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セルビア総選挙、学生運動が長期支配に挑む 25日の投票で何が変わるか|2026年10月23日版

セルビア国旗を掲げてベオグラードに集まる市民を描いたイラスト。

セルビア総選挙、学生運動が長期支配に挑む 25日の投票で何が変わるか|2026年10月23日版

セルビアで10月25日に行われる議会選挙を前に、学生主導の政治勢力が長期政権を脅かしている。22日には首都ベオグラードで大規模な最終集会が開かれ、駅の崩落事故をきっかけに広がった抗議運動が、政権交代を目指す選挙戦の最終局面に入った。

争点は、汚職への抗議を、議席と政権運営の力に変えられるかだ。欧州連合(EU)加盟候補国でありながら、ロシア、中国とも関係を保つセルビアの進路にも関わる選挙となる。

  • 投票日は10月25日。 学生側の候補者名簿が、ブチッチ前大統領率いるセルビア進歩党(SNS)に挑む。
  • 抗議の発端は、2024年11月の駅の屋根崩落事故。公共事業の汚職疑惑と責任追及が政治問題へ広がった。
  • 勝敗に加え、選挙手続きの公正さ、結果の受け入れ、選挙後の連立交渉が焦点になる。
目次

何が起きたか――街頭の抗議が政権を争う選挙へ

学生運動は、デモを続ける段階から、候補者を送り出して議会の多数を目指す段階へ進んだ。

AP通信は、22日のベオグラードでの集会に非常に多くの支持者が集まり、中心部のスラビヤ広場と周辺の道路を埋めたと報じた。同通信によれば、学生側の「学生リスト」はSNSと支持を競っている。ただし、集会の規模や接戦という情勢だけで、選挙結果を予測することはできない。AP通信の集会報道

学生側の名簿には、学生だけでなく大学教授、教員、専門家らも参加する。抗議の担い手が、そのまま全員議員になる仕組みではなく、運動が支持する候補者を選挙に送り出す形だ。AP通信の候補者名簿に関する報道

一方、ブチッチ氏は首相への復帰を目指す。今回の投票で直接選ぶのは議会であり、首相を直接選ぶ選挙ではない。どの勢力が議席を確保し、政権を組めるかが次の権力配置を決める。AP通信の選挙情勢報道

背景――駅の事故が「国の運営」を問う問題になった

出発点は、公共施設の安全と、事故への説明責任だった。

2024年11月、北部ノビサドの鉄道駅で屋根が崩落し、16人が死亡した。鉄道事業を巡る汚職疑惑が抗議を呼び、学生を中心とする運動が全国へ広がった。事故の責任を問う声が、長く続く政治体制への批判につながったのである。ロイターの選挙背景解説

ここで区別したいのは、事故の発生と、汚職を巡る疑惑だ。事故が起きたことは事実だが、個々の人物の刑事責任や不正の有無は、捜査・司法判断と分けて扱う必要がある。

ここがポイント: この選挙では、事故への怒りの大きさだけでなく、公共事業の説明責任を求める有権者が、実際にどの候補へ票を投じるかが問われる。

投票までの手続きにも疑義

選挙監視団体CRTAは、候補者名簿の登録過程について、透明性の不足や、有権者本人が立ち会わない署名認証などの疑惑を報告した。これは同団体の監視結果であり、すべてが司法上確定した不正を意味するものではない。CRTAの監視報告

接戦では、候補者登録、投票、開票に対する信頼が一段と重くなる。勝者が決まっても、手続きへの疑念が残れば、政治的な対立を収めるのは難しい。

なぜ国際的に重要か――EU加盟と中ロ関係の交差点

セルビアの選挙は、国内の政権争いにとどまらない。EUとの関係と、ロシア・中国との協力をどう両立させるかにも影響する。

ロイターによれば、ブチッチ氏はEU加盟への道を残しながら、中国との投資関係や、伝統的な友好国で天然ガスの主要供給元でもあるロシアとの関係を維持してきた。ロイターの解説

このため、海外から見る焦点は、単純な「親欧州か、親ロシアか」だけではない。

  • EUにとっては、 加盟候補国で政治競争と説明責任が機能するかが問題になる。
  • ロシアや中国にとっては、 選挙後もエネルギーや投資を巡る協力が続くかが関心事になる。
  • 現地で事業を行う企業にとっては、 新政権の成立時期や、公共事業・契約の扱いが実務上の確認事項となる。

学生側が勝利しても、外交政策が直ちに一方向へ変わるとは限らない。選挙で掲げる改革と、既存のエネルギー調達や投資関係をどう調整するかは、政権を組んだ後の判断になる。

日本の読者にとっても、ここは見落としにくい点だ。欧州との関係改善という見出しだけで、既存の契約や対中ロ関係まで一斉に変わると読むのは早い。

今後の見通し――勝敗と政権成立を分けて見る

25日の投票後には、得票の多さだけでなく、議席配分と政権を組める組み合わせを確認する必要がある。以下は結果を予測するものではなく、選挙後の展開を読むための整理だ。

学生側が政権形成の中心になる場合

汚職対策や公共事業の検証を、法律、行政、人事にどう落とし込むかが焦点になる。抗議で結び付いた幅広い支持層を、具体的な政策でもまとめられるかが問われる。

SNS側が政権を維持する場合

反対勢力が大きく伸びた状況で、事故の責任追及や制度改革の要求にどう応えるかが課題になる。選挙で勝つことと、社会の不信を解消することは別の仕事だ。

多数派が定まらず、結果を巡る対立が続く場合

連立交渉が長引くほか、異議申し立てや再集計の扱いが政治日程を左右する可能性がある。この場合は、各陣営の勝利宣言より、選挙当局の発表と監視団体の検証を優先して追いたい。

次に見るべき3つのポイント

投票日以降は、次の順で確認すると情勢を捉えやすい。

  1. 確定議席と連立の組み合わせ――最多得票の勢力が、そのまま政権を組めるとは限らない。
  2. 投開票への検証と結果の受け入れ――監視団体の指摘に当局がどう対応し、各陣営がどの手続きを取るか。
  3. 新政権の最初の決定――駅事故と公共事業の検証を進めるのか。EU、ロシア、中国との既存関係をどう扱うのか。

街頭で示された支持が政治を変えたかどうかは、集会の人数では決まらない。25日の議席配分と、その後に成立する政権が最初に何を実行するかで見えてくる。

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