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西鉄が手放した佐賀―久留米の路線バス「江見線」、10月から3市町が運行──運賃と時刻はそのまま、ICカードは使えない|2026年10月2日版

田園地帯の国道を走る路線バスと道路脇のバス停

西鉄が手放した佐賀―久留米の路線バス「江見線」、10月から3市町が運行──運賃と時刻はそのまま、ICカードは使えない

佐賀駅バスセンターと福岡県久留米市を結ぶ路線バス「江見線」は、9月30日の運行を最後に西鉄バス佐賀が撤退しました。10月1日からは、沿線の佐賀市・神埼市・みやき町の3市町が事業主体となり、同じ路線を走らせています。

乗客から見て大きく変わらない点もあります。バス停、時刻表、運賃はほぼ前日までのものを引き継ぎました。

ただし1つだけ大きな違いがあります。交通系ICカードが使えなくなり、支払いは当面現金だけです。 路線は残りましたが、乗るときの手間は少し増えました。

この記事の要点

  • 江見線は西鉄バス佐賀が9月30日で廃止。10月1日から佐賀市・神埼市・みやき町の共同運行に移った
  • 運行を委託されたのは、神埼市のジョイックス交通。契約期間は2031年9月までの5年間
  • 時刻・運賃・バス停はほぼそのまま。佐賀駅バスセンター〜西鉄久留米駅は1,100円
  • 交通系ICカードは使えず、当面は現金払いのみ。キャッシュレス決済は導入を「検討」している段階

目次

何が起きたのか:民間が撤退し、自治体が同じ路線を引き継いだ

江見線は、佐賀市と久留米市を国道264号経由で結ぶ路線です。全長は約25.7キロ、片道の所要時間は約1時間15分。佐賀県と福岡県の県境を越えて走ります。

撤退までの経緯

西鉄バス佐賀は2025年3月26日、運転手不足などを理由に江見線の廃止を届け出ました。この時点で、廃止は2026年10月1日と決まっていました。

そこから約1年半で、沿線の自治体が引き継ぎの準備を進めました。

時期出来事
2025年3月26日西鉄バス佐賀が江見線の廃止を届け出る
2025年中3市町が共同運行の方針を決め、運行経費の議案を各議会に出す
2026年1月ごろ公募で運行事業者を選ぶ(ジョイックス交通に決定)
2026年7月14日佐賀県地域公共交通活性化協議会が事業者の変更を承認
2026年9月30日西鉄バス佐賀による運行が終了
2026年10月1日3市町による共同運行が始まる

10月1日から変わったこと、変わらないこと

新しい江見線は、前日までの運行内容をほぼそのまま引き継いでいます。

  • 変わらない:バス停の位置、時刻表、運賃(佐賀駅バスセンター〜西鉄久留米駅は1,100円)
  • 運行本数:平日と土曜は片道6〜7便、日曜は片道4便
  • 変わった:佐賀側の発着点。以前の「第2合同庁舎」から「佐賀駅バスセンター」に移った(一部の便は「依人橋」発着)
  • 変わった:交通系ICカードが使えない。支払いは現金のみ
  • 車両:佐賀市交通局から譲り受けたバス3台で運行。今後、車両の入れ替えを予定している

運行するジョイックス交通は神埼市の事業者で、委託期間は2026年10月から2031年9月までの5年間です。


なぜ重要なのか:「なくなると困る人」がはっきりしていた

江見線の引き継ぎは、自治体が赤字覚悟で動いた例です。その背景には、利用者の事情がはっきり数字に出ていたことがあります。

利用者の半数は「ほかに移動手段がない」

沿線自治体が行った利用者アンケート(回答者287人)では、次のような結果が出ています。

  • 利用目的の約6割が通勤・通学
  • 約47%がほぼ毎日利用している
  • 約49%が代わりの交通手段がないと答えた

通勤や通学に毎日使っていて、しかも半数がほかの手段を持たない。路線がなくなれば、仕事や学校に通えなくなる人が出る、という状況です。

運行初日には、利用者がテレビの取材に「免許を持っていないので交通手段がなくなるところだった。とても助かる」と話しています。

費用は「走る距離」で3市町が分け合う

運行経費は年間でおよそ3,000万円。3市町が、それぞれの区間を走る距離に応じて負担します。

自治体負担割合
みやき町41.9%
神埼市31.2%
佐賀市26.9%

目を引くのは、人口がいちばん少ないみやき町の負担割合がいちばん大きいことです。路線の多くが町内を通っているためです。小さな町ほど、地域の足を守るための負担が重くなりやすいことが、この数字から分かります。

佐賀市の坂井英隆市長は、方針を決めた段階で「住民への影響を最小限にしたい」と話していました。

ここがポイント: 江見線は「廃止」から「自治体が運行するバス」に変わりました。路線と時刻は守られましたが、費用は3市町の税金でまかなわれ、ICカードの便利さは一時的に失われています。


ICカードが使えないことの意味

今回の切り替えで、乗客の手間がいちばん増えたのは支払いです。

西鉄バス時代は、交通系ICカードをタッチするだけで乗れました。今は運賃を現金で払う必要があります。佐賀駅から久留米まで乗れば1,100円です。

困りそうな場面

  • 久留米側で西鉄電車やJRに乗り継ぐ人は、バスだけ現金、電車はICカードという使い分けが必要になる
  • 毎日通勤・通学で使う人は、小銭や千円札を毎日用意しなければならない
  • 両替や支払いに時間がかかると、乗り降りに時間がかかり、遅れにつながるおそれがある

3市町と事業者は、キャッシュレス決済について「今後導入を検討する」としています。導入の時期や方式はまだ決まっていません。

定期券や回数券の扱いは、報道では詳しく伝えられていません。毎日乗る人は、運行するジョイックス交通や沿線の市町役場に確認しておくと安心です。


神埼市では地域内の交通も同時に変わった

江見線の切り替えと同じ10月から、沿線の神埼市では市内の交通も変わりました。

市内を走っていたコミュニティーバスを廃止し、予約制の乗り合いタクシーを始めています。運行は吉野ヶ里観光タクシーで、2026年度の当初予算に約4,473万円が計上されました。

理由は、市民から「行きたい場所にバスが通っていない」「本数が少ない」「バス停まで行くのが大変」という声が寄せられていたためです。乗り合いタクシーは、利用者が希望の時間と場所を予約する方式です。

これで神埼市の交通は、次のような分担になります。

  • 東西方向(佐賀・久留米方面):江見線(3市町の共同運行)
  • 市内の細かな移動:予約制の乗り合いタクシー

決まった道を決まった時間に走るバスと、予約に合わせて動くタクシー。性格の違う2つを組み合わせて、地域の足を保とうとしています。


今後の注目点

江見線は5年契約で走り始めました。路線は守られましたが、課題も残っています。

  • キャッシュレス決済はいつ入るか:現金のみの状態がどれだけ続くか。導入する場合、交通系ICカードになるのか、別の方式になるのか
  • 利用者数は維持できるか:支払いの手間が増えたことで乗客が減らないか。減れば、3市町の負担はさらに重くなる
  • 運転手と車両を確保し続けられるか:西鉄が撤退した理由は運転手不足だった。委託先が5年間、安定して人を確保できるかが問われる
  • 2031年9月の契約満了後:5年後に同じ形で続けるのか、運行方式を見直すのか

民間のバス会社が運転手不足で手放した路線を、自治体が税金で支える。江見線の例は、地方で同じ問題を抱える路線がどう残っていくのかを考えるうえで、注目すべきケースです。

まず乗客にとって大事なのは、しばらくは現金を用意して乗る必要があるという点です。

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