18歳まで助成が9割でも「同じ制度」ではない 子ども医療費を分ける4つの自治体ルール
子どもの医療費助成は、全国共通の健康保険に自治体独自の支援を重ねる仕組みです。だから、引っ越しで受給者証が変わるだけでなく、対象年齢、所得制限、窓口負担、県外受診時の手続きまで変わることがあります。
2026年6月には横浜市が対象を18歳年度末まで拡大し、新たに約9万人が助成対象になりました。一方、全国を見れば「高校生まで助成」が主流になった後も、負担と使い方はそろっていません。
この記事の要点は次の4つです。
- 健康保険の自己負担割合は国の制度だが、その自己負担を軽くする助成は自治体の制度
- 2025年4月時点で、通院を18歳年度末まで対象とする市区町村は1,741団体中1,576団体
- 18歳まで対象でも、所得制限や数百円程度の一部負担が残る地域がある
- 転居、県外受診、高校進学の前後では、年齢だけでなく利用方法の確認が必要
自治体で違うのは「健康保険」ではなく、その先の助成
地域差の出発点は、全国共通の医療保険と自治体独自の助成が別制度であることです。
医療機関の窓口負担は、国の医療保険制度によって、義務教育就学前は2割、その後は原則3割と定められています。子ども医療費助成は、この自己負担分の全部または一部を自治体が公費で補うものです。
お金と役割の流れを簡略化すると、次のようになります。
- 国:健康保険の給付範囲や患者の自己負担割合を定める
- 都道府県:条例や要綱に基づき、市区町村の助成事業を補助する
- 市区町村:対象年齢や一部負担などを決め、受給者証を発行する
- 住民:申請や受給者証の提示を行い、必要に応じて払い戻しを請求する
- 医療機関・審査支払機関:保険診療と公費助成を組み合わせて請求を処理する
都道府県の補助基準を超えて、市区町村が独自財源で対象年齢を広げたり、一部負担をなくしたりする場合もあります。人口、子どもの数、税収、他の行政サービスとの配分が異なるため、隣接する自治体でも制度内容がそろうとは限りません。
ここがポイント: 「18歳まで助成」と書かれていても、「窓口で完全に0円」「所得制限なし」「全国の医療機関で手続き不要」とは限りません。
18歳までが主流になっても、422自治体では通院の一部負担が残る
対象年齢の差は縮小しましたが、実際に支払う金額の差は残っています。
こども家庭庁の2025年度調査によると、2025年4月1日時点で全47都道府県、全1,741市区町村が子どもの医療費助成を実施していました。
市区町村の状況は次の通りです。
- 通院を18歳年度末まで助成:1,576団体
- 入院を18歳年度末まで助成:1,600団体
- 通院の所得制限なし:1,692団体
- 入院の所得制限なし:1,693団体
- 通院の一部自己負担あり:422団体
- 入院の一部自己負担あり:331団体
つまり、通院では約9割の自治体が高校生相当までを対象にしている一方、約4分の1では何らかの一部負担が残ります。年齢だけを見て「全国でほぼ無償化された」と理解すると、実際の窓口負担を見落とします。
横浜市は約9万人を新たに対象化
横浜市は2026年6月1日から、所得制限と一部負担なしの助成を18歳年度末まで広げました。市の発表では、新たな対象者は約9万人。対象者には原則として申請を求めず、医療証を送付しました。
ただし、制度案内が明記するように、差額ベッド代、文書料、健康診断など保険が適用されない費用は助成されません。「医療費0円」は、あくまで対象となる保険診療の自己負担についての表現です。
地域差を生む4つの判断軸
自治体の制度を比べるときは、対象年齢だけでなく4項目をセットで見る必要があります。
1.何歳まで対象か
「18歳まで」には、多くの場合「18歳に達した後の最初の3月31日まで」という意味があります。誕生日で終了するのか、年度末まで続くのかを確認しましょう。
通院と入院で対象年齢が異なる自治体もあります。こども家庭庁の調査では、通院は中学卒業まで、入院は高校卒業相当までという制度も確認できます。
2.所得制限があるか
保護者の所得が一定額を超えると対象外になる制度があります。判定対象が父母のどちらか、世帯の合算、主たる生計維持者のいずれなのかも、自治体の規定によって異なります。
所得制限のない市区町村は大多数ですが、2025年4月時点で通院49団体、入院48団体には制限がありました。
3.窓口でいくら払うか
同じ「助成あり」でも、完全に自己負担がない制度と、1回または1日ごとに定額を払う制度があります。
例えば千葉県内では、市町村が設定する窓口負担として0円、200円、300円、500円という区分があります。県が共通の枠組みを用意していても、具体的な自己負担額は市町村ごとに異なります。
4.窓口で完結するか、後日申請するか
受給者証を提示して助成後の金額だけを払う「現物給付」と、いったん通常の自己負担額を払い、後日自治体へ申請する「償還払い」があります。
県外の医療機関を受診したとき、受給者証を忘れたとき、自治体と医療機関の契約対象外だったときは、償還払いになる場合があります。最終的な助成額が同じでも、一時的な立て替えと申請の手間は家計にとって小さくありません。
国の見直しで拡充しやすくなっても、一律化はしていない
国は自治体による助成の障壁を一つ取り除きましたが、全国共通制度へ置き換えたわけではありません。
以前は、自治体が窓口負担を軽くすると受診が増えるとの考えから、国民健康保険に対する国庫負担を減額する調整措置がありました。国は2024年度から、18歳未満の子どもの医療費助成に関するこの措置を廃止しました。
自治体にとっては助成を拡充する際の不利益が減りました。それでも、どこまで助成するか、追加費用をどう確保するかを決める主体は自治体のままです。
全国知事会は、全国どこでも等しく受けられるべき施策の底上げと、地域の実情に応じたサービスを支える地方財源の確保を国へ求めています。ここには二つの課題があります。
- 最低限の支援を全国共通にすれば、居住地による差を縮められる
- 自治体独自の上乗せまで一律化すると、地域の判断や先行施策を狭める可能性がある
今後の焦点は、自治体間の競争だけで対象を広げ続けるのか、国が共通の最低基準と安定財源を設けるのかです。
自分の地域で確認すべきこと
転居や進学の前後には、自治体サイトで制度を確認し直すのが確実です。
見るべき項目は、次の6点です。
- 通院と入院、それぞれの対象年齢
- 所得制限と、その判定対象者
- 1回、1日、1カ月単位の自己負担額
- 受給者証の申請が必要か、自動交付か
- 県外受診や受給者証を忘れた場合の払い戻し方法
- 差額ベッド代、予防接種、健診、文書料など対象外となる費用
制度名も「子ども医療費」「こども医療費」「小児医療費」「乳幼児医療費」など地域によって違います。検索するときは「自治体名+子ども医療費助成」で公式ページを探すと早く確認できます。
対象年齢は全国的に18歳年度末へ近づいています。次に見るべき分岐点は、一部負担と償還払いがどこまで減るか、そして国が全国共通の最低基準を設けるかです。
