制限している」と主張したのは、このねじれを指している。

判決が動かすもの、動かさないもの

実務が明日から変わるわけではない。地裁判決であり、賠償も地位確認も認められていないため、規定は今日も有効に存在している。18歳未満の人が選挙期間中にリポストをすれば、依然として違反を問われうる。

それでも意味は小さくない。74年間、憲法適合性を正面から問われてこなかった条文に、裁判所が「実質的根拠を見いだし難い」と書いたからだ。

賛否の分かれ目

この判決の受け止めは、次の軸で分かれる。

  • 表現の自由を重く見る立場: 自発的な意見表明を刑罰で封じるのは過剰で、年齢での一律線引きに合理性がない
  • 選挙の公正と保護を重く見る立場: 候補者や政党が未成年に影響力を及ぼす余地が広がり、学校や家庭での圧力にもつながりかねない

判決自身が、後者の懸念に一定の配慮を見せている。動員した側を罰する規定を合憲としたのは、「子どもを使う大人」への歯止めは残す判断だ。対立というより、規制の重心をどこに置くかという配分の問題として整理されている。

今後の注目点

  • 国が控訴するかどうか。控訴されれば高裁、さらに最高裁まで争いが続き、確定までの時間は長くなる
  • 国会が先に動くか。10月5日召集の臨時国会は消費税減税と衆院定数削減が主戦場で、公選法のこの条文が議題に上がる見通しは今のところ立っていない
  • 線引きの具体化。仮に見直すなら、何を選挙運動とし、何を政治活動として認めるのか、SNS時代に合う基準を書き直す作業が要る
  • 学校現場の説明。違憲判断が出た規定を、主権者教育でどう生徒に伝えるか。「法律上は禁止だが裁判所は違憲と言った」という状態は、教える側に難しい宿題を残した

選挙のたびに配られる注意喚起の紙には、これまで「18歳未満はシェアも『いいね』も控えて」と書かれてきた。次の選挙でその文面がどうなるか。判決の実効性は、案外そういう細かいところに現れる。

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