コインパーキングの次に何が建つ? 高松中心部で見える「暫定利用」の分かれ道
街なかにコインパーキングが増えても、すぐに再開発が始まるとは限りません。建物を解体した土地を低コストで維持し、次の建築計画まで収益を得る「暫定利用」である場合もあれば、投資先が決まらないまま駐車場として定着する場合もあります。
高松市中心部では民間の小規模駐車場が増え、瓦町駅周辺で供給が需要を上回る状況も確認されています。その一方、県と市は中心部を「車を止める場所」から「歩いて滞在する場所」へ変える取り組みを進めています。
この記事で分かること
- コインパーキングが建築前の暫定利用に向く理由
- 駐車場の増加が再開発の前触れとは限らない理由
- 高松中心部で駐車場の供給過多が問題になる背景
- 土地が次の用途へ動き出すときに見るべき兆候
高松中心部では小規模駐車場が増えている
高松の現状を端的にいえば、駐車場所が足りないというより、場所や時間帯によって余り方と混み方が食い違っています。
KSB瀬戸内海放送の報道によると、高松市が2023年に実施した調査では、瓦町駅周辺に民間のコインパーキングなどが点在し、駐車需要を供給が上回っていました。運営会社は、中心部で駐車場が増える理由として、空いた土地の活用に選ばれていることを挙げています。
高松市も駐車対策基本計画で、小規模なコインパーキングの増加や附置義務駐車場の整備などにより、公共駐車場の利用率が低下していると説明しています。
一方、サンポート高松では県立アリーナなどの整備により、催しの開催時に車が集中します。そこで県と市は、県営、市営、一部民間駐車場の空き状況をスマートフォンで確認できる「どこ駐車ナビ高松」を導入しました。
ここから分かるのは、単純な「不足」ではありません。
- 瓦町駅周辺では、平常時の供給が需要を上回る
- サンポート周辺では、大規模イベント時に需要が集中する
- 空き区画が分散し、空いている駐車場へ車を誘導しにくい
- 市営駐車場は老朽化や維持費の問題も抱える
つまり、必要なのは駐車台数を一律に増やすことではなく、既存駐車場の配置と使い方を調整することです。
なぜ空き地はまずコインパーキングになるのか
コインパーキングは、次の計画が固まるまで土地を遊ばせないための使い方として導入しやすいからです。
ビルや住宅を建てるには、需要調査、資金調達、設計、許認可、テナント募集などが必要です。複数の地権者が関係する再開発なら、権利調整にも時間がかかります。
それに対し、平面駐車場は大規模な建物より初期投資を抑えやすく、土地を売らずに収入を得られます。駐車場事業者の案内には、建築着工までの短期契約に対応する例もあります。大和ハウス工業が紹介する事例では、建築着工まで約9カ月の土地を駐車場として使ったケースが示されています。
土地所有者から見れば、駐車場には次の利点があります。
- 建築計画が決まるまで更地を収益化できる
- 将来の売却や建築という選択肢を残しやすい
- 建物を建てる場合より用途変更の負担が小さい
- 無断駐車や土地への立ち入りを抑えられる
このため、建物の解体後にコインパーキングができたとしても、計画が消えたとは限りません。次の工事までの待機状態という場合があります。
「暫定」が長期化することもある
ただし、撤去しやすいことと、実際に撤去されることは別です。
建築費や金利が上がる、テナントが集まらない、地権者間の調整が進まない。こうした条件が重なると、当初は短期のつもりだった駐車場が更新を重ね、そのまま長く残ります。
駐車場が一定の収益を生んでいれば、所有者は急いで多額の資金を投じる必要がありません。再開発を始めるには、駐車場収入を上回る採算と、長期的な需要の見通しが必要になります。
ここがポイント: コインパーキングは再開発を妨げる施設とは限りません。しかし、次の用途を決める期限や地域の将来像がなければ、暫定利用が固定化する可能性があります。
駐車場の増加は再開発の前触れなのか
一つの駐車場だけでは判断できず、周囲の土地取得や計画手続きまで見なければなりません。
駐車場になった土地がその後どうなるかは、大きく三つに分かれます。
1. 建築時期が決まっている「待機型」
マンション、ホテル、オフィスなどの着工まで土地を駐車場にするケースです。閉鎖予定日が告知されたり、現地に建築計画のお知らせが掲示されたりすれば、次の用途へ移る可能性が高まります。
2. 周辺の土地をまとめる「集約待ち型」
小さく分かれた土地では、大規模な建物を計画しにくいことがあります。隣接地の取得や共同事業への合意を待つ間、それぞれの区画が駐車場として使われる形です。
ただし、駐車場が隣り合ったからといって、同じ事業者が一体開発するとは限りません。所有者、抵当権、賃貸借契約が別なら、見た目ほど簡単にはまとまりません。
3. 次の投資が決まらない「固定化型」
人口や来街者が減り、住宅、店舗、事務所の需要も弱ければ、建築計画そのものが成立しません。この場合、駐車場は再開発前の一時的な姿ではなく、その土地で最も現実的な収益手段として残ります。
国土交通省は、中心市街地で空き地や店舗跡が平面駐車場へ変わり、街の魅力低下、投資の減退、さらなる低未利用地の発生へつながる循環を指摘しています。資料で示されたある地方都市では、中心市街地約162ヘクタールのうち、平面駐車場などの空地が約21.6ヘクタール、13.3%を占めていました。
国土交通省の駐車場施策ガイドラインが駐車場を交通施設だけでなく土地利用の問題として扱うのは、このためです。
駐車場が増えすぎると街に何が起きるか
問題は空車の多さだけでなく、人が歩く目的地が途切れることです。
店舗や住宅が駐車場に変わると、沿道から入口、窓、看板、日陰、休憩場所が減ります。隣の店までの距離は同じでも、歩く人にとっては街並みが途切れます。
小規模な駐車場が細かく増えると、別の問題も生じます。
- 歩道を横切る車の出入り口が増える
- 土地が細分化された状態で使われ続ける
- 各駐車場の稼働率が下がり、料金競争が起きる
- 店舗や公共交通を利用する人の滞在時間が伸びにくい
- 舗装面が増え、緑や日陰を設ける余地が減る
もっとも、駐車場を一律に減らせばよいわけではありません。通院、買い物、荷さばき、障害のある人の移動、郊外からの来訪など、車が必要な場面は残ります。
問われるのは台数よりも配置です。中心部の小さな土地に出入り口を多数設けるのか、外縁部や立体駐車場へ集約し、目的地まで歩ける動線を整えるのか。その違いが街路の安全性と滞在しやすさを左右します。
高松は「車を止める街」からどう変わろうとしているか
高松の政策は、駐車場を増設する方向から、既存施設を使い分けて歩行空間を充実させる方向へ動いています。
香川県と高松市がまとめた高松中心市街地プロムナード化ビジョンは、サンポート高松から中心市街地へ取り組みを広げ、車中心の街路を人中心の空間へ再編する方針を掲げています。
これは「車を締め出す」という単純な話ではありません。サンポートでイベントがある日は駐車需要へ対応しつつ、日常的には徒歩、公共交通、自転車で中心部を回りやすくする必要があります。
高松市は、郊外へ市街地が広がり、中心部が低密度化してきたことも課題に挙げています。立地適正化計画では、医療、福祉、商業などを公共交通と結び付け、生活に必要な機能を拠点へ集める「コンパクト・プラス・ネットワーク」を基本としています。
この方針と、中心部に平面駐車場が点在する現状には隔たりがあります。埋めるには、民有地の建て替えを待つだけでなく、次のような働きかけが必要です。
- 建物や広場への土地利用転換を支援する
- 駐車場を外縁部や立体施設へ集約する
- 公共交通と駐車場の情報を一体化する
- 小規模駐車場の出入り口を安全な位置へ誘導する
- 建築までの土地を店舗、広場、催しにも暫定利用する
地元の受け止めから見える難しさ
利用者にとって駐車場は便利でも、街全体では多すぎるという評価が同時に成立します。
KSB瀬戸内海放送の取材では、中心部のコインパーキングについて、駐車場所を選べることや目的地の近くに止められることを便利だとする利用者の声が紹介されました。一方、専門家からは、郊外の駐車場から公共交通へ乗り換える仕組みを整え、中心部を歩く人を増やす考え方が示されています。
両者は必ずしも対立しません。
生活者が求めているのは、駐車場の総数そのものより、必要なときに目的地へ無理なく到達できることです。郊外から来る人、荷物の多い人、足腰に不安がある人には近接した駐車場所が重要です。その一方で、健康な来訪者まで中心部の各店舗前へ車で移動する構造では、歩行者の回遊や公共交通の利用は増えにくくなります。
利用者別に必要な区画を確保し、一般車を集約施設へ案内する。こうした細かな設計なしに「駐車場を減らす」だけを先行させれば、不便になったという反発が生じます。
次に何が建つかを見分ける5つの兆候
駐車場の看板だけではなく、行政手続きと周辺の動きを追うと、土地の次の段階が見えやすくなります。
注目したいのは次の5点です。
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駐車場の閉鎖予告
月極契約の終了や精算機撤去の案内は、土地利用が動く直接的な兆候です。 -
建築計画のお知らせ
建築主、用途、階数、着工予定時期が掲示されれば、単なる観測ではなく具体的な計画段階に入っています。 -
都市計画や再開発の公告
都市計画決定、事業計画、組合設立などが公表されれば、複数地権者を含む事業が制度上進んでいると確認できます。 -
隣接地の閉店、解体、取得
周囲の区画が同じ時期に空き始めた場合は、一体利用に向けた動きかどうかを所有者や公表資料で確かめる必要があります。 -
ボーリング調査や測量
地盤調査や境界確認は計画具体化の手掛かりですが、調査だけで着工が確定したとは判断できません。
反対に、閉鎖時期も計画名称も示されず、運営契約が更新され続けている場合は、暫定利用の長期化を想定したほうが現実的です。
駐車場の「その後」を決めるのは街の需要
コインパーキングは、再開発へ向かう途中にも、街の投資が止まった結果にもなります。
高松中心部では、小規模駐車場の増加と一部地域の供給過多が確認される一方、サンポートのイベント時には車が集中します。行政が進めるべきなのは、すべての駐車場を同じように扱うことではありません。
今後の分岐点は明確です。
- 駐車場を集約し、空いた土地を住宅、店舗、広場へ転換できるか
- 車が必要な人の区画を残しながら、公共交通へ乗り換えやすくできるか
- 建築までの数年間を、駐車だけでなく交流や実証の場として使えるか
- 民間の土地利用転換が採算に合うだけの来街者と居住者を増やせるか
次に街なかのコインパーキングを見かけたら、「何が建つのか」だけでなく、閉鎖期限、周辺区画、行政の公表資料を確認したいところです。その土地が動き出す本当の合図は、駐車場になった時点ではなく、次の用途へ進む具体的な日付と主体が現れたときです。
