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雪が降るほど予算が読めない――青森市の豪雪が映した「除雪費」の重い仕組み

豪雪後の生活道路で除排雪を進める作業車両。

雪が降るほど予算が読めない――青森市の豪雪が映した「除雪費」の重い仕組み

除雪費を最初に負担するのは、原則として道路を管理する国・都道府県・市町村です。ただし、市町村道では自治体がいったん巨額の支出を引き受け、普通交付税や特別交付税、豪雪時の追加支援で後から穴を埋める部分が大きくなります。

2025~2026年冬の青森市では生活道路の除排雪が遅れ、青森県が市に10億円を支援する異例の対応に踏み切りました。問題は単なる「予算不足」ではありません。降雪量を事前に読めない一方、道路は止められず、国の追加支援額は支出後まで確定しにくいという構造にあります。

この記事で分かることは次の4点です。

  • 除雪費は国・県・市のうち誰が負担するのか
  • 市町村の支出が雪の多い年に急増する理由
  • 青森市で予算と現場管理の両方が問われた背景
  • 次の冬までに確認すべき改善策
目次

青森市では何が起きたのか

市の対応能力を超える豪雪の中で、生活道路の除排雪が長期間遅れ、県が直接的な応援に入る事態になりました。

青森市は2026年1月29日に豪雪災害対策本部を設置。生活道路の除排雪の遅れは、渋滞や路線バスの運休を招き、市民生活に影響しました。市の対策本部は3月25日に廃止されましたが、その後も作業や契約の検証が続いています。

青森県知事の2月27日の記者会見によると、2月13日時点で除排雪に未着手だった30工区に応援が入りました。県は市に10億円を支援し、30工区のうち20工区では独自のパトロールも実施しています。

県が問題視したのは、雪の量だけではありませんでした。

  • 市が発注した170工区を十分に確認できていたか
  • 作業指示後も未着手の区域を早期に把握できたか
  • 作業完了後の仕上がりを誰が現地確認したか
  • 市民から寄せられた声を危機対応に反映できたか

つまり、予算を増やせば自動的に道路が開くわけではありません。重機、運転手、雪を運ぶダンプ、雪捨て場、作業指示、完了確認がそろって初めて、支出が通行可能な道路に変わります。

県の10億円は「市の全費用を肩代わり」したわけではない

県の説明では、10億円は2月6日以降、シーズン終了までの除排雪を単価契約で改めて実施した分への支援です。市の除排雪事業全体を県が引き取ったわけではありません。

この点は負担の構造を理解するうえで重要です。市道の管理責任は市に残り、県の支援は緊急時の補完でした。県道、国道、市道では管理者も財源の仕組みも異なるため、「雪国の道路だから国がすべて払う」という制度にはなっていません。

除雪費は結局、誰が払うのか

基本は道路管理者が支払い、国が補助金や地方交付税で支える二段構えです。

道路の種類ごとに整理すると、負担の入口は次のようになります。

  • 直轄国道:国が管理し、国費を中心に除雪する
  • 道府県管理道路:道府県が執行し、国の雪寒地域道路事業費補助などを受ける
  • 市町村道:市町村が執行し、普通交付税や特別交付税などで国が財源を補う

国土交通省の道路除雪費補助の制度資料では、道府県管理道路への補助率は原則3分の2と整理されています。一方、市町村道は地方交付税による措置が基本で、全国的な豪雪時には幹線市町村道を対象とした臨時特例措置が設けられる場合があります。

ここがポイント: 市町村は、雪が積もって道路が使えなくなれば、国の最終的な支援額が固まるのを待たずに除雪を発注しなければなりません。支援があっても、予算執行の判断と現場の管理は自治体が先に背負います。

普通交付税は「平年分」の土台

普通交付税には、積雪や寒冷地特有の行政需要を反映する仕組みがあります。総務省は地方自治体の除排雪経費をおおむね3年に一度調査し、標準的な所要額の算定に使っています。

ただし、普通交付税は個々の除雪作業の請求書を国が精算する制度ではありません。自治体全体の標準的な財政需要を支える一般財源です。平年を大きく上回る豪雪では、実際の支出とのずれが生じます。

特別交付税は「想定外」を埋めるが、全額補償ではない

特別交付税は、普通交付税だけでは捉えきれない特別な財政需要に対応します。除排雪経費も算定対象ですが、自治体が支出した金額がそのまま全額戻るとは限りません。

2026年3月の衆議院総務委員会でも、国側は普通交付税による標準額の措置に加え、国土交通省の補助事業や特別交付税があると説明しました。一方、雪国側からは、調査締め切り後も除雪を続けなければならず、最終的な費用が特別交付税の見込額を上回る可能性が指摘されています。

豪雪時の特例には条件がある

公共施設の除雪には、豪雪時の国庫補助を定めた特別措置法もあります。ただし、どの自治体でも無条件に使える制度ではありません。

e-Gov掲載の施行令では、対象となる地方公共団体について、豪雪時の対象除雪費が平年の1.5倍を超え、さらに超過額が標準税収入額の1%を超えることなどを要件としています。

支援制度が複数あるため手厚く見えますが、対象経費、道路や施設の種類、発動条件が異なります。自治体の一般財源負担が消えるわけではありません。

なぜ雪国の財政を圧迫するのか

除雪費は、需要が読めないのに削りにくく、しかも短期間に集中する支出だからです。

学校建設や道路改良なら、工期を延ばしたり事業を翌年度へ送ったりできる場合があります。除雪は違います。救急車、路線バス、通勤車両、灯油や食品の配送を通すため、その冬のうちに実行しなければ意味がありません。

支出を押し上げるのは降雪量だけではない

費用を左右する条件は複数あります。

  • 短時間に雪が集中し、同じ道路を繰り返し除雪する
  • 道路脇に雪を置けなくなり、排雪作業が増える
  • 雪捨て場までの距離が長くなり、ダンプの回転が落ちる
  • 燃料費、人件費、機械の維持費が上昇する
  • 建設業の担い手不足で、必要な班や運転手を確保できない
  • 市街地では路上駐車や狭い道路が作業を遅らせる

除雪は雪を道路脇へ押す作業です。排雪は、その雪を積み込み、別の場所へ運び出す作業です。豪雪が続いて堆雪スペースがなくなると、より高コストな排雪へ移らざるを得ません。

予備費や基金にも限界がある

当初予算を大きく積めば安心に見えます。しかし、雪が少ない年には使わない予算を長く確保することになり、福祉、教育、公共施設の修繕などとの配分が難しくなります。

反対に平年並みの額に抑えると、豪雪時には補正予算が必要です。その財源として財政調整基金などを取り崩せば、災害や物価高といった別の緊急事態への余力が減ります。

雪国の自治体が直面しているのは、「除雪か、ほかの行政サービスか」という単純な二者択一ではありません。必要額が冬の途中まで確定しない公共サービスを、どの程度まで事前に備えるかという難題です。

お金だけでは解けないもう一つの問題

青森市の事例は、財源確保と同じくらい、契約と作業確認が重要だと示しました。

県は2026年春、市に対して、除排雪が実際に行われたか、税金が適正に使われたかを明らかにするよう求めました。市議会でも、業者の評価や支払いの根拠をめぐって疑問が出ています。

市民が知りたいのは、予算総額だけではありません。

  • 自宅周辺にはいつ除雪車が来るのか
  • 「作業済み」は、車が通れる状態を意味するのか
  • 遅れている区域を市が把握しているのか
  • 苦情や通報は、次の作業指示に反映されたのか
  • 支払額と実際の作業量を照合できるのか

4月には、市民が除排雪業者への支払いをめぐり住民監査請求を提出しました。また7月には、市長と町会長が意見を交わす「雪ミーティング」が初めて開かれています。これらの動きからは、費用の多寡に加え、契約と現場の実態を検証できる情報を求める声が強まったことが分かります。

ネット上でも、税金の使途を客観的に確認してほしいという意見がある一方、雪国では道路を開けること自体が不可欠であり、必要な支出まで萎縮させてはいけないという受け止めがあります。両者に共通するのは、単純な「安さ」ではなく、支出が通行可能な道路という成果につながったかを見えるようにしてほしいという要求です。

反論と例外――国がもっと負担すれば解決するのか

国費を増やせば自治体の資金繰りは楽になりますが、除雪能力そのものが直ちに増えるわけではありません。

国の追加支援には、地域間の財政力の差をならす意味があります。雪が少ない地域と同じ税収規模でも、豪雪地帯は毎冬の道路維持に多額の費用がかかるためです。気象条件による負担を一自治体だけに背負わせるのは公平ではない、という主張には合理性があります。

一方で、国が費用を全額補償する仕組みに近づければ、作業量や単価を自治体が厳しく管理する動機が弱まるとの反論もあり得ます。さらに、重機や運転手が足りなければ、予算だけ増えても未着手区域は残ります。

必要なのは、財源と実行能力を分けずに設計することです。

  • 平年分は普通交付税などで安定的に支える
  • 豪雪時は追加支援を早く見通せるようにする
  • 自治体間で重機やダンプを融通する
  • GPSや作業記録を使い、完了確認の精度を上げる
  • 降雪予測に応じて一斉除雪や排雪を前倒しする
  • 業者への支払いを、作業時間だけでなく成果確認と結び付ける

ただし、成果連動型の契約にも注意が要ります。道路幅や積雪条件が区域ごとに違うため、単純な順位付けをすれば、難しい区域を担当する事業者が不利になります。評価基準は、現場条件と緊急性を織り込む必要があります。

次の冬までに見るべき4つの点

焦点は予算額の大きさではなく、豪雪を予測した時点から市民に道路を戻すまでの時間を短くできるかです。

青森市と雪国の自治体について、次に確認したいのは以下の4点です。

  1. 初動基準の明確化
    何センチ積もったら出動するかだけでなく、今後の降雪予測や堆雪スペースも含めて排雪を前倒しできるか。

  2. 未着手区域の可視化
    作業指示、着手、完了、再作業の状態を市がリアルタイムに近い形で把握し、市民にも分かる言葉で示せるか。

  3. 追加財源の早期確保
    国・県の支援を見込む場合でも、市がどこまで自己財源で先行発注できるか。補正予算の時期が遅れないか。

  4. 契約と検証の再設計
    作業記録、現地確認、市民からの通報、支払いを照合し、費用が道路の改善につながったか説明できるか。

雪が降った後に予算を増やすだけでは、同じ混乱が繰り返されます。次の注目点は、青森市が検証結果を除排雪計画と契約にどう反映し、初雪の前に未着手区域を生まない体制を組めるかです。

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