「第3のビール」が消える10月1日|酒税54.25円一本化で晩酌代と売り場はこう変わる|2026年9月25日版
10月1日午前0時をまたいだ瞬間、スーパーの酒売り場の値札の前提が入れ替わる。ビール・発泡酒・新ジャンル(第3のビール)にかかる酒税が、350ml缶あたりすべて54.25円にそろうからだ。
得をするのはビール党で、350ml缶1本あたり9.10円の減税。逆に、価格の安さを理由に選ばれてきた第3のビールは7.26円の増税になる。缶チューハイ・サワー類も28円から35円へ7円上がる。
この差をなくす改正は2017年の税制改正で決められた三段階の最終段階で、駆け込みの買いだめや、メーカーによる看板商品の「ビール化」がすでに走り出している。
- ビール:350ml缶の酒税が63.35円 → 54.25円(−9.10円)
- 発泡酒(麦芽25%未満)・新ジャンル:46.99円 → 54.25円(+7.26円)
- チューハイ・サワー類:28円 → 35円(+7円)
- 金麦・本麒麟・クリアアサヒなどは麦芽比率を引き上げ、区分そのものが「ビール」へ
何がどう変わるのか
改正の中身は単純で、「中身が似ているのに税額が違う」状態の解消だ。原料や麦芽比率の違いだけで350ml換算で最大49円も開いていた税差が、10月1日でゼロになる。
税率の動きは次のとおり。
| 区分 | 現行(1kLあたり) | 10月1日以降 | 350ml換算の変化 |
|---|---|---|---|
| ビール | 181,000円 | 155,000円 | 63.35円 → 54.25円(−9.10円) |
| 発泡酒(麦芽25〜50%) | 155,000円 | 155,000円 | 変わらず |
| 発泡酒(麦芽25%未満)・新ジャンル | 134,250円 | 155,000円 | 46.99円 → 54.25円(+7.26円) |
| チューハイ・サワー類 | 80,000円 | 100,000円 | 28円 → 35円(+7円) |
ケース単位にするとインパクトが見えやすい。24本入り1ケースで、ビールは酒税だけで約218円安くなり、新ジャンルは約174円、缶チューハイは168円高くなる。週に1ケース買う家庭なら、選ぶ銘柄によって年間で数千円単位の差が生まれる計算だ。
なぜ「第3のビール」というカテゴリーが消えるのか
税差がなくなると、メーカーが麦芽比率を低く抑えてまで別カテゴリーに踏みとどまる意味がなくなる。だから各社は、安くするための商品設計をやめ、中身をビールに寄せる方向に舵を切った。
看板商品が次々に「昇格」する
サントリーは新ジャンルの「金麦」の麦芽使用率を50%未満から50%以上へ引き上げ、ビールとして10月6日に発売する。糖質75%オフタイプも同様にビール化される。キリンの「本麒麟」、アサヒの「クリアアサヒ」といった各社の主力にも同じ動きが広がり、店頭から「第3のビール」という棚が実質的になくなる。
ここで注目したいのは価格戦略だ。サントリーは金麦について、新ジャンルと同じ価格帯を維持したまま中身の価値を上げる方針を示している。税額が7.26円上がる中で価格を据え置けば、その分はメーカーと流通が吸収することになる。
減税分がそのまま値下げになるとは限らない
ビールの9.10円減税についても、消費者の手取りの値下げ幅がそのまま9.10円になる保証はない。ビール類の多くはオープン価格で、実際の売価を決めるのは小売店だからだ。メーカー希望小売価格の改定幅は税額の変化に沿っていても、店頭でいくらになるかは店ごとに分かれる。
ここがポイント: 10月1日に変わるのは「税額」であって「売価」ではない。ビールは下がりやすく、新ジャンルと缶チューハイは上がりやすい、という方向感までは確実だが、値札の動き方は店によって差が出る。
家計と売り場で、いま何が起きているか
増税前の駆け込みはすでに始まっている。イオンは第3のビールなどの在庫を前年の倍に積み増し、3ケースまとめ買いにティッシュを付けるようなキャンペーンを展開。9月に入ってからケース販売の売上が1.5倍になった店舗もある。
物価高が続くなかで、節約のために新ジャンルへ移ってきた層にとっては、その受け皿が値上がりする形になる。日本経済新聞は、この改正を「インフレ下の節約消費に逆風」と位置づけている。
一方で、選択肢の見え方は変わる。専門家からは、ビール市場が上位・中位・エコノミーの3つの価格帯に再編され、味の多様化が進むという見方も出ている。安さだけで選ばれていた層が、価格差の縮んだ棚の前で銘柄を選び直す局面に入る。
ネット上の受け止め
改正をめぐる反応は、立場によってきれいに割れている。
- ビール好きからは「ようやくビールが選びやすくなる」と歓迎する声
- 日々の1本を新ジャンルで済ませてきた層からは、値上がりへの戸惑いや、買いだめを急ぐ書き込み
- 缶チューハイの7円増税が見落とされがちだ、という指摘
- 「金麦がビールになる」ことへの驚きと、味がどう変わるのかへの関心
いずれも施行前の反応であり、実際の売価や味の評価は10月以降の店頭で確かめるしかない。
酒販店・小売の現場には申告作業が残る
見落とされやすいのが、流通段階の在庫に対する調整措置だ。10月1日午前0時の時点で課税済みの酒類を持っている販売業者には、新旧税率の差額を精算する手持品課税(戻税)が適用される。
- 対象は、引き上げ対象の酒類を1,800リットル以上所持する販売業者など
- 増税品は差額を納付、減税品は差額が戻る
- 課税額と戻税額を相殺し、申告期限は11月2日(月)
つまり、ビールと新ジャンルの両方を大量に抱える酒販店ほど、10月1日を境に棚卸しと申告の実務が発生する。増税前の在庫を積み増した店ほど、この作業は重くなる。
今後の注目点
- 10月上旬の値札:ビールの減税分がどこまで店頭価格に反映されるか。反映幅が小さければ「減税の実感がない」という不満につながる
- 金麦(10月6日発売)などビール化商品の評価:価格据え置きで中身を変える戦略が支持されるか
- 缶チューハイ市場の動き:ビール類との価格差が縮み、7円増税も重なる。RTDから他カテゴリーへ需要が流れるか
- 駆け込み需要の反動:9月に積み上がった在庫が、10月・11月の販売数字をどれだけ押し下げるか
- 11月2日の手持品課税申告:小規模酒販店の事務負担がどの程度になるか
9年前に決まった税率の最終調整が、物価高のただ中で着地する。10月1日以降にどの棚の値札が動き、どの棚が動かないのか——それを確かめるところから、家計の選び直しが始まる。
参照リンク
- 酒類の手持品課税(戻税)について|国税庁
- 酒税に関する資料|財務省
- ビールになった新「金麦」誕生|サントリーホールディングス
- 第三のビールと発泡酒が10月に増税 インフレ下の節約消費に逆風|日本経済新聞
- 「金麦」「本麒麟」「クリアアサヒ」など“第三のビール”がビールに昇格|ハフポスト日本版
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