年間1000台を削減、北海道の共同配送は物流危機をどこまで救えるか
共同配送は、複数の荷物を同じ車両や拠点に集約し、少ないトラックで届ける仕組みだ。北海道では、PALTAC、サッポロドラッグストアー、佐川急便の3社が配送網を組み替え、配送車両を年間1000台、走行時間を年間1万2000時間削減した。
ただし、荷物を一緒に積むだけでは成功しない。今回の成果を支えたのは、店舗が納品時間や受け入れる車両の大きさを見直し、卸が拠点を開放し、物流会社が地域別の中継網をつくったことだ。
この記事で分かることは、次の4点だ。
- 共同配送が従来の配送とどう違うのか
- 北海道の3社が長距離運行をどう減らしたのか
- 人手不足の緩和に効く理由と、共同化できない荷物
- 消費者の生活に表れる変化と今後の注目点
共同配送とは「会社ごとのトラック」を組み替えること
共同配送の核心は、荷主や店舗ごとに分かれていた輸送を、車両・経路・拠点のいずれかで束ねることにある。
従来型の配送では、メーカーや卸売会社がそれぞれトラックを手配し、同じ地域にある店舗へ別々に商品を運ぶことがある。各社にとっては管理しやすい一方、荷物が少ない日でも車両を走らせるため、荷台に空きが生じやすい。
共同配送では、たとえば次のように運び方を変える。
- 複数企業の商品を物流拠点でまとめ、同じ方面へ運ぶ
- 幹線区間を大型車に集約し、地域のデポから各店舗へ分配する
- 別々だった集荷ルートを一本化する
- 往路と復路の荷物を組み合わせ、空車で戻る距離を減らす
共同配送といっても、競合企業の商品を必ず同じトラックに載せるわけではない。北海道の事例では、卸・小売・物流の3社が役割を分担し、従来は複数事業者が担っていた配送を統合した。佐川急便の営業所などを中継デポに使い、長距離の直送を減らした点が中心だ。
つまり、これは単なる「相乗り」ではない。地域全体の輸送経路を引き直す取り組みである。
北海道で何が変わったのか
北海道の3社は、北広島市の物流拠点から各店舗へ直接向かう便を減らし、道内5地域のデポを経由する形へ切り替えた。
片道約150キロ、最長8時間の往復が続いていた
サッポロドラッグストアーの道内192店舗のうち、160店舗はPALTACの物流拠点から直接商品を受け取っていた。旭川、函館、帯広などへの運行は片道約150キロに及び、往復には最長8時間かかっていた。
ドライバーの稼働時間は8~15時間。荷物の量にかかわらず遠方まで車両を走らせるため、積載効率が上がらず、燃料費や人件費の上昇も重なっていた。
そこで3社は、次のように配送網を組み替えた。
- PALTACの拠点から地域別の荷物を大型車でまとめて運ぶ
- 函館、旭川、帯広、釧路、北見の営業所などを中継デポにする
- デポで店舗別に仕分け、中型・大型車で各店へ届ける
- 釧路・北見方面では、途中でトレーラーや運転者を交代する「スイッチ運行」を採り入れる
これにより、物流拠点から直送する店舗は160店から111店へ減った。遠方まで各便が走り切るのではなく、幹線輸送と地域配送を分けたのである。
3社がそれぞれ従来の条件を変えた
配送ルートを描き直しても、荷主や店舗の運用が従来のままでは車両をまとめられない。今回の重要点は、運送会社だけに効率化を任せなかったことだ。
- PALTAC:物流拠点に運送事業者用の駐車場所、点呼・待機スペース、事務所を確保。積み込み時間の制限も撤廃した
- サッポロドラッグストアー:中型車から大型車への変更に合わせ、店舗の納品条件と納品時間を調整した
- 佐川急便:既存営業所をデポとして使い、幹線と店舗配送を設計。動態管理端末で運行状況を見えるようにした
店舗にとって納品時間の変更は小さな話ではない。品出しの担当者、バックヤードの空き、来店客が多い時間帯との兼ね合いまで変わる。そこを荷受け側が調整したため、大きな車両で荷物をまとめて運べた。
ここがポイント: 共同配送で最初に共有すべきものは荷台ではなく、納品時刻、車両条件、荷物量などの運用情報だ。店舗や荷主が条件を変えなければ、トラックだけをまとめることはできない。
年間1000台削減が示した実力
共同配送はドライバーそのものを増やさないが、同じ人数が長距離を走る回数と時間を減らせる。
3社が公表した導入効果は具体的だ。
- 配送車両台数:年間1000台削減、13%減
- 走行時間:年間1万2000時間削減、23%減
- CO2排出量:年間404トン削減、19%減
- ドライバーの運行時間:最大15時間超から最大10時間以内へ短縮
長時間運行を短くできれば、ドライバーは法令に沿った休息を取りやすくなる。突発的な欠員や天候の乱れが起きた際も、地域デポを基点に運行を組み直しやすい。
また、動態管理によって車両がどこにいるかを把握できれば、遅延を経験だけで処理せず、便ごとの走行時間や待機時間を比較できる。共同配送の効果を一度出して終わらせず、積載率や経路を継続的に修正する土台になる。
この取り組みは2025年12月、令和7年度物流パートナーシップ優良事業者表彰の国土交通大臣表彰を受けた。国土交通省の会議資料では、北海道・東北のモデルを他の輸送困難地域へ展開し、日用品だけでなく、食品や飲料など温度管理が必要な貨物の共同化も進める方向が示されている。
なぜ北海道では効果が大きいのか
北海道では、都市間の距離と配送密度の低さが同時に効いてくる。荷物をまとめる余地が大きい一方、従来どおりの小口直送を続ける負担も重い。
距離が長いほど空きスペースの代償が大きい
短距離なら、荷台に多少の空きがあっても走行時間への影響は限られる。片道150キロ級の便では、空いた荷台を運ぶためにも長時間の運転、燃料、車両が必要になる。
幹線部分を大型車に集約すれば、1台当たりの積載量を増やせる。地域デポから先は、周辺店舗をまとめたルートで配る。長距離区間と細かな店舗配送を別々に最適化できるのが強みだ。
既存の営業所を使えば初期負担を抑えられる
共同配送には、荷物を集めて仕分ける場所が欠かせない。しかし、新しい物流センターを各地域に建てれば時間も費用もかかる。
今回の事例では、佐川急便がすでに持つ営業所などを中継デポにした。建物だけでなく、地域の道路事情や配送先を知る人員、運行管理の機能も活用できる。これは、物量の少ない地方で共同配送を広げるうえで大きな意味を持つ。
それでも「荷物をまとめれば解決」とは限らない
共同配送は有力な手段だが、すべての荷物や地域に同じ形で適用できるわけではない。
荷物ごとに扱い方が違う
日用品と冷凍食品では必要な設備が異なる。医薬品、危険物、割れ物、生鮮食品には、それぞれ保管温度、積み方、納品期限などの条件がある。
共同化しやすいのは、配送先や時間帯が近く、荷姿や温度帯をそろえやすい貨物だ。冷蔵・冷凍品まで広げるには、デポの冷蔵設備や温度記録、仕分け作業の追加が必要になる。
情報を共有する難しさがある
他社と荷物をまとめるには、出荷量、配送先、希望時間、車両の空きといったデータを扱う。ところが、企業ごとに商品コードや伝票、システムの形式が違えば、担当者が手作業で変換することになる。
国土交通省も、物流データの共通ルールが共同輸配送や共同保管の前提になると説明している。企業秘密や顧客情報を守りながら、配送に必要な範囲をどこまで共有するかも決めなければならない。
効率化の負担が偏る可能性もある
運送会社の走行時間が減っても、デポの仕分け作業や店舗の荷受け負担が増えれば、サプライチェーン全体では改善したとはいえない。納品時間の変更によって、店舗スタッフの早朝・夜間勤務が増えるような設計も避ける必要がある。
見るべきなのはトラックの台数だけではない。
- ドライバーの拘束・待機時間
- デポでの仕分け時間と人員
- 店舗での荷受け、検品、品出し時間
- 誤配送や商品の破損
- 災害や大雪で一つのデポが止まった場合の代替経路
- 共同化後の運賃と、各社の費用負担
これらを一緒に測らなければ、作業を別の現場へ移しただけになりかねない。
消費者の生活にはどう表れるのか
共同配送の成果は、配達員の姿よりも、店頭の商品と価格、地域店舗の存続に表れやすい。
消費者が共同配送の仕組みを直接選ぶ場面はほとんどない。それでも、輸送力が不足すれば、遠隔地では配送回数の減少、納品までの日数の延長、物流費の上昇が起こり得る。ドラッグストアで扱う医薬品、化粧品、洗剤、紙製品などを安定して届け続けるには、少ない車両で地域をカバーする仕組みが必要だ。
国は、対策を講じなければ2030年度に輸送力が34%不足する可能性があるとしてきた。2024年以降に懸念された全国的な物流の深刻な停滞は起きていないものの、人手不足が解消したわけではない。
共同配送が生活者にもたらす価値は、「翌日配送をさらに速くすること」より、人口の少ない地域でも必要な商品が届く状態を維持することにある。
公開情報で目立つ受け止めも、奇抜な新技術への期待というより、年間1000台削減などの実務的な成果への評価だ。一方で、消費者から見えにくい仕組みだからこそ、配送頻度や価格、品ぞろえが共同化後にどう変わったかも継続して示す必要がある。
今後は「別会社の荷物」まで束ねられるか
次の分岐点は、3社で築いた網を、異なる荷主や温度帯の貨物にも開けるかどうかだ。
成功すれば地方の共通インフラになる
地域内の複数の小売業者やメーカーが同じデポを使えば、物量が少ない地域でも一定の積載率を確保しやすい。日用品、菓子、飲料など、条件の近い商品から共同化を広げる道がある。
この場合、特定企業の配送網ではなく、地域の事業者が使う共同インフラに近づく。新たに参画する企業が増えるほど、便数や配送エリアを維持しやすくなる可能性がある。
条件が合わなければ個別配送は残る
一方、競合企業間では納品量や販売先の情報を共有しにくい。納品時刻を動かせない店舗、特殊な設備を必要とする商品、緊急性の高い荷物もある。
そのため、全面的な一本化を目指すより、次の順で広げる方が現実的だ。
- 同じ方面へ向かう幹線区間だけを共同化する
- 既存デポを共同利用する
- 荷姿や伝票、データ形式をそろえる
- 条件の近い商品から混載する
- 冷蔵・冷凍品は設備と責任分担を整えてから加える
北海道の事例が示したのは、共同配送が万能だということではない。運送会社だけでなく、荷主と店舗も従来の条件を変えれば、長距離運行を現実に減らせるということだ。
今後見るべき数字は、参加企業数の多さではない。最大運行時間が10時間以内に収まり続けるか、店舗の負担を増やさず、対象地域と商品を広げられるか。そこまで確認できて初めて、年間1000台削減のモデルが北海道の日常を支える共通網へ育ったと判断できる。
