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「家が無事」だけでは決められない 在宅避難を続けるための5つの条件

在宅避難に備えて水や食料、携帯トイレなどを確認する家庭。

「家が無事」だけでは決められない 在宅避難を続けるための5つの条件

東京都が2026年7月、新たに「在宅避難キャンペーン」を始めました。自宅に倒壊や浸水、火災の危険がなければ、住み慣れた場所にとどまることは有力な選択肢です。

ただし、建物が安全でも、水、トイレ、薬、情報、支援との接点が確保できなければ在宅避難は続きません。自宅に残るかどうかは、家の強さだけでなく、生活を維持できるかまで含めて判断する必要があります。

この記事の要点は次の4つです。

  • 在宅避難は、安全を確認できた自宅で生活を続ける方法
  • 備蓄は最低3日分、推奨1週間分が東京都の目安
  • 断水時は飲料水だけでなく、携帯トイレと水の運搬手段が重要
  • 自宅にいても支援対象。地域の支援拠点や連絡方法を平時に確認する
目次

東京都が在宅避難を打ち出した理由

安全な住宅の住民まで一斉に避難所へ移る必要はない、というのが今回の発信の軸です。

東京都のキャンペーンは2026年7月から2027年3月まで。対策を「燃えない」「倒れない」「困らない」の3本に整理しています。具体的には、感震ブレーカー、家具の転倒防止、日常備蓄、地域とのつながりです。

東京都では約900万人がマンションなどの共同住宅に住んでいます。耐震基準を満たし、被害が軽微なマンションなら、避難所へ移らず自宅で生活を続けられる場合があります。その分、避難所の混雑を抑え、本当に自宅を離れなければならない人の居場所を確保しやすくなります。

一方、在宅避難は「行政の支援を受けず、各家庭だけで耐える」という意味ではありません。内閣府の手引きは、避難所という場所を中心とする支援から、居場所にかかわらず支援が必要な人を支える考え方への転換を示しています。

在宅避難に向くかを決める5つの確認

最初に見るべきなのは備蓄量ではなく、自宅にとどまって命を守れるかです。 次の5項目を順番に確認します。

1.建物と周辺に差し迫った危険がないか

地震後に大きな傾きや柱・壁の深刻な損傷、火災、ガス臭がある場合は、自宅に残らないでください。自治体による避難指示や、応急危険度判定の結果にも従います。

風水害では、建物が丈夫でも立地によって判断が変わります。自治体のハザードマップで、次を確認しておきましょう。

  • 洪水や高潮、津波による想定浸水深
  • 浸水が続く時間
  • 家屋倒壊等氾濫想定区域に入っていないか
  • 土砂災害警戒区域に入っていないか
  • 自宅から安全な場所までの避難経路

浸水区域内でも、居室が想定浸水深より高く、家屋が流される危険のある区域外で、水が引くまで生活できるなら、上階にとどまる「屋内安全確保」が可能な場合があります。条件を一つでも満たせないなら、早めの立ち退き避難が基本です。

2.水と食料を必要な期間確保できるか

東京都の2026年版指針は、在宅避難の備蓄について最低3日分、推奨1週間分を目安としています。エレベーターが止まると地上との往復が難しくなる中高層階では、特に1週間分が重要です。

飲料水は成人1人1日3リットルが目安です。単純計算では、1人分だけでも3日で9リットル、7日で21リットルになります。

食料は非常食だけでそろえる必要はありません。普段食べる缶詰、乾麺、レトルト食品などを少し多めに買い、使った分を補う「日常備蓄」なら、期限切れや食べ慣れない問題を減らせます。

家庭ごとに追加したいものも異なります。

  • 常用薬、お薬手帳の写し
  • 乳幼児用のミルク、離乳食、おむつ
  • 介護用品や衛生用品
  • アレルギー対応食品
  • ペットフードと排泄用品
  • モバイルバッテリー、乾電池、照明

東京都の指針は、アレルギー対応食品など入手しにくい特殊食品について、少なくとも2週間分の家庭内備蓄にも言及しています。

3.断水中のトイレを処理できるか

見落としやすいのがトイレです。水が出なくても便器が壊れていなければ使える、とは限りません。集合住宅では排水管の破損を確認せず流すと、下階で汚水があふれるおそれがあります。

携帯トイレは、家族の人数と使用回数、想定日数から必要数を計算します。消臭袋、手袋、手指消毒用品、使用済み袋の一時保管場所もセットで決めておくと、発災後に迷いません。

給水を受ける場合は容器を各自で用意するのが基本です。折り畳み式タンクや清潔な容器に加え、重い水を運ぶキャリーカートなども確認しておきましょう。

4.停電や暑さ、寒さに耐えられるか

停電すると、冷暖房、照明、通信だけでなく、マンションのエレベーターや給水設備も止まる可能性があります。特に乳幼児、高齢者、持病のある人、医療機器を使う人にとって、室温や電源の確保は在宅避難の可否を左右します。

暑さや寒さで健康を維持できない、医療機器の予備電源が足りない、階段で水や物資を運べない。こうした場合は、建物に大きな被害がなくても、避難所や福祉的な支援につなぐ判断が必要です。

5.支援と情報につながれるか

自宅に残ると、支援する側から居場所や困り事が見えにくくなります。スマートフォンが使えない状況も考え、平時に次の点を調べてください。

  • 在宅避難者が状況を登録・申告する方法
  • 食料、給水、充電、相談を受けられる支援拠点
  • 最寄りの指定避難所で在宅避難者も物資を受け取れるか
  • 自治体の防災メール、アプリ、掲示板などの情報経路
  • 町会、自治会、マンション管理組合の安否確認方法

制度や窓口は自治体ごとに異なります。「避難所に入らないから行ってはいけない」と自己判断せず、必要な支援の受け方を市区町村に確認することが大切です。

ここがポイント: 在宅避難は「家にこもること」ではありません。安全な自宅を生活場所にしながら、避難所や地域の支援拠点、行政、福祉関係者とつながり続ける避難方法です。

誰に向き、誰は慎重に判断すべきか

在宅避難に向くのは、住宅と周辺が安全で、必要な物資と連絡手段を確保できる世帯です。 戸建てかマンションかだけでは決まりません。

向いている可能性が高いのは、次の条件を満たす家庭です。

  • 建物に居住を妨げる被害がなく、周辺の火災・浸水・土砂災害リスクも低い
  • 家具の転倒対策が済み、安全に過ごせる部屋がある
  • 家族に合った水、食料、携帯トイレ、薬を備えている
  • 停電や断水時の生活方法を決めている
  • 地域の支援拠点と連絡方法を把握している

反対に、住宅に危険がある人、津波や土砂災害が迫る地域の人は、在宅避難を選ぶ段階ではありません。まず命を守る場所へ移動します。

また、介助や医療、電源が欠かせない人は「自宅の方が落ち着く」という利点だけで決めないことが重要です。停電が何時間続いたら移動するか、誰に連絡するか、どこで必要な支援を受けるかまで具体化しておく必要があります。

自助だけに寄せない仕組みが今後の焦点

備蓄を呼びかけるだけでは、在宅避難者の孤立は防げません。

東京都の2026年版指針は、区市町村に対し、在宅避難者への物資提供、情報発信、通信設備、暑さ・寒さをしのぐ場所などを支援拠点で確保する考え方を示しています。行政だけで全てを担うことは難しく、町会・自治会、マンション管理組合、社会福祉協議会、NPO、民間事業者との事前連携も求めています。

ここには地域差が残ります。管理組合が機能している大規模マンションと、近所付き合いが薄い集合住宅では、安否確認や物資運搬の力が違います。高層階の住民は、備蓄があってもエレベーター停止後に追加の水を運べない場合があります。

今後見るべきなのは、キャンペーンの認知度だけではありません。

  • 市区町村が在宅避難者の申告方法を明示しているか
  • 支援拠点の場所と役割が住民に公開されているか
  • マンション内で設備点検と物資運搬の訓練が行われるか
  • 高齢者や障害者など、声を上げにくい人を訪問支援できるか

まずは今週、自宅のハザードマップ、携帯トイレの数、常用薬の残量、地域の支援窓口の4点を確認してください。そのうち一つでも答えられない項目があれば、そこが在宅避難計画の最初の穴です。

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