オランダ、新築住宅の電力接続を10年前から申請可能に 入居を左右する送電網不足|2026年10月13日版
オランダでは10月1日から、自治体が住宅や学校の建設計画について、最大10年先の電力供給に必要な送配電容量を申請できるようになった。土地や建設計画が整っても、電力網に空きがなければ予定どおり使い始められない。その不確実性を、計画の早い段階で把握するための制度だ。
ただし、早く申請しても、電気を使える時期が保証されるわけではない。 新制度が変えるのは申請のタイミングと計画の立て方であり、電力網そのものの容量ではない。送配電事業者団体Netbeheer Nederlandの説明も、この点を明示している。
- 自治体が住宅、共同居住施設、学校の計画を早期に申請できる。
- 社会的に重要な事業には優先枠があるが、別途審査が必要。
- 住宅の入居予定や学校の開設予定を、電力網の整備時期と合わせることが課題になる。
なぜ住宅建設に「電力の順番待ち」が必要なのか
問題は、発電量だけではない。必要な場所へ電気を運ぶ送配電網の容量が足りず、新規利用や使用量の増加にすぐ対応できない地域がある。
オランダの規制当局ACMは、こうした容量不足によって住宅、教育、医療などの社会機能が滞るおそれがあるとして、混雑地域で容量を配分する際の優先順位を定めた。事業の社会的な役割を、接続の順番に反映させる仕組みだ。ACMの決定では、大きく次の3区分を設けている。
- 電力網の混雑を緩和し、ほかの利用者が使える容量を増やす事業。
- 救急医療、防衛、水管理など、安全に関わる機能。
- 住宅、教育、公共交通など、基本的な生活需要を満たす機能。
住宅と学校にも優先枠はある。しかし、最優先ではない。対象事業であっても、必要な証拠書類を提出して優先扱いを申請する必要がある。
この順番は、家を探す人や学校を新設する自治体にとって重要だ。「住宅だから先に電気が来る」とは限らず、ほかの優先事業や同じ区分の申請も含めて計画を考えなければならない。
10月から変わったのは、建設前の準備
新しい手続きは「Eerder aanvragen」、つまり早期申請と呼ばれる。自治体が将来の具体的な建設計画をまとめ、電力網側へ早めに必要容量を伝える。
容量の申請と、優先扱いの申請は別
送配電事業者Enexisの説明では、自治体は住宅や学校の計画について、最大10年先まで容量を申請できる。申請には所在地、住宅数、建設・完成予定、暖房方式、想定する電力需要などの情報が必要だ。大規模な計画は、建設段階ごとに申請する。Enexisの手続き案内
さらに、社会的な優先扱いを受けるには別の申請を行う。早期申請を済ませたことと、優先順位が認められたことは同じではない。
そのため、自治体と開発業者は、建物の戸数や配置だけでなく、暖房や共用設備を含む電力需要も早く整理する必要がある。電力の確保を建設の終盤に確認するのでは、計画変更に使える時間が少なくなる。
自治体が並べても、容量を決めるのは送配電事業者
アペルドールン市は、住宅計画を取りまとめて申請し、送配電事業者Lianderが容量の割り当てを決めると説明している。
市が計画を並べる際の基準は、着工時期、実現の確実性、完成時期。同順位の場合は計画の熟度をさらに確認し、必要なら抽選を行う。アペルドールン市の案内
これは、市内の計画をどの順番で提出するかを決める手続きだ。市の一覧に載っただけで、電力供給が確約されるわけではない。
ここがポイント: 建設できる土地があることと、その場所で必要な電気を使えることは、別々に確認しなければならない。
住宅不足への効果は、電力網の整備次第
早期申請には、実現可能な計画を早く見分ける意味がある。一方、待ち行列を整えても、使える容量が増えなければ建設の制約は残る。
送配電事業者Stedinは、住宅や学校への供給が間に合う保証はなく、地域によってはケーブルや変電設備の増設が必要になり、容量が再び使えるまで数年かかる場合があると説明する。同じ優先区分の中では、容量申請の日付が順番を左右する。Stedinの説明
今後の進み方には、少なくとも二つの可能性がある。
- 容量が確保できる地域では、早期申請によって建設時期と電力供給の見通しを合わせやすくなる。
- 増強工事が必要な地域では、申請後も待機が続き、建設の段階分けや日程の見直しが必要になる可能性がある。
ここは制度の期待と、確認できる成果を分けて見るべきところだ。10月13日時点で確認した資料は、申請方法と配分ルールを説明している。新制度によって住宅の完成や入居がどれだけ早まったかを示す実績ではない。
住宅を購入・賃借する人にとっても、「申請済み」という説明だけでは判断材料が足りない。容量が割り当てられたのか、待機中なのか、希望する接続日に間に合う見通しがあるのか。その違いが、引っ越しの予定に関わる。
次に見るべき3つのポイント
制度が動き始めた今、注目すべきなのは申請件数だけではない。
- 実際の割り当て:申請した住宅・学校のうち、どの計画に容量が認められるか。
- 建設日程との一致:予定する完成・開設時期までに、必要な接続が間に合うか。
- 地域ごとの増強計画:容量不足が続く場所で、送配電設備の工事がいつ完了するか。
早期申請で見通しを得られても、入居できる日を決めるには、その後の容量割り当てと接続時期まで確認する必要がある。
