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「再利用率99%」でも元の建物には戻らない 解体現場から追うコンクリート・木材・石膏ボードの行方

解体現場でコンクリート、木材、石膏ボードを分別する様子。

「再利用率99%」でも元の建物には戻らない 解体現場から追うコンクリート・木材・石膏ボードの行方

建物を解体して出た廃材は、すべて同じように資源へ戻るわけではありません。コンクリートはほぼ再資源化される一方、多くは道路の下に敹く砕石へ。木材はボード原料だけでなく燃料にもなり、石膏ボードは解体時の分別と受け皿不足が壁になります。

兵庫県は2026年6月、建設リサイクル法に基づく県内一斉パトロールを実施すると発表しました。現場で確認するのは、届出の有無だけではありません。コンクリートや木材などを分けて解体し、再資源化へ回しているかも対象です。

この記事で分かることは、次の4点です。

  • コンクリート塊の「再資源化率99.3%」が意味するもの
  • 木材の再利用と、燃料利用を同じ数字で見る際の注意点
  • 石膏ボードがコンクリートや木材と同じルートに乗りにくい理由
  • 解体を頼む施主や周辺住民が確認できるポイント
目次

兵庫の現場パトロールは何を確かめるのか

建設廃材の循環は、処理施設より前の「壊し方」でほぼ決まります。

兵庫県が毎年6月と10月に行うパトロールでは、建設リサイクル法の届出や分別解体、再資源化の実施状況を確認します。国も全国一斉パトロールを続けており、2024年に公表した実績では、建設リサイクル法関係の確認4,807件に対して83件の助言がありました。主な内容は、対象資材を再資源化するための助言です。

建設リサイクル法が再資源化を義務付ける主な対象は、一定規模以上の工事から出る次の資材です。

  • コンクリート
  • コンクリートと鉄から成る建設資材
  • アスファルト・コンクリート
  • 木材

例えば建築物の解体では、床面積の合計が80平方メートル以上の工事が対象になります。発注者は工事着手の7日前までに都道府県知事などへの届出が必要です。

ここで見落とせないのが、石膏ボードはこの「特定建設資材」に含まれていないことです。産業廃棄物として適正に扱う必要はありますが、コンクリートや木材と同じ法定ルートで再資源化が義務付けられているわけではありません。

コンクリートは99%再資源化、それでも「水平循環」ではない

コンクリート塊は量の面では優等生ですが、古い建物から新しい建物へ戻る循環はまだ限定的です。

国土交通省の2018年度確定値では、コンクリート塊の搬出量3,690万トンのうち3,665万トンが再資源化され、再資源化率は99.3%でした。最新の全国確定値として参照できる数字で、2024年度調査の結果は2026年中の公表予定とされています。

解体現場から出たコンクリートは、鉄筋や異物を除き、破砕・粒度調整されます。その主な行き先は次の通りです。

  • 道路の舗装を支える再生路盤材
  • 建物や構造物の埋め戻し材、基礎材
  • 条件を満たした再生骨材
  • 新しいコンクリートの材料

高い率の裏にある「用途の段差」

99.3%という数字だけを見ると、ほぼ完全な循環に見えます。しかし、古いコンクリートを新しい建物のコンクリートへ戻すには、強度や耐久性を左右する付着モルタルや不純物を取り除き、品質を安定させなければなりません。処理工程と費用が増えるため、比較的使いやすい路盤材への利用が中心になってきました。

ところが都市部では、建物の解体でコンクリート塊が増える一方、新設道路が減れば再生路盤材の需要も伸びません。経済産業省の2025年度3R表彰資料では、東京都で再生砕石の滞留が著しく、多くが他県へ搬出されているという業界の問題意識が紹介されています。

つまり、再資源化施設へ運んだ時点で話は終わりません。再生材を実際に購入し、工事で使う発注者がいなければ、地域内の循環は詰まります。

ここがポイント: コンクリートの次の課題は「捨てずに砕くこと」ではなく、建物から建物へ戻す用途を増やし、再生材の需要を排出地の近くにつくることです。

木材はチップになった後で二つの道に分かれる

木材の数字には、材料として残る再利用と、燃やして熱を得る利用が混在します。

2018年度の建設発生木材は、搬出量553万トンに対して再資源化量507万トン、縮減量25万トン、最終処分量21万トンでした。再資源化率は91.7%、焼却などによる縮減を含む再資源化・縮減率は96.2%です。

分別された木材は、釘や金物、石膏などを除いてチップ化され、状態や品質によって行き先が変わります。

材料として使える木材

異物や薬剤の影響が少なく、用途に合う品質を確保できれば、次の原料になります。

  • パーティクルボードなどの木質ボード
  • 製紙原料
  • 堆肥やマルチング材

これは木材の形を変えながら、材料として使い続けるマテリアルリサイクルです。木質ボードが再び建築に使われれば、資源を比較的長く社会の中に留められます。

燃料に回る木材

材料利用が難しい木材チップは、ボイラーやバイオマス発電などの燃料として使われます。埋め立てを避け、化石燃料の代替になり得る一方、燃焼後に木材そのものは残りません。

このため「96.2%」を、そのまま「ほぼすべてが新しい製品になった」と読むのは正確ではありません。見るべきなのは総量だけでなく、木質ボードなどへの材料利用と、熱回収の比率です。

塗料、防腐剤、接着剤、金属、石膏が混じれば用途は狭まります。重機で一気に壊すより、内装や建具を先に外して木材を分ける手間が、次の使い道を増やします。

石膏ボードはなぜ循環の難所になるのか

石膏ボードの難しさは、素材そのものより、古い建物から汚さずに取り出せるかにあります。

壁や天井に大量に使われる石膏ボードは、石膏の芯を紙で挟んだ建材です。新築現場の端材は材質や履歴が分かりやすく、メーカーによる回収やボード原料への再利用に適しています。

一方、解体材には壁紙、接着剤、木片、断熱材などが付着しやすく、古い建物ではアスベスト含有建材との区別も欠かせません。水にぬれて品質が落ちたものや、他の廃材と混ざったものも再利用が難しくなります。

主な行き先は次の通りです。

  • 石膏ボード原料として再び使用
  • セメント原料などへの利用
  • 条件を満たす用途への再生利用
  • 管理型最終処分場での埋め立て

廃石膏ボードは、紙と石膏を分ければ終わりではありません。品質を確認し、再生原料を安定して受け入れる工場まで運ぶ必要があります。地域に処理施設や需要先が少なければ、輸送費が再生利用を難しくします。

原料統計が示す再利用の規模

石膏ボード工業会によると、2025年に国内で使われた原料石膏355万6,000トンのうち、廃石膏ボード由来は40万2,000トンでした。前年の39万4,000トンからは増えています。

ただし、この40万2,000トンはボード生産に投入された再生原料の量であり、国内で発生した廃石膏ボード全体のリサイクル率ではありません。副産石膏や輸入天然石膏も含む原料構成と、解体現場から出る廃材の回収率は分けて考える必要があります。

環境省が紹介した長期推計では、廃石膏ボードの年間排出量は2032年に200万トンを超えるとされました。実際の到達時期は遅れる可能性があるものの、今後は新築端材より解体材の増加が中心になります。処理しやすい端材だけでなく、古い建物から出る汚れたボードをどう循環させるかが本番です。

三つの廃材を比べると、数字の読み方が変わる

同じ「リサイクル」でも、到達点は素材ごとに異なります。

  • コンクリート: ほぼ全量が再資源化されるが、道路用砕石への利用が中心。建物から建物への水平循環と需要確保が課題
  • 木材: ボードなどの材料利用と燃料利用に分岐。再資源化・縮減率だけでは循環の質を判断できない
  • 石膏ボード: 新築端材は戻しやすいが、解体材は混入物、品質、運搬距離、受け入れ能力に左右される

国土交通省が2020年の推進計画で掲げたのも、量から「質」への転換でした。1990年代に約60%だった建設廃棄物のリサイクル率は、2018年度には約97%まで上昇しています。次に問われるのは、再生後の用途、輸送距離、二酸化炭素排出、そして再生品が実際に売れるかです。

「再資源化施設へ搬出した」という一地点だけでなく、最終的に何へ変わり、どこで使われたかまで追う必要があります。

解体を依頼する人にも確認できることがある

施主が見積書と説明を確認すれば、安さだけを優先した混合廃棄を避けやすくなります。

住宅や店舗の解体を依頼するときは、次の点を事業者に確認できます。

  • 建設リサイクル法の対象工事か、届出は誰が行うか
  • 内装材を先に外す分別解体の手順が見積もられているか
  • コンクリート、木材、石膏ボードを現場で分けるか
  • 各品目をどの処理施設へ運ぶか
  • アスベストの事前調査結果と説明があるか
  • 処理費が極端に安くないか
  • マニフェストなどで処理経路を確認できるか

周辺住民にとっても分別は無関係ではありません。丁寧な解体には工程が必要ですが、不適正な解体や運搬を防ぐことは、粉じん、騒音、不法投棄といった生活環境上の問題を抑える土台になります。

行政のパトロールは現場を点検する仕組みです。ただし、すべての工程を常時監視できるわけではありません。発注者が処理先を尋ね、元請けが分別計画を立て、処理施設が品質を管理し、公共・民間工事が再生材を購入する。この連鎖がつながって初めて、解体材は地域の資源になります。

次に見るべき三つの数字

今後の焦点は、単純なリサイクル率の上昇ではなく、再利用の中身を測れるかです。

注目したいのは次の3点です。

  • 2026年中に公表予定の2024年度建設副産物実態調査で、品目別の率と搬出先がどう変わるか
  • コンクリートが路盤材ではなく、新しいコンクリートの骨材へ戻る量が増えるか
  • 木材の材料利用率と、解体系石膏ボードの回収・再生量が個別に見えるようになるか

「99%再資源化」という数字は大きな成果です。しかし、道路需要が細ればコンクリート砕石は余り、木材を燃やせば材料循環はそこで終わり、石膏ボードを混ぜて壊せば再利用の選択肢は急に狭まります。

次の解体現場で問われるのは、廃材を処理施設へ運んだかだけではありません。壊す前に分け、地域内に使い道をつくり、何に戻ったかまで確かめられるかです。

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