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英国で学校給食の対象を拡大――「年収7400ポンド以下」の壁を外した制度変更|2026年9月4日版

英国の学校食堂で子どもたちが給食を受け取る様子。

英国で学校給食の対象を拡大――「年収7400ポンド以下」の壁を外した制度変更|2026年9月4日版

英国・イングランドで、ユニバーサル・クレジットを受給する世帯の子ども全員を対象とした学校給食制度が、2026年9月の新学期から始まりました。従来の年収基準を超える家庭にも対象を広げる変更です。

ただし、給食を受けられることと、休暇中の食事支援や学校への追加予算の対象になることは同じではありません。制度の内側には、新たに二つの資格区分が設けられました。

  • 従来は原則として、世帯の年間所得が7,400ポンド以下であることが条件だった
  • 新制度では、所得額にかかわらずユニバーサル・クレジット受給世帯の子どもが給食の対象になる
  • 英教育省は、新たに50万人超が資格を得ると推計している
  • 一方、休暇中の食事支援などは、引き続き低所得層向けの区分に連動する
目次

何が変わったのか

今回の改革で撤廃されたのは、給食資格を分けていた厳しい所得基準です。

従来、ユニバーサル・クレジットを受給していても、世帯の年間所得が7,400ポンドを超えると、原則として所得連動型の無料給食を新規に利用できませんでした。働く時間を増やして所得がわずかに上がった家庭が、給食費の負担増に直面する境目でもありました。

英教育省の新しい運用指針では、2026年度から次の二つに資格を分けています。

「対象給食」と「拡大給食」の違い

  • 対象給食(Targeted FSM)
    ユニバーサル・クレジット受給世帯のうち、年間所得が7,400ポンド以下の子どもなどが該当します。無料給食に加え、学校への追加予算や一部の関連支援にも結び付きます。

  • 拡大給食(Expanded FSM)
    ユニバーサル・クレジットを受給し、年間所得が7,400ポンドを超える世帯の子どもが該当します。受けられるのは基本的に給食です。

つまり、食事の資格は広がりました。しかし、教育格差対策に使われる学校予算まで一律に広がったわけではありません。

ここがポイント: 新制度は「給食を食べられる子ども」を増やす一方、追加の教育・休暇支援では従来の所得基準を残しています。

50万人超が新たに対象、利用見込みは約410万人

英教育省は、資格拡大によって50万人を超える子どもが新たに無料給食を申請できると見積もっています。

同省が2026年5月に公表した統計推計では、2026年度に給食を利用する子どもは約410万人。2023年度の実績と比べると約72万人多くなる見通しです。

「新たに資格を得る人数」と「過去の利用実績からの増加幅」が異なるのは、比較する年度や推計方法が違うためです。いずれも確定した利用者数ではなく、実際の申請状況によって変わります。

政府は給食拡大に加え、無料の朝食クラブや制服費を抑える措置も進めています。9月1日の政府発表によると、学校給食の栄養基準も同月末までに改定される予定です。

給食費を軽くするだけでなく、何を提供するかも次の焦点になります。

家庭は自動的に利用できるとは限らない

資格が広がっても、対象世帯が何もしなくてよいとは限りません。

政府の申請案内は、自治体のウェブサイトを通じて資格を確認するよう促しています。学校または自治体による確認を受けて、初めて給食資格が確定します。

学校と自治体は、保護者・申請者の次の情報を使って受給状況を照合します。

  • 姓
  • 生年月日
  • 国民保険番号

資格確認は原則として毎年度行われ、2026年度については秋学期の開始前から10月の学校統計調査までが重要な期間になります。制度を用意しても、家庭が変更を知らなければ利用にはつながりません。

新たに対象となるのは、これまで「所得が基準を少し超えている」と考えて申請しなかった家庭です。ユニバーサル・クレジットを受けている保護者は、以前に対象外だった場合でも、自治体や学校の案内を確認する必要があります。

見落とせない「二層化」

制度変更で残る最大の論点は、無料給食と関連支援の対象が分かれたことです。

低所得層向けの「対象給食」に該当する子どもは、学校休暇中の活動・食事プログラムや、条件に応じた通学支援にもつながります。所得基準を超えて「拡大給食」の対象になった子どもは、原則としてこれらを利用できません。

児童支援団体The Children’s Societyは、休暇中の食事支援に関する報告で、約130万人が休暇中の支援から外れる可能性があると推計しています。給食の拡大が、長期休暇中の食費問題をそのまま解決するわけではないという指摘です。

この区分は、学校側にも影響します。児童一人ひとりの資格がどちらに当たるかによって、学校が受け取る格差対策予算の算定が変わるからです。学校統計では、両者を分けて正確に記録しなければなりません。

日本から見ると「無償化の範囲」が重要になる

日本でも学校給食費を無償化する自治体が増え、国による支援のあり方が議論されてきました。英国の変更から読み取れるのは、無償化の対象人数だけを見ても制度全体は分からないという点です。

確認すべきなのは、少なくとも次の三つです。

  • 給食費だけを免除するのか、休暇中や朝食の支援まで含めるのか
  • 対象を自動的に把握できるのか、保護者の申請が必要なのか
  • 給食資格と、学校への追加予算を連動させるのか

英国では食事への入口を広げながら、追加支援には所得基準を残しました。限られた予算を困窮度の高い層へ重点配分できる半面、同じ無料給食を利用する子どもの間に支援内容の差が生まれます。

今後の注目点

制度の成否は、対象者数の発表だけでは判断できません。次に見るべき数字と運用は明確です。

  • 新たに資格を得た家庭のうち、実際に何割が申請・利用するか
  • 給食の量と栄養基準が、対象拡大後も維持されるか
  • 休暇中の食事支援から外れる子どもへの対策が追加されるか
  • 学校が二つの資格区分を正しく記録し、必要な予算を確保できるか

まず家庭にとって現実的な一歩は、過去の判定を前提にせず、自治体の申請ページで資格を確認することです。そして政策評価では、「無料給食の利用者が何人増えたか」に加え、長期休暇を含めて食事を確保できたかが次の重要な指標になります。

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