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EUの店頭とネット通販に「2年保証」の掲示義務 9月27日開始の統一ラベルが変えるもの|2026年9月18日版

EUの小売店のレジ横に掲示物が貼られた店内イメージ

EUの店頭とネット通販に「2年保証」の掲示義務 9月27日開始の統一ラベルが変えるもの|2026年9月18日版

ベルリンの家電店のレジ横にも、パリのアパレル店の壁にも、そしてドイツの小さなネットショップの商品ページにも、来週から同じデザインの掲示が並ぶ。2026年9月27日、EU全域で「法定保証(Gewährleistung/legal guarantee)は最低2年ある」ことを消費者に知らせる統一表示が義務になるからだ。

新しい権利が生まれるわけではない。EUでは以前から、引き渡し時点で欠陥があった商品について最低2年間、無償修理・交換、それが無理なら減額・返金を求められる。変わるのは「知らせ方」を国ごとの裁量に任せるのをやめ、EUが定めた文面とデザインで必ず見せろ、と決めた点だ。

同じ9月27日には、「エコ」「カーボンニュートラル」といった環境アピールの禁止リストも動き出す。保証の掲示と環境広告の規制、この2つは別の話に見えて、出どころは同じ1本の指令である。

目次

この記事の要点

  • 9月27日から、EU域内の消費者に物を売る事業者は、法定保証2年を説明する統一掲示を店頭とオンラインで表示する義務を負う(根拠は指令 (EU) 2024/825 と実施規則 (EU) 2025/1960)
  • 移行期間・売上規模による除外は設けられていない。Amazon や eBay などのマーケットプレイス出品者も対象
  • 「GARAN」ラベルは別物で、2年を超える無償・製品全体のメーカー保証がある場合のみ使える任意の表示
  • 同日から、根拠のない環境訴求や自社製「エコ認証」ラベルは無条件で禁止される行為リストに入る

何が義務になるのか

新しい仕組みは2階建てだ。1階が全事業者に課される掲示、2階が条件を満たした製品だけが名乗れるラベルになる。

1. 法定保証の統一掲示(義務)

EU域内の消費者に商品を売るすべての売り手が対象になる。実店舗なら店の壁やレジ周りなど目に入る場所に、ECサイトならトップページや商品ページ、決済画面など購入を決める前に読める位置に置く必要がある。

掲示には最低2年という期間、国によって保証期間が上乗せされていること(スペインは新品で最低3年)、売り手が責任を負う条件、紛争解決の窓口が書かれ、国別の詳細へ飛ぶQRコードが添えられる。文面とデザインは変更できない。印刷物はA4以上、オンラインはカラー表示、という細かな仕様まで規則で固定されている。

欧州消費者センター(EVZ)は、この掲示の狙いを「保証(Garantie)と法定保証(Gewährleistung)の混同を解く」ことだと説明する。担当法務からは、越境で買い物をする人ほど恩恵が大きいとのコメントが出ている。逆に言えば、EU域内で国境をまたいで買った商品が壊れたとき、誰にどこまで請求できるのか分からない、という状態がそれだけ長く放置されていたということでもある。

なお、食料品を買ってその場で持ち帰るような日常の即時取引は、掲示の対象から外れるとEVZは整理している。

2. GARANラベル(任意)

GARANは、メーカーが自主的に付ける「耐久性の商業保証」を示す共通ラベルだ。名乗るには条件が厳しい。

  • 保証期間が2年を超えること
  • 製品の一部ではなく製品全体をカバーすること
  • 消費者に追加費用を求めないこと

部分保証にGARANを貼ることは認められない。全体が守られていると誤解させるからだ。ラベル上で編集できるのは年数、ブランド、対象モデルだけで、デザインそのものは触れない。

ここがポイント: 統一掲示は「全員が義務」、GARANは「条件を満たした製品だけの任意表示」。この2つを混ぜると、貼ってはいけないラベルを貼る事故が起きる。

もう一つの締め切り:環境訴求の禁止リスト

同じ指令のもう半分が、広告や包装での環境アピールに切り込む。不公正取引方法指令の「ブラックリスト」に追加される形で、消費者に実害が出たと証明しなくても違法と扱われる行為が並ぶ。

主な禁止対象は次のとおり。

  • 第三者認証や公的な裏づけのない自社製サステナビリティラベル
  • 「エコフレンドリー」「グリーン」といった、実績で示せない包括的な環境訴求
  • 包装だけがリサイクル素材なのに、製品全体がそうであるかのように見せる表示
  • バリューチェーン外のカーボンオフセットを根拠にした「カーボンニュートラル」主張
  • 法律で義務づけられている性能を、独自の売りのように見せる表示
  • 修理できない製品を修理可能と見せる、消耗品の不要な買い替えを促す、といった表示

将来の目標を掲げる訴求も、検証可能な実施計画と測定可能な目標、独立した第三者検証がなければ通らない。

制裁は加盟国が定めるが、EUは下限として「当該加盟国での年間売上高の4%以上、売上が把握できない場合は200万ユーロ以上」の上限額を用意するよう求めている。イタリアはこれを先取りする形で法令30/2026を施行済みで、競争当局AGCMが最大1000万ユーロまたは売上高4%の制裁金を科せる建て付けになっている。

誰が一番慌てているか

制度の設計者が想定したのは消費者の利便だが、締め切り直前に動いているのは売る側だ。

中小のネットショップは、カタログ全体・全言語版・全販売チャネルに正しい表示を差し込む作業を、猶予期間なしで終わらせる必要がある。ドイツでは、表示漏れや誤ったラベルが競争法上の警告書(Abmahnung)の格好の標的になるとして、事業者向けの注意喚起が相次いでいる。ネット通販の警告理由として表示不備は以前から上位の常連で、新しい義務はそこに一項目増やす形になる。

実店舗にとっては掲示物の印刷・設置という支出が増える。金額としては大きくないが、景気の弱い時期に全店舗分をそろえる負担は無視できない。

製造側はGARANを使うかどうかの判断を迫られる。2年超・全体・無償という条件を満たすなら差別化になるが、保証コストは自社持ちだ。

そしてEU域外の事業者も例外ではない。EUの消費者に向けて売っている以上、米国・英国の事業者と同じく、欧州向けのECサイトやマーケットプレイス出品を持つ日本の事業者にも適用される。自社サイトで欧州発送を受けている、Amazon.de や Etsy に出品している、越境ECのカートシステムを使っている——そのどれかに当てはまるなら、確認すべきは3点に絞られる。商品ページのどこに掲示を出すか、使っているカート/プラグインが対応済みか、そして製品説明に残っている「環境にやさしい」の一言が9月27日以降も持ちこたえるか、だ。

施行後に見えてくる論点

規則の文面が決まっても、運用は当局の裁量に委ねられる部分が残る。

  • 既存在庫の扱い:正式な猶予期間はない。ただし欧州委員会のQ&Aや消費者保護協力ネットワークは、9月27日より前に製造・発注された在庫について、段階的な執行や暫定措置(シールでの訂正、オンライン表記の修正、店頭での補足掲示)を現実的な選択肢として認めている。実際にどこまで許されるかは加盟国ごとの判断になる。
  • 執行の温度差:イタリアのAGCMのように先行して動く当局と、体制が整わない国が混在すれば、同じEU域内でも「掲示していない店が普通に営業している国」が出てくる可能性がある。
  • 私人による執行:ドイツのように競争法上の警告書が発達した国では、当局より先に同業者や団体からの請求が実質的な取り締まりになりやすい。

今後の注目点

  1. 10月以降の摘発第1号がどの国から出るか。イタリアのAGCMが先行するのか、ドイツの警告書が先に動くのかで、他の加盟国の執行姿勢が決まる。
  2. GARANが実際に普及するか。コスト負担が重ければ誰も名乗らず、耐久性で選べるという制度の建前だけが残る。家電・アパレルなど耐久性が購買理由になりやすい分野の対応が試金石になる。
  3. 環境訴求の「言い換え」が起きるか。「カーボンニュートラル」が使えなくなった企業が、規制の網の外にある別の言葉へ逃げるのか、訴求そのものをやめるのか。9月27日以降の商品パッケージがその答えになる。

欧州で売っている日本の事業者にとって、締め切りはもう来週だ。掲示の画像を貼るだけなら1日で終わる作業でも、商品説明文の総点検はそうはいかない。

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