「エコフレンドリー」と書けなくなる日 EUの新表示ルールが9月27日始動、20か国は法整備が間に合わず
9月27日、EU域内の店頭とネット通販の表示が一斉に変わる。商品パッケージに「エコフレンドリー」「グリーン」とだけ書くこと、自社でつくったサステナビリティ認証マークを貼ること、排出権の購入だけを根拠に「カーボンニュートラル」と名乗ること——これらが不公正取引のブラックリスト行為として原則禁止になる。
同じ日から、もう一つの義務も始まる。EUで消費者に商品を売る事業者は、最低2年の法定保証について統一デザインの告知を掲示しなければならない。メーカーが無償で2年超の耐久保証を付けている商品には、「GARAN」という共通ラベルが付く。
ところが、この制度を国内法に落とし込む作業が終わっているのは、27加盟国のうち7か国だけだ。残り20か国には欧州委員会から違反手続きの書簡が届いている。施行日は動かないのに、取り締まる法律が揃っていない——それが今週末の実情である。
ここがポイント: 規制の中身は「環境アピールの禁止リスト」と「保証表示の義務化」の二階建て。前者は広告の言い回しを、後者は商品ページと値札そのものを変える。
まず何が変わるのか(3点整理)
- 漠然とした環境アピールの禁止:「環境にやさしい」「気候に配慮」といった一般的な表現は、優れた環境性能を立証できない限り使えない
- 保証情報の義務表示:すべてのB2C商品で法定保証の統一告知が必要。条件を満たす商品にはGARANラベル
- 適用範囲は域外にも及ぶ:EU域外から欧州の消費者に売る事業者も対象。既存商品への猶予期間はない
環境アピールの「禁止リスト」は何を狙っているか
今回の根拠法は、2024年に成立した「グリーン移行に向けた消費者エンパワメント指令」(Directive (EU) 2024/825、通称EmpCo/ECGT)。不公正取引方法指令と消費者権利指令を書き換える形で、12の新しい禁止行為を追加した。
言葉そのものを規制する
特徴は、企業の環境活動そのものではなく、消費者に見せる言葉を規制する点にある。
- 第三者認証や公的機関の裏づけがないサステナビリティ認証マークの表示
- 商品の一部だけが環境配慮型なのに、商品全体をそう見せる訴求
- バリューチェーン外のオフセットだけを根拠にした気候中立の主張
- 「2030年までにカーボンニュートラル」といった将来宣言のうち、測定可能な目標と第三者検証を伴う実行計画がないもの
最後の項目が重く、企業のウェブサイトによくある長期目標の掲示も、裏づけの薄いものは消費者向けの文脈では使えなくなる。
「壊れやすさ」も禁止対象
耐久性に関する虚偽の説明、修理可能性の誇張に加え、意図的に寿命を縮める設計の商品を売り込む行為も禁じられる。デジタル製品では、ソフトウェア更新が性能に悪影響を与える場合にそれを伏せること、更新が機能改善にすぎないのかセキュリティ上必要なのかを説明しないことが問題になる。
制裁は既存の消費者保護の枠組みに乗る。上限は年間売上高の4%以上、または最低200万ユーロ。各国の消費者保護当局(アイルランドならCCPC)が執行し、競合他社や消費者による民事アクションも使える。
値札が変わる——法定保証の告知とGARANラベル
広告の言い回し以上に、買い物客の目に直接入るのがこちらだ。欧州委員会の実施規則(Commission Implementing Regulation (EU) 2025/1960)が、二つの表示物のデザインを細かく定めている。
| 表示物 | 誰が | 内容と条件 | サイズ・形式 |
|---|---|---|---|
| 法定保証の統一告知 | 販売者(小売・EC) | EU共通の最低2年の法定保証と救済手段を説明。QRコード付き | 印刷時A4以上。オンラインはカラー必須 |
| GARANラベル | 生産者 | 無償・商品全体・2年超の耐久保証がある場合のみ表示可 | 印刷時95×100mm以上。年数・ブランド・型番のみ可変 |
掲示場所も指定されている。実店舗なら壁面やレジ周りの目立つ位置、ECなら商品詳細ページ、カート、商品広告。GARANラベルは商品本体やパッケージに直接貼ることもできる。
注意すべきは、部品単位の保証ではラベルを使えない点だ。「バッテリーのみ5年保証」といった限定保証は、ラベルではなく限定であることの明示で対応する。自社の保証がラベルの条件を満たすかどうかを、型番単位で棚卸しする必要がある。
「施行日は来るが法律がない」というねじれ
国内法化の期限は2026年3月27日だった。守ったのはわずか7か国。5月28日、欧州委員会はベルギー、スペイン、フランス、オランダ、オーストリア、ポーランド、スウェーデンなど20か国に正式通知(letter of formal notice)を送り、違反手続きを開始した。
これは消費者にも事業者にも面倒を持ち込む。
- 国内法が未整備の国では、9月27日時点で消費者保護当局が使える執行手段が限られる
- 一方でEU規則である実施規則(GARANラベル等)は加盟国の立法を待たずに適用される
- 結果として、同じ商品が国境をまたぐと表示の扱いが変わる期間が生まれる
さらに背景として押さえておきたいのが、環境主張の立証方法を細かく定めるはずだった「グリーンクレーム指令」の失速だ。2025年6月、欧州委員会が提案撤回の意向を示して三者協議は中止され、イタリアが支持を撤回。正式に撤回されたわけではないが、立法作業は止まったままだ。
つまり、「何を言ってはいけないか」の禁止リストだけが先に動き出し、「どう証明すればいいか」の共通ルールは宙に浮いている。企業が自社の主張をどの水準で立証すれば安全なのかは、当面、各国当局の運用と裁判例が決めることになる。
日本の事業者と買い物客にどう関わるか
対象は「EUの消費者に向けて商業活動を行う事業者」であり、所在地は問われない。家電、アパレル、化粧品、自転車部品——EUのECモールに出品している日本の事業者は、そのまま当事者になる。
具体的に見直しが要るのは次のような場面だ。
- 欧州向け商品ページの「環境配慮素材」「サステナブル」といった見出し表現
- 自社デザインのエコマーク、独自の環境スコア表示
- 「メーカー3年保証」をうたう商品の、ラベル要件との整合
- 欧州向けカタログ、パッケージ、店頭POPの在庫(既存商品にも猶予はない)
マーケットプレイス経由の出品には、もう一段の不確実性がある。2026年7月時点でも、Amazonは法定保証告知やGARANラベルを商品ページ上でどう表示させるかの公式仕様を示していないと報告されている。プラットフォームが対応枠を用意しない限り、表示責任は出品者側に残るという構図だ。
日本国内の売り場が直ちに変わるわけではない。ただし、欧州向けに作り直した表現やラベルは、多言語パッケージやグローバル共通の商品ページを通じて日本の店頭にも流れ込む。輸入雑貨や海外家電の箱に見慣れないチェックマークのラベルが増えたら、それは2年超・無償・全体保証という具体的な中身を意味する。
今後の注目点
- 執行の第一号がどこから出るか:法整備を終えた7か国と、未整備の20か国で、当局の動きに差が出るか
- 「立証の物差し」がどこで決まるか:グリーンクレーム指令が止まったまま、各国当局のガイダンスや裁判例が事実上の基準になるのか
- プラットフォームの対応:大手ECが商品ページにラベル枠を用意するのか、出品者任せが続くのか
9月27日以降、欧州のネット通販を開いたときに、商品ページのどこに保証の説明が置かれているかを見てほしい。義務が現場でどこまで実装されたかは、そこに一番早く表れる。
参照リンク
- Latham & Watkins: EU Empowering Consumers Directive — New Rules on Green Claims Apply From 27 September 2026
- Your Europe(欧州委員会): The EU legal guarantee notice and GARAN label
- European Commission: Harmonised notice on the legal guarantee of conformity and harmonised label on the commercial guarantee of durability
- Department of Enterprise, Tourism and Employment (Ireland): Empowering Consumers for the Green Transition
- Jones Day: EU Commission Pushes for Transposition of the EmpCo Directive on Environmental Claims
- CMS: Implementation Tracker for the EmpCo Directive
- Latham & Watkins: European Commission Announces Intention to Withdraw EU Green Claims Directive Proposal
- Noerr: New labelling obligations for commercial guarantees under the EmpCo Directive
- GARAN-Label.com: Adding the GARAN-Label on Amazon – Seller Guide
