デンマークで「修理する権利」が施行、使い古した家電にもメーカーの義務|2026年9月8日版
デンマークで9月3日、対象の家電やスマートフォンについて、消費者がメーカーに修理を求められる法律が施行された。購入時の不具合だけでなく、使い続けたことによる摩耗や誤った使い方による故障にも、条件を満たせば修理義務が及ぶ。
ただし、修理を求められることと、無料で直してもらえることは別だ。合理的な料金の請求は認められ、対象製品や対応期間にも限りがある。デンマーク競争・消費者庁の発表が示すのは、故障した製品を買い替える前に、修理という選択肢を確保する制度だ。
- 対象は、洗濯機、冷蔵庫、携帯電話など一定の製品。
- 購入時の不具合を扱う従来の権利に、修理を求める権利を追加する。
- 家計にとっての使いやすさは、修理代と返却までの日数に左右される。
何が変わるのか――「使って壊れた」場合にも窓口を残す
今回の変化が分かりやすいのは、冷蔵庫が故障した場面だ。
競争・消費者庁は、購入時から存在した不具合なら、所定の条件と期間内で販売店に無償の対応を求める従来の仕組みを説明している。一方、摩耗や使用方法が原因なら、同じように無料で直してもらえるとは限らない。
新法は、その後者にも修理の道を開く。対象条件を満たす製品なら、メーカーは無料または合理的な料金で修理に応じる義務を負う。消費者は、購入時の欠陥を理由にできない故障でも、修理を求められるようになる。
ここがポイント: 新しい権利は、あらゆる故障を無料にする制度ではない。対象製品を直して使い続けるために、メーカー側へ対応義務を置く制度だ。
背景には、EUの「修理する権利」指令がある。欧州委員会は、EU法上の修理可能性に関する要件がある製品について、合理的な期間と価格でメーカーに修理を義務づける仕組みを示している。デンマークの新法は、その国内実施に当たる。欧州委員会の制度概要
すべての製品を、いつまでも直せるわけではない
制度の対象は広いが、無制限ではない。
当局が挙げる主な対象には、次のような家庭で使う製品がある。
- 洗濯機、食器洗い機、冷蔵・冷凍機器
- テレビなどの電子ディスプレー、掃除機
- 携帯電話、コードレス電話、タブレット
ただし、対象の種類に入っていても、個々の製品に必ず修理義務が生じるとは限らない。義務が続く期間は製品ごとのEUルールで異なり、修理そのものが不可能なら拒否できる。企業の業務用購入ではなく、消費者として購入した製品を対象にした制度でもある。政府の消費者向け案内
このため、実際に利用する際は「冷蔵庫だから対象」と判断するだけでは足りない。製品の型番や経過年数を伝え、該当する修理義務の範囲を確認する必要がある。
連絡先は販売店とは限らない
原則として義務を負うのはメーカーだ。メーカーがEU域外にある場合は、EU内の認定代理人、代理人がいなければ輸入業者、さらに輸入業者もいなければ流通業者という順に責任が移る。
修理作業を別の業者へ委託することはできるが、義務を負う事業者の責任は残る。購入した店への苦情対応とは、問い合わせ先が異なる場合がある点に注意が必要だ。
「合理的な料金」で、本当に修理を選べるか
権利ができても、修理代が買い替え価格に近ければ、利用は進みにくい。ここから先は制度の実効性を左右する論点になる。
政府の案内では、事業者は修理の方法、担当者、価格、所要時間などを知らせる必要がある。価格を事前に合理的に計算できない場合は、上限額と計算方法を示す。修理は、メーカーが製品を受け取ってから合理的な期間内に行うというルールだ。
一方、一律の修理料金や「何日以内」という共通の日数が示されているわけではない。故障内容や製品によって、条件は変わる。政府の英語版案内は、故障の診断や見積もりに必要な費用がかかる場合もあると説明している。
たとえば、生活に欠かせない洗濯機なら、料金だけでなく、戻ってくるまでの期間も判断材料になる。見積もりが手頃で日程も明確なら修理を選びやすい。逆に、高い費用や長い待ち時間が残れば、権利があっても買い替えに向かう可能性がある。これは施行後の成果を評価する際の見方であり、すでに利用が増えたことを示すものではない。
販売店にも変化――修理を選ぶと申立期間を延長
メーカーの修理義務と並んで、販売店が扱う従来の不具合対応にも変更がある。
経済団体Dansk Erhvervは9月7日、法定の不具合対応の対象になるケースで、消費者が交換ではなく修理を選ぶと、申立てができる期間を12カ月延長できる新ルールを紹介した。Dansk Erhvervの事業者向け解説
これは、摩耗などの故障についてメーカーに修理を求める仕組みとは区別して捉えたい。購入時の不具合への対応では修理を選ぶ利点を増やし、その枠から外れる故障には別の修理経路を設ける。製品を長く使うために、二つの場面へ働きかけている。
販売店の説明でも、無料の不具合対応なのか、有料になり得る新たな修理依頼なのかを明確にすることが重要になる。
次に見るべき3つのポイント
施行後に注目したいのは、修理を申し込んだ人が、納得できる条件で製品を使い続けられるかだ。
- 料金:診断費用も含め、買い替えと比較できる見積もりが示されるか。
- 日数:日常生活で使う家電を、無理なく待てる期間で返却できるか。
- 窓口:メーカーや輸入業者への連絡先と、対象外と判断する理由が分かりやすく示されるか。
「修理できます」という回答だけでは、家計の判断は終わらない。いくらで、いつ戻るのか。新しい権利の価値は、その二つが具体的に示される場面で試される。
