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EU全域で9月27日から「法定保証2年」の掲示が義務に 20カ国が国内法整備に遅れたまま|2026年9月24日版

欧州の家電店の店内で、レジ近くの壁に掲示された青と黄の統一告知ポスターを買い物客が見上げている様子。

2026年9月27日から、EUで消費者に物を売るすべての事業者が、同じデザインの掲示物を店頭とECサイトに出さなければならなくなる。書かれている内容は一つ、「この商品には最低2年の法定保証がある」ということだ。

ポスターのサイズ、配色、フォント、QRコードの位置まで規則で固定されている。店側が自由に作り直すことは認められない。

やっかいなのは、制度が動き出す側の準備だ。根拠となるEU指令の国内法化は期限が2026年3月27日だったが、欧州委員会は5月28日、間に合わなかった20カ国に対して違反手続きを開始している。ルールは27日に全域で適用されるのに、それを執行する国内の受け皿が国によって揃っていない。

先に押さえる4点

  • 対象はEU27カ国+EEAの、消費者向けに商品を売る事業者すべて。実店舗もECも、EU域外の売り手も含む
  • 掲示物は2種類。全員が出す「法定保証の統一告知」と、条件を満たしたときだけ使う「GARANラベル」
  • デザインは実施規則(EU)2025/1960で完全に固定。色替え、トリミング、要素の追加は禁止
  • 既存在庫への経過措置はない。9月27日をまたいだ時点で店頭の見え方が変わる
目次

店頭とECに並ぶ2つの掲示物

根拠は「緑の移行における消費者のエンパワーメント指令」(Directive (EU) 2024/825、通称EmpCo指令)。環境訴求の規制で語られることの多い指令だが、9月27日から生活者の目に最初に入るのは、保証の掲示のほうになる。

誰もが出す「法定保証の統一告知」

EUではもともと、消費者が買った商品に不適合があった場合、最低2年間は無償の修理・交換などを求められる。その権利自体は新しくない。新しいのは、その存在を店側が能動的に知らせる義務が生まれることだ。

告知のフォーマットは細かく決まっている。

  • 見出しは「LEGAL GUARANTEE」、盾に「G」のロゴ、その下に4つの説明ブロック(最低2年の保護、請求できる場面、修理・交換が第一の救済であること、減額・返金という選択肢)
  • 指定色はPantone Reflex Blue C(#003399)、Pantone Yellow C、Pantone Black 6 C
  • 印刷物は視認距離に応じてA4(0.3〜0.5m)からA1(2〜3m)まで。実店舗では白黒も可
  • QRコードは消費者の言語に対応したYour Europeポータルへ飛ぶ。位置の移動は不可

ECサイトの場合は扱いがさらに具体的だ。フルカラー(RGB)で、初期表示サイズのまま判読できること。QRと同じ遷移先へのクリック可能なリンクを添えること。そして掲示場所は商品ページだけでなく、注文直前の決済画面と注文確認メールにも及ぶ。カートに入れてから購入までの導線上で、保証の説明を消費者が避けて通れないようにする設計になっている。

条件付きで義務になる「GARANラベル」

もう一方のGARANラベルは、メーカーが任意で提供する「耐久性の商業保証」を表示するものだ。ただし、任意なのは保証を出すかどうかまでで、次の条件を満たした瞬間にラベルの使用は義務に変わる。

  • 消費者にとって無償であること
  • 部品単位ではなく、商品全体をカバーすること
  • 期間が2年を超えること

編集できる箇所は3つだけ。年数、ブランド名、モデル識別子である。年数は整数か、半年刻みの場合に「2,5」「4,5」とコンマで書く形しか認められない。「4.1年」「4.2年」といった中途半端な値は使えない。印刷時は最小95×100mm、書体はInter、数字は80pt、QRは最低2×2cm。

 法定保証の統一告知GARANラベル
対象消費者向けに商品を売る事業者すべて条件を満たす耐久性保証がある商品のみ
性格常時義務条件成立時に義務
掲示場所店内の見やすい位置/商品ページ・決済画面・確認メール棚・包装・下げ札/商品のすぐ横
可変部分なし年数・ブランド・モデルの3つのみ

ラベルの乱用にも歯止めがある。複数商品を並べた広告で、全部が対象でないのに全体が保証されているように見せることは認められない。ラベルを出せるのは、実際にその保証が付いている商品のところだけだ。

ここがポイント: 変わるのは消費者の権利ではなく、「知らされ方」。2年の法定保証はもともとあったが、9月27日からは店とサイトがそれを黙っていられなくなる。

20カ国が期限に間に合わなかった

制度の中身以上に、いま現地で議論になっているのは足並みのほうだ。

EmpCo指令の国内法化期限は2026年3月27日。ところが欧州委員会は5月28日、期限までに完全な国内法化を通知しなかった20カ国に違反手続きを開始した。ベルギー、ブルガリア、チェコ、エストニア、ギリシャ、スペイン、フランス、クロアチア、キプロス、ラトビア、ルクセンブルク、ハンガリー、マルタ、オランダ、オーストリア、ポーランド、ポルトガル、スロベニア、フィンランド、スウェーデンが名を連ねる。

対照的に、早々に片付けた国もある。

  • ドイツ:2026年2月19日、不正競争防止法(UWG)改正で対応済み。執行は競争センターや競合事業者による差止めが中心
  • イタリア:3月9日に政令を採択、3月24日発効。執行機関は競争当局AGCM
  • フランス:通称DDAUE法案が国民議会での採決待ち。執行はDGCCRF(競争・消費・不正防止総局)が担う見込み
  • オランダ:2025年12月22日に法案提出、執行機関はACM

遅れが何を意味するか。適用日そのものは9月27日でEU共通だが、違反を誰がどう取り締まるか、制裁をどの条文で科すかは各国法に依存する。整備が終わっていない国では、消費者が苦情を持ち込む先や、事業者が参照すべき罰則の水準が当面はっきりしない状態が残る。

制裁の重さ自体は軽くない。オムニバス指令(2019/2161)の枠組みでは、複数国にまたがる広範な違反について、年間売上高の4%以上を上限とする制裁金を各国が用意することが求められている。ドイツのように競合他社や消費者団体が差止めを打てる国では、当局の動きを待たずに民間側から圧力がかかる。

誰の、どの場面に効いてくるか

EU域内の小売とEC運営者

一番手間がかかるのは、規則どおりの画像を正しい場所に出す作業そのものだ。商品ページのテンプレート、決済画面、注文確認メールという3カ所は、多くのECで別々のシステムが吐き出している。ここを9月27日までに揃えなければならない。GARANラベルについても、年数・ブランド・モデルという3つの値を商品データとして持ち回る必要があるが、実施規則は商品フィードのデータ項目までは定めていない。設計は各社と各プラットフォーム任せになる。

なお、売り手側がメーカーに保証情報を能動的に問い合わせる義務までは課されていない。情報を渡すのはメーカーの側で、引き渡しまでに耐久性保証の内容を耐久的な媒体で提供することが求められる。

EUで売る日本のメーカー

家電、スマートフォン、PC、生活家電といったカテゴリは、まさにこのラベルが想定する領域だ。EU向けに「メーカー保証◯年」を訴求してきた企業は、その保証が無償・全体・2年超という条件を満たすなら、訴求の見せ方をGARANラベルに置き換えることになる。自社デザインの保証バッジを、そのまま使い続ける選択肢はない。

日本国内でよく見る「メーカー保証1年」との落差も、あらためて可視化される。EUでは2年が出発点で、そこから上積みした分だけがラベルに載る。

買う側

店頭でもECでも、同じ盾のマークと同じ文面が繰り返し目に入るようになる。「修理・交換が先で、減額や返金はその次」という救済の順番まで告知に明記されるため、これまで店の裁量で説明されてきた部分が定型化される。EUのサイトから越境で買い物をする日本の消費者にとっても、決済直前に表示されるこの告知は、その商品にどこまでの保証が付いているかを確認する手がかりになる。

今後の注目点

  • 未整備の国での執行:9月27日以降、国内法が間に合わなかった国で苦情の受け皿と罰則がどう機能するか。違反手続きの次の段階に進む国が出るかどうか
  • GARANラベルの普及度:条件が「無償・全体・2年超」と厳しいため、実際に棚に並ぶラベルがどれだけ増えるか。逆に、条件を避けて保証設計を2年ちょうどに寄せる動きが出るかどうか
  • 同じ指令の環境訴求規制:オフセット依存の「カーボンニュートラル」表示の禁止や、生成的な「エコ」表現の規制も同じ9月27日から動く。保証の掲示よりも、こちらのほうが企業の広告表現に深く効いてくる可能性がある

27日を過ぎたら、EUのECサイトで何か一つ商品ページを開いてみるといい。盾のマークが出ているか、決済画面まで付いてくるか。制度が紙の上で終わっているかどうかは、そこで一番早く分かる。

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