MENU

文章を生成せず判断するAI、Liquid AI「Open d1」の仕組み|2026年10月12日版

画像や音声の入力を小型プロセッサーで判断するエッジAIのイメージ。

文章を生成せず判断するAI、Liquid AI「Open d1」の仕組み|2026年10月12日版

問い合わせを担当部署に振り分ける。画像から検査対象を分類する。こうした処理では、長い回答文よりも、決められた選択肢とその確率が必要になる。

Liquid AIが10月7日に公開した「d1-3B」「d1-omni-600M」は、その判断に特化したオープンウェイトモデルだ。文章をトークンごとに生成せず、入力を一度処理して回答を返す。生成待ちを減らし、端末側でも判断処理を動かす設計が特徴になる。公式発表

2026年10月12日(日本時間)時点の公開資料をもとに、仕組みと導入時の確認点を整理する。

  • d1-3Bはテキストと画像を扱う判断用モデル。
  • d1-omni-600Mは、テキストと画像、またはテキストと音声を扱う実験的モデル。
  • 出力は自由な文章ではなく、あらかじめ定義した質問への回答と確率。
  • 処理時間は入力の長さや画像の有無で変わる。最短値だけで導入を判断できない。
目次

判断モデルは、回答文を書く工程を省く

中心となる違いは、出力の作り方にある。

生成型の言語モデルは、回答の続きをトークンごとに作る。d1では、開発者が質問と許される回答を定義し、モデルがそれぞれの選択肢を評価する。単一のフォワードパスとは、入力をモデルに通す一回の計算で回答を取り出すことだ。

d1-3Bのモデルカードには、問い合わせに対して次の三つを同時に尋ねる実装例がある。

  • 返金を求めているか。
  • 請求、技術、不正利用のどの担当に渡すか。
  • 対応の緊急度はどの段階か。

同じ問い合わせを質問ごとに読み直すのではなく、一つの入力に対する複数の質問をまとめて処理する。返ってきた値をアプリの分岐条件に使えるため、回答文から部署名を抜き出す処理も省ける。

「出力トークンがゼロ」は、計算量がゼロという意味ではない。 入力を読む処理は必要で、長文や画像では待ち時間が増える。また、返金の理由を顧客向けの文章にする仕事には、別の文章生成処理が必要になる。

二つのモデルは、入力と基盤が異なる

モデルの大きさだけでなく、扱う入力と内部構造にも違いがある。

d1-3B:テキストと画像の判断

d1-3Bは約31.2億パラメーターで、視覚言語モデルLFM2.5-VL-3Bを基盤とする。モデルカードが示すコンテキスト長は32,768トークン。問い合わせ分類、画像検査、検索結果の並べ替え、エージェントの出力チェックなどを用途として挙げている。

開発者にとっての要点は、文章生成用のチャットモデルとして呼び出すのではなく、質問の型と選択肢を定義して利用することだ。公式の実装例では、真偽、選択、段階評価を指定できる。モデル仕様・実装例

d1-omni-600M:音声も扱う実験的モデル

小型のd1-omni-600Mは、双方向エンコーダーを基盤に画像・音声の処理系を加えたモデルだ。入力は「テキストと画像」または「テキストと音声」。名称の印象だけで、画像と音声を同時に扱えると解釈しないようにしたい。

Liquid AIはこれを初期の研究リリースと位置づけている。音声入力がある業務では候補になるが、対応入力が広いことと、各業務で十分な精度が出ることは別々に確かめる必要がある。公式モデルカード

「8ミリ秒」は条件つき――画像や長文で変わる

速度を見るときは、どの入力をどの機器で処理した数字かが重要になる。

Liquid AIの公式測定では、d1-3BをRTX 4090で動かした場合、単一質問は8ミリ秒、384ピクセルの画像を使う条件では17ミリ秒だった。Jetson Orin Nanoでは、単一質問が50ミリ秒、画像条件が202ミリ秒、約3,400トークンの入力が1,640ミリ秒になる。測定条件と結果

これらは提供元による測定であり、すべての入力で同じ速度が出る保証ではない。同じモデルでも、短い問い合わせの分類と、長い文書の判定では待ち時間が大きく変わる。

端末側での処理を検討するなら、実際に投入する文章の長さ、画像の解像度、質問数をそろえて測る必要がある。カメラを使う用途では、撮影や前処理、アプリ側の動作まで含めた時間も確認したい。

日本語の業務では、確率と振り分け結果を検証する

日本の開発現場で試しやすいのは、回答候補を明確に決められる処理だ。

例えば社内問い合わせなら、担当部署と緊急度を定義し、過去の日本語問い合わせで評価できる。ただし、公開ベンチマークの成績だけでは、社内略語や敬語、省略の多い文章を正しく扱えるかは分からない。

導入前の評価では、次の三つを分けて記録すると判断しやすい。

  • 誤振り分け:担当部署を間違えた割合。
  • 見逃し:緊急案件を通常扱いにした件数。
  • 保留:自動処理せず、人へ渡した割合。

モデルが返す確率を、そのまま業務上の正解率として扱うことも避けたい。自動振り分けを許す条件と、人が確認する条件は、手元の評価データに基づいて決める。

オープンウェイトなのでローカル配置を検討できる一方、実行環境、必要メモリ、ライセンス条件の確認は残る。まず一つの分類業務に絞り、既存の処理と精度・速度を比較するのが現実的だ。

継続ウォッチ

次に見るべき点は、速さが実際の入力でも維持されるか、判断を安心して任せられる範囲がどこまで広がるかだ。

  • 日本語の問い合わせや社内文書に対する第三者評価。
  • d1-omni-600Mの音声判断を測るベンチマークと更新内容。
  • 長文、複数質問、画像入力を組み合わせた際の処理時間。

今回の公開で試せるようになったのは、文章を書く工程を省いた判断処理だ。最初の検証では、最短の応答時間よりも、緊急案件を見逃さずに何件を自動処理できるかを測ると、導入の価値が具体的になる。

参照リンク

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次