MENU

EUの包装規則が本格適用、食品容器のPFAS規制と企業の新負担|2026年8月13日版

EUの店舗で食品包装を確認する担当者と多様な容器。

EUの包装規則が本格適用、食品容器のPFAS規制と企業の新負担|2026年8月13日版

EUで2026年8月12日、包装・包装廃棄物規則(PPWR)の一般適用が始まりました。最大の変化は、包装を単なる「商品の外側」ではなく、製品と同じように適合性を確認し、根拠を残す対象にしたことです。

食品に触れる包装にはPFASの濃度上限も導入されました。EUへ商品を輸出する日本企業にとっても、箱や袋、ラベル、緩衝材の仕様を取引先任せにできない制度です。

  • PPWRは原則として、素材や原産地を問わずEU市場の包装を対象とする
  • 食品接触包装にはPFASの濃度上限が適用される
  • 製造者には適合性評価やEU適合宣言などの書類管理が求められる
  • 統一ラベルや主要な再生材・再使用目標の多くは、2028年以降に段階導入される
目次

何が8月12日から変わったのか

PPWRは、包装の設計から廃棄までを一つの制度で扱います。従来の指令と違い、EU加盟国で直接適用される「規則」としたことも重要です。

欧州委員会によると、対象は紙、プラスチック、ガラス、金属など、EU市場に出る原則すべての包装です。商品の容器だけでなく、輸送箱や通販用の包装も無関係ではありません。

包装にも適合性を証明する書類が必要

製造者は、適用される要件を満たしているか評価し、技術文書を整えたうえでEU適合宣言を作成します。包装の材料や設計を変更した場合には、根拠資料も見直さなければなりません。

現場では、次の情報を誰が保有しているかが問題になります。

  • 材料の組成と供給元
  • 包装を必要最小限にしたことの根拠
  • 有害物質に関する試験結果や証明書
  • 再使用できる包装の場合、その運用方法と耐久性
  • 包装の型式、ロット、製造者などを追跡できる情報

包装会社だけでは書類が完成しない場合があります。 商品メーカー、輸入者、物流会社が持つ情報をつなぎ、責任の所在を明確にする必要があるためです。

食品包装ではPFASの濃度上限が始まる

生活者に最も近い変更は、食品と接触する包装へのPFAS規制です。規則は2026年8月12日以降に市場へ出される食品接触包装について、個別の非高分子PFAS、非高分子PFASの合計、総フッ素にそれぞれ上限を設けています。

対象になり得るのは、耐油・耐水性能を持たせた紙容器や包装材などです。事業者には、意図的にPFASを使っていないという確認だけでなく、材料証明や試験によって基準への適合を説明できる体制が求められます。

ここがポイント: PPWRは「包装ごみを減らす将来目標」だけの制度ではありません。2026年から、包装の材料を確認し、適合性を文書で説明する仕事がサプライチェーンに加わりました。

すべての規制が一斉に始まったわけではない

PPWRには長い移行日程があります。8月12日を境に、すべての容器を即座に統一ラベルへ切り替える制度ではありません。

主な時期を分けると、次のようになります。

  • 2026年8月12日: 規則の一般適用、食品接触包装のPFAS上限、適合性評価など
  • 2028年以降: 材料構成を示すEU共通ラベルを段階的に導入
  • 2029年: 一定の使い捨て飲料容器について、90%の分別回収を目指す仕組み
  • 2030年以降: 包装廃棄物の削減、再生プラスチック含有率、再使用、過剰包装の抑制などの主要目標を順次適用

EUは、1人当たりの包装廃棄物を2018年比で2030年までに5%、2035年までに10%、2040年までに15%減らす目標を掲げています。将来の数値目標に対応するには、商品発売の直前ではなく、素材の選定や容器設計の段階から見直す必要があります。

欧州委員会も、規則の解釈をめぐって企業や加盟国から多数の質問が寄せられたとして、2026年に実施指針を公表しました。適用開始日と個別要件の発効日は同じとは限らないため、対象条文ごとの確認が欠かせません。

日本企業にも関係する理由

EU域外で作られた商品でも、EU市場へ出す包装にはPPWRが及びます。食品、化粧品、雑貨、電子機器だけでなく、越境ECで小口発送する事業者も確認が必要です。

「商品は適合済み」でも包装が盲点になる

製品本体についてEU規制へ対応していても、次のような包装資材が別の問題になる可能性があります。

  • 日本国内向けと共通使用している化粧箱
  • 通販発送時に追加する袋や段ボール箱
  • 現地の物流拠点で使う詰め替え・再包装資材
  • 輸送中だけ商品を保護する緩衝材
  • 食品に直接触れる紙、フィルム、コーティング材

まず必要なのは、EU向け商品に使う包装を部品単位で洗い出すことです。そのうえで製造者、輸入者、販売者のどこが適合宣言や技術資料を管理するのか、契約で確認する必要があります。

中小事業者ほど供給元への確認が重要

大企業は自社で試験や法務確認を行えますが、小規模な輸出企業やEC販売者は包装資材メーカーの証明に頼る場面が増えます。

ただし、「環境配慮型」「PFASフリー」といった商品説明だけで、規則上必要な根拠がそろうとは限りません。対象材料、試験方法、ロットの追跡可能性、証明書の更新条件まで確認することが実務上の焦点になります。

規制の狙いと残る難題

EUが規則を全面的に組み直した背景には、包装廃棄物が増え続け、加盟国ごとの制度差も大きかったことがあります。共通ルールによって廃棄物を減らしながら、国境を越えて商品を売る企業の条件もそろえる狙いです。

一方、制度は詳細な委任法令や実施法令によって今後も具体化されます。企業側には、現時点の対応と数年先の容器設計を同時に進める難しさがあります。

特に注目すべき点は次の3つです。

  1. 各国での執行差
    EU共通規則でも、監督当局の運用や拡大生産者責任制度の手続きには各国差が残ります。

  2. 証明書の受け渡し
    原料メーカーからブランド、輸入者まで、誰がどのデータを保管するかを決めなければなりません。

  3. 2028~2030年への設計変更
    共通ラベル、空きスペースの制限、再生材や再使用の要件に合わせ、印刷版や調達契約をいつ切り替えるかが課題になります。

8月12日の一般適用はゴールではなく、包装を「捨てる直前に考えるもの」から「商品設計の最初に確認するもの」へ変える起点です。EU向けに商品を扱う企業は、まず包装資材の一覧、供給元の証明、責任分担の3点を確認する必要があります。

参照リンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次