アンモニア燃料の自動車船4隻へ、国内7社が連携 船と燃料を同時整備|2026年10月29日版
日本郵船、川崎汽船、今治造船、JERAなど国内7社が、アンモニア燃料で動く自動車専用船4隻と、その燃料供給網を一体で整備する。10月27日に発表された計画で、2030年をめどに商用化を目指す。
核心は、船を造るだけでなく、燃料の調達から港での補給まで同時に用意することだ。自動車の輸送に伴う温室効果ガスを減らす狙いがある一方、毒性への対策や燃料費が普及を左右する。共同通信の報道
- 自動車専用船4隻と、燃料を補給する専用船を整備する。
- 中部地区を拠点に、燃料調達・貯蔵・供給・運航をつなぐ。
- 商用化の目標は2030年。安全性と採算の確立が課題となる。
何が起きたか――海運・造船・エネルギー企業が役割を分担
新しい燃料を使う船には、寄港先で燃料を補給できる仕組みが必要になる。今回の連携は、その供給網もまとめて構築する計画だ。
参加するのは、日本郵船、川崎汽船、今治造船、日本シップヤード、新来島どっく、旭洋造船、JERAの7社。船の設計・建造、運航、燃料の調達と販売を分担する。7社の共同発表
燃料供給では、専用の補給船を自動車船に横付けする方式を採用する。港に燃料が届いても、それを安全に船へ移せなければ運航は続けられない。船と供給設備を同時に整える意味は、この接続部分にある。
なぜ重要か――車を運ぶ工程も排出削減の対象になる
今回の計画が関係するのは、海運会社だけではない。完成車を海外へ運ぶ自動車メーカーにとっても、輸送時の排出を減らす手段になる。
企業の温室効果ガス排出は、自社工場や購入電力だけでなく、取引先による輸送なども含めて捉えられる。この間接的な排出が「Scope3」だ。ITmediaの報道も、荷主側の排出削減需要を今回の連携の背景として挙げている。ITmediaの解説
普段は受注を競う造船会社も、今回は共同で船を形にする。新しい燃料への対応には、設計や安全対策で解くべき問題が多く、各社が別々に取り組む負担が大きいためだ。
ただし、家計への効果は間接的だ。今回の発表だけで、自動車の販売価格や輸送費が下がるとは判断できない。まず問われるのは、荷主が利用できる輸送サービスとして、安定運航と費用の両立ができるかである。
「燃やしてCO₂が出ない」だけでは評価できない
アンモニアは燃焼時にCO₂を出さない。しかし、それだけで船の温室効果ガス排出がゼロになるわけではない。
IEAの先進自動車燃料技術協力プログラムによる整理では、製造に使うエネルギーに加え、エンジンの燃焼条件や排ガス処理も重要になる。着火用の燃料油によるCO₂や、燃焼時に生じる窒素酸化物なども考慮する必要がある。
評価すべきなのは、燃料を造ってから船で使うまでの排出全体だ。燃料の名称だけで環境性能を判断するのは早い。
もう一つの条件が安全性である。欧州海上安全庁は、アンモニアの毒性や腐食性に対応する設備、運用手順、船員の訓練が必要だと整理している。燃料を扱う船員や港湾作業員にとって、漏えいを防ぐ設計と、異常時に対応できる手順が欠かせない。欧州海上安全庁の安全性資料
今後の注目点――2030年に船と供給網がそろうか
発表は商用化に向けた計画であり、運航実績が積み上がった段階ではない。英国海事沿岸警備庁も、アンモニア燃料には従来燃料より高い費用や、貯蔵・取り扱い上の課題があると説明している。英国当局の整理
これから確認したいのは、次の3点だ。
- 整備の足並み:自動車船、補給船、燃料供給設備が同じ時期に使える状態になるか。
- 費用の負担:燃料や設備の追加費用を、海運会社と荷主がどう分担するか。
- 実際の削減量と安全性:製造・輸送・燃焼を通じた排出量と、安全な補給・運航の実績が示されるか。
4隻の建造に加え、継続して燃料を届け、荷主が使い続けられる価格で運航できるか。2030年に向けた進捗を見る際は、船の完成予定とともに、燃料供給の準備状況を追いたい。
