MENU

チリで教室スマホ規制が始動 「全面禁止」ではない新ルールが示す教育の変化

チリで教室スマホ規制が始動 「全面禁止」ではない新ルールが示す教育の変化EUで進む「越境介護・財産管理」の法整備 認知症や障害のある成人をどう守るのか

チリでは2026年3月の新学年開始に合わせて、学校でのスマートフォン利用を規制する新ルールが動き始めた。ポイントは、学校教育からデジタルを排除することではなく、授業中の常時接続を抑えつつ、必要な場面では例外を認める設計になっていることだ。

日本でも学校でのスマホ利用はたびたび議論になるが、チリの事例は「禁止か自由か」の二択ではない。集中、対人関係、保護者の安心、教育でのデジタル活用をどう両立させるかを、制度として整理し始めた動きとして見ると面白い。

目次

何が始まったのか

チリ教育省によると、2025年12月2日に国会を通過した法律21.801が、2026年2月11日に官報掲載され、2026年の学年開始時から発効した。学校側は2026年6月30日までに校内規則を更新する必要がある。

制度の骨格は次の通りだ。

項目内容
発効時期2026年学年開始時
対象幼児教育、初等教育、中等教育の学校
原則個人用のスマートフォンなど通信機能付き端末の使用を原則禁止
主な適用場面授業活動の実施中、とくに教室内
見直し期限各校は2026年6月30日までに内部規則を改定
例外特別な教育的支援、緊急時、健康上の理由、教育活動上の必要、安全上の事情など

重要なのは、これが一律の「学校に持ち込むな」ではないことだ。教育省の説明では、原則禁止は主に授業活動中、とくに教室内を想定している。さらに中等教育では、生徒の発達段階に応じて、学校ごとに端末使用を認める時間や場所を定められる。

なぜ今、スマホ規制なのか

チリ政府が前面に出している理由はかなり明快だ。集中力の回復、学習環境の改善、人とのやり取りの再建である。教育省は、子どもが学校で「画面ではなく学校とつながる」ことを重視すると説明している。

背景には、世界的に進む「学校でのスマホ利用見直し」がある。UNESCOは2025年1月時点の整理として、2024年末までに79の教育制度、全体の40%が学校でのスマホ利用を制限する法令や方針を持つとしている。チリだけが特別なのではなく、教育現場での端末利用を再設計する流れの一部に入った形だ。

ただし、チリの制度は単純な逆行ではない。法律要約では、教育デジタル化を教育制度の原則に組み込みつつ、同時に休み時間の対人交流や遊び、共同体的な接点を増やすことも狙いにしている。つまり「デジタル教育を進める」と「スマホ依存を抑える」を同時にやろうとしている。

どこまで禁止で、どこから例外なのか

ここを雑に読むと、「チリがスマホを学校から追放した」という話になってしまう。実際にはそうではない。

例外として認められているのは、主に次のケースだ。

  • 特別な教育的ニーズがあり、端末が学習支援として必要な場合
  • 災害や緊急事態などの場面
  • 医療モニタリングなど健康上の理由がある場合
  • 初等・中等教育で、授業や課外活動に教育的必要がある場合
  • 生徒本人の安全や家族事情について、保護者が合理的理由を示して申請した場合

加えて、学校が詳細ルールを内部規則で決める仕組みなので、現場運用には幅が出る。チリの報道でも、2026年3月上旬の段階で各校がロッカー保管、登校時預かり、教室内のみ禁止など、運用を分け始めていると伝えられている。

事実として言えるのは「全国共通の原則」ができたことで、どの程度きつく運用するかは学校ごとの差が残る。ここは断定しすぎない方が実態に近い。

この話が日本から見ても面白い理由

このニュースが興味深いのは、スマホ規制そのものよりも、制度設計がかなり現実的だからだ。

日本でも学校現場では、

  • 学習の妨げになる
  • いじめや撮影トラブルが起きる
  • 災害時や登下校の安全確保には必要
  • 端末活用を進めたいのに、私物スマホは扱いが難しい

といった論点がぶつかりやすい。チリの新制度は、この衝突を「全面禁止」か「自己責任」かで片付けず、授業中は抑える、必要時は例外を明記する、最終運用は学校規則で詰めるという三段構えで整理した。

しかも、学校内のルール変更だけで終わらず、法律要約では家庭の責任にも触れている。学校時間外の端末利用まで学校だけに背負わせないという考え方だ。これは、日本でも議論が進みそうで進まない部分に近い。

今後の見通し

今後の注目点は3つある。

  1. 学校ごとの差がどこまで広がるか。6月30日までの規則改定で、緩やかな運用と厳格運用がかなり分かれる可能性がある。
  2. 学習成果より先に、校内の空気がどう変わるか。短期では成績よりも、授業中の集中、休み時間の過ごし方、教員の指導負担などに変化が出やすい。
  3. 例外運用が制度の信頼性を左右すること。健康、安全、特別支援、教育活用の線引きが曖昧だと、現場で摩擦が増える。逆にここがうまく設計されれば、単なる禁止策ではなくなる。

チリの動きは、世界的に広がる「学校でスマホをどう扱うか」という議論の中でも、かなり実務的な部類に入る。少し地味な制度変更に見えるが、教育現場で何を自由とし、何をルール化するのかという問いが詰まっている。日本で紹介されるときは「スマホ禁止」という見出しだけになりがちだが、実際にはその一歩先の設計が始まっている。

参照リンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次