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働く高齢者943万人、就業者の7人に1人へ 高齢化率29.6%が映す労働市場の変化|2026年9月21日版

店舗で働く高齢の従業員と若い同僚の姿を写したイメージ画像

働く高齢者943万人、就業者の7人に1人へ 高齢化率29.6%が映す労働市場の変化

総務省が敬老の日(9月21日)を前に公表した人口推計で、65歳以上の人口は3624万人、総人口の29.6%となり、割合として過去最高を更新した。前年から2万人増え、増加は2年ぶりだ。

ただ、今年の数字で目を引くのは総数ではない。同時に示された就業データのほうだ。2025年に働いていた65歳以上は943万人で22年連続の増加、1968年以降で最多となった。就業者全体に占める割合は13.8%。働く人のおよそ7人に1人が65歳以上という状態が、すでに日本の職場の標準になっている。

つまりこの統計は「高齢者が増えた」という話にとどまらない。人手不足の現場が高齢層をどこまで組み込んできたか、その到達点を示す数字でもある。

目次

まず押さえる4点

  • 65歳以上は3624万人、割合29.6%(前年比0.2ポイント増)で過去最高
  • 働く高齢者は943万人。高齢者の26.0%、つまり4人に1人が就業している
  • 65歳以上の雇用者のうち非正規は76.1%。増えたのは主にパート・アルバイト・嘱託の職
  • 2026年4月には在職老齢年金の基準額が51万円から65万円へ上がり、「働くと年金が減る」線が後退した

何が公表されたのか

総務省統計局が9月15日時点で推計した高齢者人口と、労働力調査にもとづく2025年の就業状況が柱だ。

男女別では男性1571万人(男性人口の26.3%)、女性2054万人(女性人口の32.6%)。女性は3人に1人近くが65歳以上という計算になる。将来推計では、第2次ベビーブーム世代が65歳を迎える2040年に34.8%まで上がる見通しが示されている。

国際比較でも日本の位置は変わらない。人口4000万人以上の39か国のうち高齢化率は1位で、2位イタリアの25.6%、3位ドイツの24.2%を4ポイント以上引き離している。

年齢が上がるほど落ちる就業率

働いている割合は、年代でくっきり分かれる。

年齢層就業率
65〜69歳54.5%
70〜74歳36.2%
75歳以上12.6%

60代後半は半数超が働き、70代前半でも3人に1人以上。「定年でいったん退職し、そこから数年は働く」という流れが定着している一方、75歳を境に一気に落ちる。

943万人の中身を見ると、質は別の話になる

数が増えた事実と、その働き方が安定しているかどうかは分けて読む必要がある。

役員を除く65歳以上の雇用者586万人のうち、正規の職員・従業員は140万人。残る446万人、割合にして76.1%が非正規だ。パート、アルバイト、嘱託、契約社員が高齢就業の主流であり、賃金も勤務日数も現役期より下がる前提で設計されている。

働く場所にも偏りがある。

  • 卸売業・小売業:131万人
  • 医療・福祉:122万人
  • 農業・林業:就業者に占める65歳以上の割合が50.6%と、産業の半分を高齢層が担う

スーパーのレジや品出し、介護施設の送迎や見守り、そして農林業。人手が足りず、短時間勤務を組みやすい分野に集中している。裏を返せば、この943万人が抜けた場合に真っ先に回らなくなるのも同じ現場だ。

ここがポイント: 高齢就業の拡大は「元気な高齢者が増えたから」だけでは説明できない。短時間・非正規の枠を大量に用意した産業側の事情と、年金だけでは足りない家計の事情が重なった結果として943万人がある。

なぜ今この数字が重いのか

制度の側が、ちょうど高齢者の就労を後押しする方向に動いたばかりだからだ。

2026年4月に変わった年金の線引き

在職老齢年金は、給与と厚生年金の合計が一定額を超えると年金の一部が止まる仕組みだ。2025年成立の年金制度改正法でこの基準(支給停止調整額)が引き上げられ、2026年度は前年度の51万円から65万円になった。

影響を受けるのは、働きながら厚生年金を受け取っている人のうち、報酬と年金の合計が月51万〜65万円の帯にいた層だ。これまでは超過分の半分が止まっていたが、その線が上がったことで、勤務日数を意図的に抑えていた人が「もう一日出る」判断をしやすくなる。逆に言えば、この帯より下の収入で働く多数派の待遇が改善するわけではない。

企業側の義務も一段進んでいる

高年齢者雇用安定法では、2025年4月に経過措置が終わり、希望者全員を65歳まで雇用する措置が完全義務化された。定年延長・継続雇用・定年廃止のいずれかを選ぶ形で、実務上は再雇用による継続雇用が中心だ。70歳までの就業機会確保は努力義務にとどまる。

この「65歳まで義務、70歳まで努力義務」という設計が、就業率のグラフ(65〜69歳で54.5%、70〜74歳で36.2%)とほぼ重なっている点は見逃せない。制度が線を引いた場所で、働く人の数も落ちている。

生活の場面では何が起きるか

  • 60代で再雇用を迎える人:賃金水準と社会保険の扱いが変わる。週の勤務日数を決める前に、年金の支給停止ラインが65万円へ上がった影響を自分の報酬で試算しておきたい
  • 70代で働き続けたい人:法的な後ろ盾は努力義務まで。募集が短時間・非正規に偏るため、職種の選択肢は狭い
  • 介護・小売の現場:シフトの相当部分を高齢スタッフが支える構造が続く。体調や通勤負荷を前提にした人員計画が要る
  • 家族の側:親世代が働いていること自体は珍しくない。収入が増えれば年金や医療・介護の自己負担判定に関わる場合があり、世帯単位で確認する場面が出てくる

次に見るべき論点

高齢化率29.6%という見出しの数字より、その先の変化のほうが実務に効いてくる。

  • 943万人の内訳が、非正規中心から正規・専門職へ動くかどうか。76.1%という比率が下がれば、高齢就業の質が変わったサインになる
  • 2026年4月の在職老齢年金改正が、実際に就業時間の増加につながるか。次回以降の労働力調査で70代前半の就業率が動くかが試金石
  • 70歳までの就業機会確保が努力義務のまま据え置かれるのか、義務化の議論に進むのか
  • 2040年に34.8%へ向かう過程で、医療・介護の担い手自身が高齢化する問題をどう吸収するか

働く高齢者が最多を更新したというニュースは、明るくも暗くも読める。数字を追うなら、増えた人数ではなく、その人たちが「どんな条件で」働いているかを次も確認したい。

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