給食が家庭の防災訓練に 江戸川区97校で始まった「ローリングストック給食」|2026年9月17日版
東京都江戸川区が、区立小中学校97校で「ローリングストック給食」を始めました。乾物や缶詰などを毎月の給食に取り入れ、児童・生徒が食べながら備蓄の方法を学ぶ取り組みです。
重要なのは、非常食を一度配って終わるのではなく、毎月の給食を家庭の備蓄を見直すきっかけにする点です。防災教育を特別行事から日常へ移す試みとして注目されます。
- 対象は江戸川区立の小中学校97校
- 各校が毎月任意の日に実施
- 缶詰や乾物を献立に使い、食材の備え方も学習
- 給食だよりなどを通じて家庭にも実践を促す
97校で毎月実施、初日はカレーやサラダに備蓄食材
江戸川区は2026年9月1日、全区立小中学校でローリングストック給食を開始しました。各校は毎月、任意の日を選び、保存しやすい食材を献立に組み込みます。
初日に区立船堀第二小学校で約660人に提供されたのは、次のメニューでした。
- トマト缶を使った夏野菜カレー
- 大豆水煮缶を使った小松菜と揚げ大豆のサラダ
- 干しブドウやパイン缶を使ったフルーツヨーグルト
単に缶詰を食べるだけではありません。給食前には学校が作成した動画を各教室で流し、災害への備えやローリングストックの方法、その日の献立に使われた保存可能な食材を説明しました。
区は実施に先立ち、7月から各校の栄養士や調理師を対象に研修を行っています。防災担当だけでなく、日々の献立を担う職員が参加することで、取り組みを継続しやすくしています。
「非常時だけの食品」にしないことが狙い
ローリングストックとは、普段食べる食品を少し多めに買い、古いものから使い、減った分を補充する備蓄方法です。
農林水産省は、物流の停止などで食品を入手できない事態に備え、家庭では人数分の食品を最低3日分、できれば1週間分用意することが望ましいとしています。ただし、長期保存食だけで全量をそろえると、費用や賞味期限の管理が負担になりがちです。
そこで、米、乾麺、缶詰、レトルト食品、乾物などを普段の食事で使いながら補充します。これなら期限切れを防ぎやすく、災害時にも食べ慣れたものを用意できます。
ここがポイント: 江戸川区の取り組みは、備蓄の知識を教室で覚えるだけでなく、実際の献立と家庭の買い置きを結び付けています。
なぜ学校給食で行うのか
江戸川区は、小中学校など112か所を災害時の避難所に指定し、食料や生活用品を備蓄しています。一方、大規模災害では自宅にとどまる「在宅避難」も想定されるため、行政の備蓄だけでなく各家庭の準備が欠かせません。
学校給食には、子どもから家庭へ情報を持ち帰れる強みがあります。船堀第二小学校の児童は区の発表で、自宅のストックの期限を確認し、買い替えについて家族で話し合いたいと述べています。
別の区立校である二之江小学校も、学校日記で米や果物缶をローリングストックに適した食品として紹介しました。災害時に不足しやすいビタミンや食物繊維を、果物缶などで補えることも伝えています。
この反応から見えるのは、子どもが「防災の授業を受けた」と報告するだけでなく、冷蔵庫や食品棚の中身を家族と確認する入口になり得ることです。
家庭で確認したいのは「量」だけではない
備蓄というと、水やカップ麺の個数に目が向きがちです。しかし、実際の避難生活では、食べられるか、調理できるか、栄養が偏らないかも問題になります。
家族に合った食品か
乳幼児、高齢者、持病のある人、食物アレルギーのある人には、それぞれに適した食品が必要です。普段から食べている商品を多めに置けば、非常時に初めて口にするリスクを減らせます。
電気やガスがなくても使えるか
缶詰でも缶切りが必要な商品があります。乾麺やレトルト食品には加熱用の水やカセットコンロが必要です。食品だけを確認せず、調理器具や燃料まで一緒に点検する必要があります。
栄養が炭水化物に偏っていないか
江戸川区は、魚や肉の缶詰、野菜ジュース、果物缶なども活用し、たんぱく質やビタミン、ミネラルを意識するよう案内しています。今回の給食でも、大豆水煮缶や果物缶を献立に入れ、備蓄食材の使い方を具体的に示しました。
今後の焦点は「毎月」が家庭の行動につながるか
この取り組みは9月の防災行事だけではなく、各校で毎月続ける計画です。今後は、給食で学んだ内容が家庭での買い足しや期限確認につながったか、学校ごとの献立や学習内容がどのように共有されるかが焦点になります。
家庭では、次の3点から始められます。
- 家にある水と食品を人数・日数で数える
- 賞味期限が近いものを今週の食事で使う
- 使った食品を次の買い物で一つ補充する
給食で食べた缶詰や乾物を帰宅後に食品棚で探す。江戸川区の試みが防災力につながるかどうかは、その小さな行動が毎月繰り返されるかにかかっています。
