処方薬の負担はどう変わる?OTC類似薬「25%上乗せ」の制度設計が最終段階へ|2026年9月16日版
花粉症薬や解熱鎮痛薬など、市販薬と成分が近い一部の処方薬について、2027年3月から薬剤費の25%相当を通常の窓口負担とは別に支払う制度の準備が進んでいます。
厚生労働省は9月16日の社会保障審議会医療保険部会でも実施方法を議論。対象はまず77成分、約1,100品目を想定していますが、がん治療や指定難病、長期治療などには追加負担を求めない方向です。
- 保険適用そのものを一律に外す制度ではない
- 通常の1〜3割負担に「薬剤費の25%相当」が加わる
- 対象かどうかは薬の名前だけでなく、病気や治療状況でも変わる
- 医療機関ごとの判断のばらつきと受診控えの防止が大きな課題
何が変わるのか
今回の見直しでは、医療用医薬品のうち、市販のOTC医薬品と成分・投与経路が同じで、1日最大用量も異ならない77成分が当初の対象になります。
制度開始は2027年3月を想定。対象薬が処方された場合、患者は従来の自己負担に加え、薬剤費の4分の1を「特別の料金」として支払います。診察料や検査料などまで一律に保険外になるわけではありません。
3割負担の人は薬剤費の47.5%相当に
薬剤費を100とした単純な例では、25を特別料金として患者が負担し、残る75に通常の自己負担割合を適用します。
3割負担の人なら、通常負担は75の3割に当たる22.5。特別料金25と合わせ、薬剤費に対する負担は合計47.5になります。
ただし、実際の会計には診察料や調剤に関する費用なども含まれるため、支払総額が一律に同じ割合で増えるわけではありません。
すべての処方が上乗せ対象になるわけではない
厚労省の検討では、同じ成分でも、市販薬では対応できない病気に使う場合や、医療上の配慮が必要な患者には追加負担を求めない整理が進んでいます。
主な対象外として検討されているのは、次のようなケースです。
- こどもへの処方
- 入院中の患者への処方
- がん治療中や、がん治療に伴う副作用への処方
- 指定難病や小児慢性特定疾病に関連する治療
- 年間を通じた長期使用が医療上必要な場合
- OTC医薬品では認められていない効能・効果に対する処方
- 生活保護受給者など、公費負担との調整が必要な場合
薬の成分名だけを見て、「この薬は必ず高くなる」と判断できない点が重要です。医師が診断名、治療期間、患者の状態を確認したうえで対象かどうかを判断します。
ここがポイント: 市販薬に似た処方薬をすべて保険から外すのではなく、通常の保険診療を残したまま一部に特別料金を加える仕組みです。同じ薬でも処方理由によって扱いが分かれます。
長期治療とアトピー性皮膚炎はどう扱うのか
今回の議論で特に時間が割かれているのが、慢性的に薬を使う患者への配慮です。
長期使用は「半年の実績」と医師の判断を組み合わせる
厚労省が9月11日に示した案では、少なくとも半年程度の使用実績があり、その後も年間を通じておおむね50週以上の使用が必要だと医師が認めた場合、追加負担の対象外とする考え方が示されました。
過去の処方を一件ずつ網羅的に調べるのではなく、お薬手帳、薬剤情報、診療情報提供書など、診察時に確認できる資料を使います。
治療を始めたばかりで履歴を確認できない患者は、少なくとも半年ほど追加負担の対象になる可能性があります。ここは患者の納得を得にくい部分であり、制度開始前の説明が欠かせません。
再発を防ぐステロイド外用も例外を検討
アトピー性皮膚炎では、症状が落ち着いた後も週2回程度ステロイド外用薬を塗り、再燃を防ぐ「プロアクティブ療法」があります。
診療ガイドラインに位置づけられた継続治療であるため、通年で定期的に行う場合は追加負担の対象外とする案が示されています。一方、症状が出たときだけ塗る使い方や、一定期間で終了する場合は対象となる可能性があります。
難病患者は証明書類の準備が必要になる
指定難病に関連する治療は追加負担の対象外となる方向ですが、窓口では患者が対象者であることを確認しなければなりません。
基本となる書類は、特定医療費受給者証または登録者証です。ただし、登録者証がまだ普及途上であるため、2027年度末までは次のような書類による代替も認める案が出ています。
- 登録者証の申請に使う臨床調査個人票
- 重症度基準を満たさないことなどを理由とする不認定通知書
証明書がなければ、本来は配慮対象の患者でも窓口で確認できないおそれがあります。指定難病の患者は、施行前に主治医や自治体へ必要書類を確認しておくと安心です。
なぜ見直すのか
政府は、現役世代を中心とする保険料負担の上昇を抑え、医療保険制度を持続させることを制度導入の理由に挙げています。軽い症状では市販薬を使う「セルフメディケーション」を促す狙いもあります。
一方、患者団体や審議会委員からは、次の懸念が示されています。
- 少額でも継続的な負担増が受診控えや服薬中断につながらないか
- 医師や医療機関によって対象判定が変わらないか
- 市販薬への切り替えで、必要な診断が遅れないか
- 医療費削減額に対して患者と医療現場の負担が大きすぎないか
- 生活保護に該当しない低所得者への配慮が十分か
ネット上の反応でも「25%上乗せ」の計算方法が分かりにくいという受け止めや、慢性疾患の患者に負担が集中することへの懸念が目立ちます。ただし、個々の薬が対象になるかは処方目的によって異なり、薬の商品名だけを挙げた情報には注意が必要です。
今後の注目点
制度の骨格は固まりつつありますが、患者が実際に経験するのは病院や薬局の窓口です。施行までに確認したいのは、次の4点です。
- 対象となる医薬品の最終一覧
- 追加負担を求めない条件と具体例
- 電子カルテやレセプトコンピューターの対応状況
- 施行後の受診控え、服薬中断、重症化に関する検証方法
厚労省は、医療機関向けチェックシート、全国共通のQ&A、患者説明資料などを準備する方針です。処方薬を継続している人にとって最も実用的な対応は、自己判断で市販薬へ切り替えることではありません。対象薬か、例外に当たるか、代替薬があるかを次回の診察や薬局で確認することが、制度開始に向けた第一歩になります。
