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「価格釣り上げ禁止法」が7月1日に施行──オーストラリアがスーパー2強を初規制|2026年6月29日版

7月1日、オーストラリアで世界に先例のない法律が動き出す。食料品専門の「価格釣り上げ禁止規定」だ。年商300億豪ドル(約3兆円)を超える大手スーパーに限定した規制で、現時点ではコールズとウールワースの2社のみが対象となる。

消費者が長年抱いてきた「2強が競い合わずに値段を高止まりさせている」という不満に、政府が初めて法律で応えた形だ。

目次

この記事のポイント

  • 7月1日施行:Food and Grocery Code に「過剰な値付けの禁止」が追加される
  • 対象はコールズとウールワース2社のみ(年商300億豪ドル超の要件)
  • 違反1件の最大罰則は「1000万豪ドル」「利得の3倍」「年間売上高の10%」のうち最大額
  • 執行機関はACCC(オーストラリア競争消費者委員会)
  • 法律は「著しく過剰」の定義を明示しておらず、実際の適用は裁判所判断に委ねられる

市場の3分の2を握る2社

オーストラリアの食料品市場は、長らく2社による事実上の寡占状態にある。

  • ウールワース:市場シェア約38%
  • コールズ:同約29%
  • ALDI:9%
  • Metcash:7%

ACCCが2025年に公表した調査報告書は、両社が「世界の同業他社の中で最も利益率の高い部類に入る」と指摘。過去5年間で商品マージンが上昇し続ける一方、消費者価格も急騰したことが社会問題化していた。

Chalmers財務大臣は「レジでより公正な値段を実現することが、家計への生活費圧力を和らげる最善の方法のひとつだ」と述べ、今回の規制導入を主導した。


禁止される「過剰な値付け」とは

法律の文言は「供給コストに合理的なマージンを加えた金額と比較して著しく過剰な価格設定」を禁じるもの。しかし、何が「著しく過剰」にあたるかは法律の条文では定義されていない

裁判所が判断する際の参照基準として想定されるのは、同種商品の価格比較、地域間の価格差、時系列での値動きなどだが、数万点に及ぶ商品を横断してコストを立証するのは容易ではないと専門家は指摘している。

ここがポイント:この法律は「最後の切り札」であって「毎週使うツール」ではない。証明の難しさから、実際の提訴は限られたケースに絞られると予想される。

シュリンクフレーション(容量を減らして実質値上げする手法)やスキンプフレーション(品質を下げて価格を維持する手法)は、それ単体では今回の違反要件に該当しない。ただし、単価表示の強化や注意喚起制度の整備は別途進行中だ。


強い反発と施行の壁

コールズ・ウールワースは両社とも法案に反対の立場を明確にしていた。主な反論は「価格規制がコスト増を招き、かえってセールや値引きキャンペーンが消費者から失われる」というものだ。

専門家の見方はやや慎重だ。ニューサウスウェールズ大学などの競争法研究者は、直接的な価格規制には「競争インセンティブを損ない、イノベーションを抑制するリスクがある」と警告する。価格だけを抑制しても、競争環境そのものが変わらなければ効果は一時的にとどまる可能性があるという。

国際比較では、EU諸国は食料品専門の価格規制法より汎用的な競争法を使うアプローチが主流だ。価格釣り上げ禁止法を恒常的な平時立法として食料品に適用するのは、オーストラリアが世界で先行するケースとされている。


規制パッケージ全体の位置づけ

今回の価格釣り上げ禁止はあくまでも改革パッケージの一部だ。同時進行している関連措置を整理すると:

  • Food and Grocery Code の必須化(2025年4月施行済):従来は任意加入だったが強制適用に
  • 合併規制の強化:大手スーパーによる買収案件にACCC審査を義務化
  • CHOICE(消費者団体)への補助金:価格透明性ツールの開発・普及を支援
  • ACCC への追加予算:約3000万豪ドルを拠出し、監視・訴追能力を強化
  • 単価表示コード(Unit Pricing Code)の見直し:シュリンクフレーション対策として検討中

ACCCはこれ以外にも20項目の改革勧告を出しており、都市計画・ゾーニング規制の見直しによる新規参入障壁の低下なども議題に上がっている。


残る論点と今後の注目点

施行開始から実際の摘発事例が出るまでには時間がかかる見通しだ。それまでの間、この法律が持つ意味は「威嚇効果」にある。両社が「著しく過剰」と判断されうる価格設定を自主的に避けるかどうか、消費者価格のモニタリングが今後の焦点になる。

注目すべき点を挙げると:

  • ACCCが最初の調査に乗り出す事案:どのカテゴリの商品が対象になるかで法律の射程が見えてくる
  • 「著しく過剰」の司法判断:裁判例が積み重なるまでは法的不確実性が続く
  • 競合他社の動向:ALDI や Costco が価格競争を仕掛けやすくなるかどうか
  • シュリンクフレーション規制の別立て化:単価表示コード改正の行方

日本でも食料品価格の高止まりは続いており、2社が市場を支配する構造と消費者保護のバランスをどう設計するかは参照価値のある問いだ。ただし、オーストラリアの法律でさえ「著しく過剰」の定義を意図的に曖昧にせざるを得なかったという事実は、食料品価格規制の難しさを端的に示している。


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