英国の商店街でベイプ店・賭博店を拒否可能に 地方自治体へ新権限|2026年9月1日版
英国政府は、ベイプ店や賭博店、24時間営業もある成人向けゲームセンターの出店を地方自治体が拒否しやすくする方針を打ち出した。狙いは一律禁止ではなく、住民と自治体が商店街の店舗構成を選べる制度へ変えることだ。
ただし、現時点では政府発表の段階であり、詳細は今後の協議と法制化で決まる。店舗規制だけで空き物件や商店街の衰退を解決できるのかという論点も残っている。
- ベイプ店と成人向けゲームセンターは、新規出店時に計画許可が必要になる見通し
- 賭博施設を原則認める方向に働いてきた「Aim to Permit」原則を撤廃する方針
- 犯罪との関連が疑われる店舗への閉鎖命令は、最長6カ月から12カ月へ延長予定
- 制度の実施時期や拒否基準などは、今後の協議・法制化が焦点
何が変わるのか
英国政府が2026年8月11日に公表した施策は、都市計画、賭博施設の許認可、犯罪対策という三つの手段を組み合わせている。
ベイプ店に計画許可を求める
現在、ベイプ店はコーヒー店や衣料品店などと同じ用途区分で扱われ、物件の使い方によっては個別の計画許可なしで開業できる。
政府はこの扱いを改め、新しいベイプ店に計画許可を求める方針だ。「一般的なコンビニエンスストア」と名乗って規制を回避できないよう、ベイプ店の定義も厳格化する。
これにより自治体は、たとえば学校の近くへの出店や、同種店舗が特定の通りに集中する計画を個別に審査できるようになる見込みだ。
賭博店を「原則許可」する仕組みを見直す
もう一つの柱が、2005年賭博法にある「Aim to Permit」と呼ばれる原則の撤廃だ。
この原則の下では、申請者が法定の許可条件を満たしている場合、地域住民から反対が出ても、自治体が「この地域にはすでに賭博施設が多い」といった理由だけで拒否することは難しい。政府はこの法的な傾きを改め、地域の事情を判断材料にできるようにする。
成人だけが利用でき、スロットマシンなどを設置する成人向けゲームセンターにも計画許可を求める。政府発表では、関連措置を2027年初めから実施する案が示されている。
ここがポイント: 英国の方針は特定業種の全国一律禁止ではない。出店の可否を中央の一律ルールだけで決めず、自治体が立地や店舗集中、住民の懸念を審査できるようにする制度変更だ。
なぜ商店街の問題として扱われているのか
政府が示した数字では、英国のパブとバーは2016年以降に約1,800店減った一方、ベイプ・たばこ店は245店増えて約2,200店となった。また、成人向けゲームセンター約1,450店の半数以上が、所得などの指標で最も困窮度の高い20%の地域に立地しているという。
ロンドン北西部のブレント区には80を超える賭博施設があり、ハールズデンでは徒歩10分圏内に賭博店が10店あると政府は説明している。問題視されているのは、1店舗の存在というより、特定の業種が生活圏の狭い範囲に集中することだ。
地方自治体の全国団体であるLocal Government Association(LGA)も方針を歓迎した。用途変更を許可不要とする制度が、商店街の構成に住民や自治体の意思を反映しにくくしてきたと指摘している。
規制だけでは空き店舗を埋められない
新しい権限があっても、自治体が望む書店、食料品店、飲食店や生活サービスが自動的に入居するわけではない。この点が政策の弱点だ。
ITV Newsによると、業界団体のBetting and Gaming Councilは、賭博店の数は2019年以降に3分の1以上減少し、約3,000店が閉鎖されたと反論している。合法的な賭博店と犯罪に関係する事業者を同列に扱うべきではなく、出店を抑えれば空き物件や雇用減少を招くとの主張だ。
ここには二つの異なる問題が重なっている。
- 違法商品、資金洗浄、脱税などが疑われる店舗への取り締まり
- 合法ではあっても、住民が過剰な集中を望まない業種の立地調整
前者には捜査と法執行が必要だ。後者は都市計画と地域住民の判断に属する。政府は、犯罪との関連が疑われる店舗に対する閉鎖命令の上限を6カ月から12カ月に延ばす方針も示しており、両者を別の手段で扱おうとしている。
日本の商店街政策にも通じる論点
日本でも、自治体は用途地域や条例、営業許可などを通じて店舗立地に関与する。ただし、合法的な業種について「地域に多すぎる」「学校に近い」といった理由で出店を調整する場合、営業の自由とのバランスや客観的な基準が欠かせない。
英国の試みで参考になるのは、規制対象の業種そのものより、次の手順だ。
- 店舗数だけでなく、学校からの距離や地域内の集中度を審査する
- 住民の意見を、単なる賛否ではなく計画許可の手続きに組み込む
- 合法店舗の立地規制と、犯罪が疑われる店舗への捜査を分ける
- 出店拒否と並行して、空き物件に別業種を呼び込む施策を用意する
英国政府は今後6カ月間、Planning Advisory Serviceと連携し、商店街の外観や店舗前面の改善事例を自治体に示すとしている。さらに、パブ、社交クラブ、ライブ音楽会場の事業税を翌年から20%引き下げる方針も掲げた。
つまり、入口を制限するだけでなく、残したい店舗の営業条件を改善できるかが問われる。
今後の注目点は3つ
今回の発表は完成した制度ではない。英国住宅・コミュニティ・地方自治省の説明では、協議を経て法制化するとされている。
今後は次の3点を確認したい。
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自治体が拒否できる基準
学校との距離、同業種の集中度、治安や公衆衛生など、判断材料がどこまで明文化されるか。 -
対象地域と開始時期
都市計画制度と賭博法では適用範囲が異なるため、地域別の実施方法を精査する必要がある。 -
空き店舗対策との組み合わせ
出店を断った区画に、住民が必要とする店やサービスを呼び込めなければ、商店街の再生にはつながらない。
2026年8月28日には、英国議会でもベイプ店の用途区分を変える根拠を問う質問が提出された。次に見るべきなのは、政府が地域ごとの実態を示すデータと、自治体が恣意的にならずに使える拒否基準を提示できるかどうかだ。
