東神楽町「かぐらいど」は9月末まで――予約型の生活交通、その先を決める論点|2026年9月3日版
北海道東神楽町のオンデマンド交通「かぐらいど」は、2026年9月30日まで実証運行を続けています。町内の指定場所から指定場所へ移動でき、通院や買い物など、定時運行のバスだけでは合わせにくい外出を支える仕組みです。
ただし、現在も位置づけは「実証」です。10月以降の扱いを考えるうえでは、利用者数だけでなく、町営バスとの役割分担や費用、予約に不慣れな人が使える環境まで確認する必要があります。
- 運行は平日の午前9時から午後4時まで
- 対象は東神楽町民で、町内全域をドア・ツー・ドア方式で運行
- 大人はエリア内400円、70歳以上は年度内10回まで1回200円
- LINEと電話の両方から予約でき、締め切りは原則として希望時刻の30分前
町内の「行きたい場所」に合わせて走る
かぐらいどは、決まった停留所と時刻表に沿って巡回するバスではありません。利用者の予約を受け、複数の乗車希望を組み合わせながら車両を配車します。
東神楽町の案内による現在の運行条件は次の通りです。
- 実施期間:2025年10月6日~2026年9月30日
- 運行日時:平日午前9時~午後4時
- 利用対象:東神楽町在住者
- 運行範囲:東神楽町全域。ただし旭川空港エリアは発着指定不可
- 乗降方法:利用者が指定した場所で乗り降りするドア・ツー・ドア方式
- 運行主体:東神楽町役場による自家用有償旅客運送
AIが乗車希望をまとめて経路を計算するため、ほかの利用者との乗り合いが発生します。その場合、予約時に示された到着時刻より最大10分ほど遅れる可能性があります。
つまり、タクシーに近い使い勝手を持ちながら、完全な貸し切りではありません。診察や予約など到着時刻が決まっている外出では、余裕を持った便を選ぶ必要があります。
料金と予約方法で押さえたいこと
基本運賃は、町内を三つに分けたエリアを基準に計算されます。
通常運賃
- 大人(中学生以上):エリア内400円
- 子ども(小学生以下):エリア内200円
- エリアをまたぐ場合:1エリアごとに大人100円、子ども50円を加算
たとえば八千代地区からひじり野地区まで二つのエリアをまたぐ場合、大人運賃は600円です。支払いには現金のほか、町営スクールバスと共通の回数券も利用できます。
障害者手帳を持つ人などは、大人200円、子ども100円となり、エリア加算はありません。対象となる利用者の条件や介護者への適用は、乗車前に町の案内で確認しておくと安心です。
70歳以上は年度内10回まで200円
東神楽町に住民登録がある満70歳以上の人は、専用の高齢者割引カードを提示すると、年度内10回まで1回200円で乗車できます。
カードは複合施設はなのわの健康ふくし課窓口、またはふれあい交流館で申請できます。対象者が自動的に割引されるわけではなく、事前のカード取得が必要です。
スマホがなくても電話予約ができる
予約は乗車日の3日前から受け付けています。
- LINEアプリ「MITT」:24時間受付。予約確認や変更、乗車前の通知に対応
- コールセンター:平日午前8時~午後5時に受付
- 予約締め切り:原則として希望時刻の30分前
電話窓口が残されているため、スマートフォンを使わない人も予約できます。一方、電話では早朝・夜間や土日祝日に申し込めず、乗車前のリマインド通知もありません。
延長の背景に「利用増」と継続を望む声
町が公表した2026年度の公共交通実施方針案では、利用者は増加傾向にあり、町民向けサービスとして定着しつつあると整理されています。町民アンケートでも満足度が高く、継続を求める声が多数あったとしています。
この受け止めを踏まえ、当初の実証期間は9月30日まで延長されました。北海道新聞も実証開始時、利用者から乗り継ぎなしで移動できる利便性が評価されていると報じています。
一方、町は本格運行へ即座に切り替えず、町営バスとの役割分担を見直す必要があるとして、実証の形を維持しました。
ここがポイント: かぐらいどの評価は「便利だったか」だけでは決まりません。限られた車両と予算で、路線バスが拾いにくい通院・買い物需要をどこまで支えられたかが重要です。
本格運行を左右する三つの論点
運行終了日が近づくなか、次に注目したいのは制度を残すか否かだけではありません。どのような形なら持続できるかです。
1. 町営バスと利用者を奪い合わないか
町内には既存の町営バスがあります。かぐらいどの利便性が高くても、バスから利用者が移るだけなら、公共交通全体の維持費が膨らむ恐れがあります。
反対に、バス停まで歩けない人や、時刻表と通院時間が合わない人の外出を新たに生み出しているなら、補完交通としての役割は明確です。今後は、利用目的や移動時間帯を分けた検証が欠かせません。
2. 予約できる時間と運行時間で需要を拾えるか
平日の午前9時から午後4時という運行枠は、日中の通院や買い物には合わせやすい一方、早朝の受診、夕方以降の用事、土日祝日の移動には使えません。通勤・通学目的の利用も制限されています。
すべての移動需要を一つのサービスで担うのは現実的ではありません。それでも、予約が集中する時間帯や断られた需要を確認すれば、必要な運行枠を絞り込めます。
3. 利用料金と公費負担の釣り合い
2026年4月から、障害者手帳を持つ人などの運賃は無料から一部負担へ変更されました。町は、持続可能な運営と既存交通との基準統一を理由に挙げています。
高齢者には利用を試すきっかけとして10回分の割引を用意しました。負担を一律に軽くするのではなく、外出機会を増やしたい層へ絞って支援する設計です。
今後は、1人を1回運ぶために必要な運行費と、住民が負担できる運賃の差を町がどのように埋めるのかが焦点になります。
9月中に利用者が確認しておきたいこと
実証期間は9月30日までです。利用を考えている町民は、次の点を事前に確認しておくとスムーズです。
- 高齢者割引を使う場合は、先に専用カードを申請する
- 診察予約などがある日は、最大10分程度の遅れも見込んで予約する
- 電話予約は受付時間が限られるため、休日中に平日の便を取りたい場合はLINEを使う
- 旭川空港エリアは発着地に指定できない
- 10月以降の運行については、町の公式発表を確認する
かぐらいどが残るかどうかは、車を運転できない住民の通院や買い物に直結します。次に見るべきなのは、単純な利用件数ではなく、既存のバスでは難しかった移動を何件支え、そのためにどれだけの費用がかかったのかという検証結果です。
