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「市街地のクマは原則駆除」へ 岩手が5,200頭を3,400頭に減らす計画案|2026年9月27日版

住宅地のすぐ裏まで山林が迫る東北の町の夕景

「市街地のクマは原則駆除」へ 岩手が5,200頭を3,400頭に減らす計画案

岩手県は9月17日の専門家会議で、県内に約5,200頭と推計されるツキノワグマを、2027年度から5年かけて3,400頭まで、約4割減らす次期管理計画案を示した。

最大の転換点は、出た場所によってクマの扱いを変える点だ。県内を4つのゾーンに分け、市街地を含む「排除エリア」と人里に近い「管理強化エリア」では、出没したクマを原則として駆除する。山側の緩衝地帯では追い払い、奥山のコア生息地では生息環境を守る。

「山にいるクマは守る、生活圏に来たクマは捕る」を、県の計画として線引きする案である。

目次

3行で分かる計画案の骨格

  • 頭数: 推計約5,200頭 → 5年で3,400頭(約4割減)。2027年度から
  • 区分: 排除エリア(市街地)・管理強化エリア(人里近く)は原則駆除、緩衝地帯は追い払い、コア生息地は保全
  • 手続き: 11月からパブリックコメント、最終計画は2027年3月末の公表予定
  • 今年の実情: 出没は8月末時点で約4,800件(前年同期比プラス約1,300件)、人身被害12人・うち死亡3人

何が示されたのか

9月17日に開かれたのは、県が2026年度2回目として開いた専門家との協議会だ。示された計画案の中身は、頭数目標とゾーニングの二本柱になっている。

4区分の扱いは次のとおり。

区分おおよその場所クマへの対応
排除エリア市街地など原則駆除
管理強化エリア人里の近く原則駆除
緩衝地帯集落と山林の境界追い払い
コア生息地奥山生息環境の保全

注目すべきは、協議会の会長が「明らかに多いので今回の案ですと約4割削減。これでも足りない」と述べたことだ。削減幅が過大だという反論ではなく、専門家側から「4割では足りない」という評価が出た。数字の重さの受け取り方が、数年前とは明確に変わっている。

県は11月からパブリックコメントを実施し、最終計画は2027年3月末に公表する予定だ。つまり、案の段階である今後数か月が、住民や関係団体が意見を出せる期間になる。

なぜ岩手でこの案なのか

岩手県のクマ対策は、この1年で急速に積み上げられてきた。県は2025年11月21日に「ツキノワグマ対策基本方針」を改定し、市町村職員などが自ら捕獲にあたる「ガバメントハンター」の確保・育成と、生活圏への出没を防ぐ研修会の開催を追記している。改定の背景として県が挙げたのは、2025年10月以降、住宅街や学校周辺での出没が相次いだことだった。

数字が先に動いていた

今年の県内の状況は、計画案の前提を裏づけている。

  • 出没件数: 8月末時点で約4,800件。前年同期を約1,300件上回る
  • 人身被害: 12人、うち死亡3人

ここで効いてくるのが、2025年9月に始まった緊急銃猟だ。市街地にクマが出た場合、市町村長の判断でハンターに発砲を認める制度で、改正鳥獣保護管理法に基づく。開始から1年でクマを対象とした実施は、8月末までに14道県で計81件。内訳は山形19件、新潟14件、岩手と富山が各8件と、東北・北陸に集中している。

岩手はすでに制度を8回使っている県だ。そのうえで「市街地は原則駆除」を計画本文に書き込もうとしている、という順番になる。

ここがポイント: 緊急銃猟は「出てしまった1頭」への緊急対応。今回の計画案は「そもそも何頭いるか」を減らす中期の設計で、時間軸が違う。両方そろって初めて、住宅地への出没が減るという筋書きになる。

撃つと決めるまでの時間

制度があっても、現場は速く動けない。時事通信の報道では、福島県郡山市で今年4月に住宅地へ出たクマが小学校周辺などを移動し、緊急銃猟に踏み切ったのは最初の目撃から約43時間後だった。夜間に発砲できるハンターがいなかったことも長引いた要因だという。

通学路にクマがいる状態が、2日近く続いた計算になる。青森県内でも、事前の役割分担と担い手育成が課題として指摘されている。計画に「原則駆除」と書いても、撃てる人と決められる体制がなければ、住民が待つ時間は短くならない。

生活の場面で何が変わるか

計画案が最終決定された場合、影響が出るのは登山者や猟友会だけではない。

  • 通学・通勤: 市街地や人里近くでの目撃は、追い払いより捕獲が前提の対応になる。学校の一斉下校や見守りの判断が早まる可能性がある
  • 庭・畑・果樹: 誘引物の除去は「マナー」から対策の前提条件へ。柿や栗の放置、生ごみの屋外保管が、ゾーニングの実効性を左右する
  • 市町村職員: ガバメントハンターの確保対象は職員。人口の少ない自治体では、担い手を1人育てられるかどうかが対応速度に直結する
  • 秋の山菜・きのこ採り: 山形県が9月1日から「特別警報」を設け、不要な外出の回避や入山制限を求める仕組みを整えたように、行動制限を伴う注意喚起は今後も出やすい

盛岡市や花巻市のように、出没情報や市の対策をサイトで随時更新している自治体もある。日付と場所で出没を追えるページは、この秋もっとも実用的な情報源になる。

受け止めは一本化していない

クマの頭数管理は、国レベルでも方針が変わった。環境省は2026年2月、都道府県が計画を作る際のガイドライン改定案を公表し、保護重視から個体数管理の強化へ軸を移した。成獣400頭以上の個体群には適正な目標頭数を設定する、という考え方だ。

ネット上の反応も、ひとつにまとまってはいない。おおまかには三つの傾向がある。

  • 被害地域の住民からは「遅すぎた」「生活が先」という支持
  • 自然保護の立場からは、大量捕獲一辺倒への慎重論。日本熊森協会は生息地の回復とエサ場の確保、被害防除への予算配分を求め、捕殺は問題個体に限るべきだと主張している
  • 実務面では、目標頭数の根拠となる生息数推計の精度や、ハンターの高齢化を心配する声

対立点は「クマを減らすか否か」よりも、何を根拠に何頭を目標とし、誰が実行するのかに寄っている。推計5,200頭という数字自体、幅を持つ推定値だ。目標3,400頭の妥当性は、推計手法の説明とセットでなければ検証できない。

次に見るべき論点

  • 11月のパブリックコメントで、目標頭数の算定根拠がどこまで示されるか
  • 排除エリア・管理強化エリアの線をどの縮尺で引くのか。市町村ごとの地図が出るかどうか
  • 夜間対応の空白をどう埋めるか。郡山市の43時間は、制度ではなく体制の問題だった
  • ガバメントハンターが何人確保できたか。研修の実施回数ではなく人数で見る
  • 秋のドングリの実り具合。悪い年は、計画の決定を待たずに出没が増える

最終計画の公表は2027年3月末。ただし今年の秋は、それより先に来る。

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